4 コスプレ集団に囲まれた!?
無事不審者を撃退出来た・と安心したのも束の間、それを皮切りに、メイドさんや鎧を着た人や、執事っぽい人や……ナニコレ、ゲームかアニメキャラのコスプレ!? みたいな人たちが、カーテンを開けてわらわら入って来る。もう、投げられるものは何も残っていないし、何より人数が多い!
けど、その人たちは「あんなことがあったからまだ混乱しておられる」「いや、そんなことよりご無事であったことがなにより重要だ!」「よかった」などと口々に、わたしのことを心配している風なことを言ってくる。それに表情も、不穏なことを考えている様子じゃなく、戸惑いと安堵と、笑顔で涙を流したりしていて。
敵意や害意は無さそうなんだけど、わたしを見て、ただただ感動する人たちに囲まれる……それもまた得体が知れなくて恐怖しか感じない。
ちょっとでも距離を取るために、座った姿勢のままじりじりと後退すると、すぐにベッドのヘッドボードに背中が当たった。そこから恐々コスプレ集団を見ていると、集団の中から一際上品な執事服のロマンスグレーのおじさまが一歩踏み出す。ギクリと身を強ばらせたわたしに優しく微笑むと、綺麗な動きでその場に跪いて、そっとこちらを見上げてきた。
「コルネリウス様、未だ混乱されているご様子ですが、皆を代表して執事の私からこれだけは言わせてください。よくぞご無事で……。」
柔らかな眼差しからは、じわりと涙が溢れてくる。この人のことなんて全然知らないのに、わたしのことを心底心配して安心したのが伝わってくる。
けど、ごめんね。中身は別人なんだ。
そう心の中で謝っていると『気にするな』って誰かが囁いた気がした。執事は「頭の傷が開いてしまいましたね。今しばらく安静になさって下さい」と、テキパキと頭に巻かれていた包帯を直してくれた。それから、わたしが投げたもののうち、壊れなかったウインナーもどきと本だけをベッドに戻してさっと掃除をしてくれた。
まぁ、何かわかんないけど投げちゃった容器は中身が飛び出て割れてたし、シーツはその粉が付いて汚れちゃってたしね。うん、ごめん。
訳が分からない状況だったけど、悪い人たちに捕まってるわけじゃない。良い人しかいない場所で良かった――そう安心したわたしの判断は、すぐに間違いだったと気付く羽目になった。