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3 気付いたら天蓋付きベッドの上でした

 

 そして気付いたら、やたら豪華なベッドに寝ていた。




 天蓋付きって言うんだっけ? ベッドに屋根とカーテンが付いてて、四方を塞がれてる。光を通す生地だけど、部屋の様子までは見えない。それに、派手な模様付きの、ウインナーソーセージみたいな筒が頭の所に転がってる。押せば柔らかい、これって枕?


 病院なら普通、白じゃない?

 紺色の生地に金ぴかの、植物の蔓みたいな刺繍なんて派手派手だよ!?


 それに、周りの音もやたら静かな気がする。車の音みたいな町の喧騒が、全然聞こえない。他の患者さん、居ないの? それとも変な施設に拉致られた!? もしくは……天国?


 取り敢えず、ベッドから降りて状況確認! と思ったけど、伸ばした足はなかなかベッドの端に届かない。

 ――って、ベッドでかっ!! 6人くらい寝れるんじゃないの!?


 ビックリしすぎてキョロキョロしたのが不味かったのか、後頭部にヌルリと生暖かい感触が伝わった。


「きゃ――――!! っえ!? えええっっ?」


 叫んだ声の低さに驚いて、悲鳴が引っ込んだ。


 あの時、わたしはきっとトラックに跳ねられている。だからその後遺症があってもおかしくないわけで。でも声が低くなる症状なんてあるの!?


 混乱していると、カーテンの向こうからバタバタと忙しい音が聞こえてくる。


「コルネリウス王子!!」


 シャッとカーテンを開くと同時に、血相を変えて飛び込んできたのは、お医者さんでも、看護師さんでもない見ず知らずの男の人で。


「きゃ――――――!!!」

「は!? え? 王じっっ・ぅぷ」


 知らない女子のベッドスペースに入り込む成人男性なんて犯罪の匂いしかしない。 変態撃退!! とにかく手に届く物なら何でもいい! と、次々にクッション、丸めたシーツ、良く分かんない容器、マットレスの隙間に挟まってた本に……もう手に取れる小物は無いから、止めとばかりに両腕を広げたほどの長さのある巨大ウインナーもどきを投げつける。


 苦労して投げた甲斐あって、ウインナーが不審者の頭にクリーンヒットした。


「ぐっ」


 男は、短く詰まった声をあげると、カーテンの向こうにたたらを踏んで消えてゆく。見たか! スポ小ソフトボールクラブ仕込みのピッチャーの腕前! 良かった、無事不審者を撃退出来たわ!

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