10 蓮、登場
次に気付いた時、わたしは与えられた映像を見るだけの世界に放り出されていた。
手足どころか視線すら思った様に動かせない。
けど意識だけはハッキリしていて、身体が勝手に動いている。
視界に映る景色は、最初に見た寝室だった。
『 あの子の名前はなんと言うのだろう 』
「知らなくても、いんじゃね?」
『 レンと言ったな、彼女はお前の婚約者なのか? 』
「ちっ……ちげーよ! 幼馴染で、友達だよ! けど……コルネよりはアイツのこと色々分かってる――つもりだから」
自分じゃない2人の男子の声が聞こえて来る。なんだか覗き見してる気分だけど、耳を塞ぐことも出来ないから黙って聞いているしかない。そして、話しているのはやっぱり蓮と、コルネリウス王子だった。何で蓮までここにいるんだろう? トラックに当たったのはわたしだけじゃなかったの!? 嫌な予測に心臓がドキドキと嫌な鼓動を打つ気がする……
『 ふん、だが友人なのだろう。ならば遠慮する必要はないな。彼女は私に光をくれた掛け替えのない人だ。例え姿形が見えずとも、彼女の気性や魂の暖かさは変わらん。私はそれら全てを好ましく思う 』
「まさか惚れたのか……」
『 明け透けな言い方をすれば、そうなのかもしれん 』
「ちっ」
えーと、これはどう云う会話なんだろう。心臓が、さっきまでとは別の意味でバックンバックンし始めてるんですけど!?
「俺と環奈は、生まれてすぐからの付き合いだし、アイツの事なら何でも知ってる。アイツの気持ちだって、手に取る様に分かるからっ! こ・婚約者なんかじゃなくっても、ぽっと出のコルネよりずっとアイツと親しいってゆーこと!分かったか 」
『 ……ちっ。どうやら君と私とでは気が合わないらしい 』
「同感だね」
『 けど残念ながら、私たちの関係は共に発展することは無い。どうやら君と彼女、それに私はこの体を共有している様だからな 』
「あぁ」
ドキドキがすぅっと引いて行く。そうだった、いつも一緒の幼馴染の特別な繋がりを持った関係が崩れるのが怖くて、告白したくても出来ず、せめて一緒にって願った結果――まさかこんな風に同じ身体の中に入ることになるなんて。
わたし達はこれからどうなっちゃうんだろう……。