1 大好きな幼馴染は人気者
勢いで2本も連載を始めてしまいました!
こちらは、長編児童向けノベルを意識して、1話あたり1000文字以内としております。
5分の休憩のおともにどうぞ!
小学校の卒業式まであと一週間を切った。
わたしの住む地区は登校班が一つだ。6年生は2人だから、ひとりが先頭の班長、もう一人が最後尾の副班長となって学校まで下級生を連れてゆく。
今朝も、集合場所に全員が揃ったのを、班長・虎杖 蓮が、さっと視線を走らせて確認する。そして最後尾のわたしと目配せし合い、互いに頷き合うのが出発の合図だ。家がお隣同士の幼馴染。だから、こんなアイコンタクトで通じるわたしは特別!
……なんて、浮かれたことを思うほど、わたしはおめでたくは無い。
黙々と歩き出す登校班。集合からここまで……いや、いつも学校まで、わたしたちは、至って静かなものだ。
6年間使い込んだランドセルは、意外にくたびれてはいなくって。1年生のほどではないけど、まだまだ使えそうなくらいピカピカしている。
反対に、黄色い帽子は使い込まれて伸びたゴムに、サイズ調整のベルトにヒビが入って、そろそろ限界を訴えだしている。
それぞれの物が、それなりに時間を経たことを示している。それは、わたしたちの送るこの日々が、終わりのあるものだってことを示しているわけで―――もう少しで、このなんでもない毎日が終わる。
春休みが始まり、そしてやって来る中学校の入学式。
中学校は、わたしの住む地域では殆どの場合、公立へ進む。そして当然の様に、アイツもわたしも同じ中学校に通う。
「蓮! おはよー」
「はよー」
「昨日の夜、カイダンズのゲーム実況動画見たぁ?」
「みたみた! ってか、俺の上げた【イタイタちゃんねる☆剣道で踊ってみた】は見てくれた?」
「蓮のくっっっだらなぁーい動画ね! 見たに決まってるでしょー」
学校が近付くにつれて、他の地区の登校班の子たちが徐々に通学路に増え始める。それに伴って、蓮に話し掛ける子達も多くなって行く。
アイツの強メンタルな動画は勿論、わたしも欠かさず見ている。他の子達みたいに軽~く「観たよ!」なんて言えないけど、見逃すはずない。だって、大好きなんだから。