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氷の靴紐を結ぶ  作者: なはら
1/1

トンビのように

始まりは靴紐を結んでもらった、あの時の胸元にある。主人公は空を見上げて、トンビを眺める。

微塵もないのに、恋をしてしまうのは、未だに

僕が子供だからだ。


痛くて仕方ないけど、その声を聞いていたい。

聞こえていても、彼女は理解できない。ほら、愛でる方法を教えてあげるよ。彼女の指が、ぼくの視線を釘付けにする。巻き戻される時間が、狂おしいほどに、痛かった。


グレーゾーンがもしも、言葉だけで理解できるのであれば、きっと僕は彼女にきもがれている。『愛を教えてあげる?』言葉以上もそれも

同等なものも与えられない、毛虫みたいなやつが、何を教えられるのだというのか?


もっと表情をしかめてくれ。

もっと愛の言葉の重みを感じ取ってくれ。

もっと、意味がないから、虚しくなる。


校庭が見える全方向に、そこで宙を舞いたくなるぐらいに、僕は翼が欲しい。今見下ろしているセーラー服の彼女達を越えられはしない、

重い障害がぼくにだってあるのだ。


なのに、世間は辛辣にも、ただ前を歩く事だけを求めるのだ…でも、彼女は『違うよ』なんて、

言いながら、ほどかれていた僕の靴紐を結んでいる。不覚にもちらつかせた胸元に、目を反らした。うまく空を見上げながら「どこで教えてもらったの?」なんて、言葉を投げ掛けてみる。彼女は返事をせずに、だまだまと靴紐を結び続けていた。


青い空にはトンビが飛んでいた。ぐるぐるとお互いの愛を確かめあうように、優雅に飛ぶ姿は、未来の僕と彼女の将来でありたい。だけど

そんな妄想をするほどには、彼女のことを理解していない現実が歯がゆかった。できることならば彼女の目を見つめ、色んな質問をしたかった。だけど、それが許されるのは時と場所、

それだけじゃなくて、彼女の心も必要だった。

足りないものが多過ぎて困り果てる時には、

だいたいかが空回りしてうまく行かない。

うまくいくのは、気持ちの覚悟が定まらない時だったり、ぼくの気持ちはおいてけぼりで、

時間だけが、それを許すとき。


だったら、本当に幸せを感じられる時はいつなのだろうか?とても大げさだけど、当時の僕はそれぐらい、何もわからない世界にいたのだ。


この物語は、グレーゾーンの彼女と、何もわからない若かりし頃の僕の過ちを記したものだ。

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