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第十七話  本物はどこ?

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 二人がこっそりと屋敷の外に出ると、古びたコートを身に着けた小太りの男が司法警察の身分証明を見せて来た。ルシタニアでは国家憲兵が地方部については警察業務を担っている。


「テレサ様が殺害され、ヴィトリア様が行方不明との通報を受け、我々が捜査する事となりました」


ミゲル・サラマゴと名乗った警部はそう説明してペリグリンと握手をすると、

「色々と不穏な動きが多くなっておりますので、早急に犯人を捕まえましょう!」

髭に埋もれた口許に笑みを浮かべる。


「自分はミゲルさんの補佐をしておりますホセ・アクロマと申します」

太ったサラマゴ警部とは対照的に、酷く痩せた男の方も笑みを浮かべながら握手をした。


「夜明けまで5時間といった所でしょうかね」


教会の祭祀室へと案内しながら、サラマゴ警部が独り言を呟くような様子で言い出した。


 鉱泉病院の近くに建つポープロ教会は、メロヴィングの手先となっていた司祭が潜入していた教会でもある。現在は司祭を拘束しており、敵の接触がないか教会を監視下に置いていた。


 殺人事件となるため、司法警察官であるサラマゴ警部が捜査に当たる事になったけれど、形式的なものしか許されず、刺殺されたテレサの遺体は、親族が住む王都の霊廟へと移送が済んでいるような状態だった。


 屋敷に招かれた客人は、テレサの姪となるクリスティーナ・モンテイロ。テレサの従妹の孫となるソフィアとジュリア、双子の母ジョアンナ。歴史博士であるブルーノ・モウリーリョ。医学博士であるマノエル医師の6名という事になる。


 テーブルの上に広げられた見取り図は百年ほど前に書かれたものとなる。この歴史ある教会には領主館の貴重な資料が納められていた。その中には領主館の図面も含まれているため、ヴィオは祭司長の許しを得て図面を眺めていたのだった。


領主館は何度か改築工事が行われたようだが、避難通路の一部が埋められて、秘密の部屋として使えるようになっている。壁の外側に一室、設けられている事が図面上では良くわかった。


温泉を好んだ王妃が建てた離宮だけれど、王家に何かあった場合には逃げ出す事が出来るようにするために、秘密の通路が多数、残されている。


「ピオーリョ、ちょっと来てくれる?」


ヴィオが部屋の外に控えていたピオーリョを呼ぶと、一言、二言、地図を見ながら説明する。すると、ピオーリョは一つ頷いて部屋から出て行った。外には憲兵が集められているので、これから領主館で眠る住民を叩き起こす予定でいるのだ。


 さて、これからどう動いた方が効率が良いだろうかとヴィオが頭を悩ましていると、

「それにしても、肝心のヴィトリア嬢についてなんですけど、彼女が本物の公爵令嬢だとは思えないんです」

ペリグリンが悩ましげな瞳となって腕を組むと言い出した。


「幼い時から令嬢教育を施されたようには見えないし、マナーそのものが付け焼き刃程度のもので、屋敷に仕えるとしても下級メイド相当。平民が無理やり連れ出されて公爵令嬢の代わりを演じることを命じられているようにしか見えなかったんだ」


「えーーっと」


「髪の毛はブリタンニア特有の金混じりのはちみつ色で、人為的に染めたものではなかったけれど、うちの王家は問題ありなところがあるし、どっかで飛ばした種でできた子供を拾って、メロヴィングに活用されていたんじゃないかと僕は睨んでいる」


「という事は・・カルダス領に居たヴィトリア公爵令嬢は偽物?」

「それじゃあ!本物は一体どこにいるんですかね!」


警部と助手のホセはヴィオの素性を知らない。もちろん、ペリグリンもヴィオの本当の素性を知らない。


「僕が会ったあの令嬢がメロヴィングのスパイだとして、テレサさんを殺した後に、自分の部屋を血まみれにして逃げ出したのは、こちらを欺くための罠・・だからあのタイミングで双子が部屋へとやって来たのか・・」


「あ・・あのー・・」


 ベアトリスはメロヴィング側に寝返ったのは確かな事だけれど、あの妖精ちゃんが自分の部屋を血まみれにした上で、捜査を撹乱するとは思えない。


「あの・・ペリグリンさん・・誠に申し上げづらい話があるんですが・・・」


「うん?ヴィオ、なんだい?」


ペリグリンの水色の瞳を見上げると、なんとも言えない気持ちが溢れてくる。ここまで一緒に移動したと言うのに、今更、どの面下げて、

「私が本物のヴィトリアなのよ!」

なんて事を言えるのか?


 そもそも、何で最初に『公爵令嬢であるヴィトリアをブリタンニアで保護したい』と言ってくれなかったのか?ルシタニア側の心情とか気にしないで良いから、最初の最初に言って欲しかった。


 まあ、ウェストウィック閣下が保護したいのはカルダスの領主館にいるヴィトリアだったわけだから、あそこで言われても、

「ジャジャーン!私こそがヴィトリアでーす!」

とは言えなかったもしれないけれど、ここまで拗れることにはならなかったはず。


ああー〜あああああ〜!ヴィオが心の中で頭を抱えていると、


「ヴィオ!大変だよ!メロヴィング軍とボンパル領の領主軍、合わせて五千がこっちに向かってやって来るよお!」


と叫びながら、部下の一人が司祭室へと転がり込んできたのだった。



ここまでお読み頂きありがとうございます!

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