表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/152

第十五話  君は本物なのか?

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 ヴィトリア・デル・フォルハス嬢をブリタンニアにて保護をする、これは王命でもあったのだ。メロヴィングの皇帝が大っ嫌いなジェームズ王が出した王命は、病床にあっても睨みを効かせ続ける王の意地なのかもしれない。


「ペリグリン様?一体どうされましたか?」


 妖精のように可憐で美しい令嬢は、こちらを振り返ると儚げな笑みを浮かべた。ブリタンニア王家特有の金混じりの蜂蜜色の髪の毛を緩やかに結い上げたヴィトリアは、首元にショールを引き寄せながら、

「寒くないですか?中で紅茶でも淹れてもらいましょうか?」

と、問いかけてくる。


 冬の庭園への散歩に誘ってきた令嬢は、こちらが浮かない顔をしているので心配になったらしい。


「いえ、大丈夫ですよ」

 微笑みながら、令嬢の髪を一房手に取り、口付けをするふりをしながら髪を染めていないか、この色が本物なのかを確認する。


「美しい貴女と共にいられるなんて天にも昇る心地です」

「まあ」

 頬を染めて恥ずかしそうに視線を逸らす、その佇まいを見ているだけで、違和感だけが強くなる。


 この令嬢は果たして本物なのだろうかと。


 髪の色合いは染色したものではない本物だ、顔の造作も美しい。ブリタンニアの王族であるジョアン殿下が、この娘の母親に食指を伸ばしたとしてもおかしいとは思わない。だが、彼女が公爵家の令嬢なのかと問われると、どうにも疑問ばかりが頭に浮かぶ。


 令嬢とは思えないあざとい仕草から始まり、食事の所作一つをとっても垢抜けない。生まれた時から貴族の令嬢として育った品のよさのようなものが感じられないからだ。


今、目の前に居るのはメロヴィング側が用意した偽物なのではないのか。


「ええ、ヴィトリア様の所作には最初、驚きましたわ」


 領主館を預かるテレサ女史は、ペリグリンの前へ温かい紅茶を置きながら、

「私はヴィトリア様が調度、王宮に上がるという時に、女王様へ暇乞いを願い出て、カルダス領へと移動する事になりましたのでね。令嬢のことはあまり良くは知らないのですが・・・」

目の前のソファに腰掛けて悲しげな瞳を向けてきた。


「このような事をブリタンニアの方に言うのはまずいと思うのですけれど」

「なんでしょうか?私は決して口外など致しませんから、もしよろしければ教えて頂けると有り難いです」

「そう、これはあなたには言わなければならない事でしょう」


 テレサは自分の真っ白い髪の毛を撫でつけながら、小さなため息をひとつ吐き出した。


「ヴィトリア様はフォルハス将軍の義妹であるエレーナ様の娘となります。病でエレーナ様がお亡くなりとなった際に、将軍がお引き取りになったのですが、前の奥様であるイザベル様が将軍とエレーナ様の間で出来た不義の子であると思い込んだようで、激しい折檻が行われたのです」


 テレサ女子はぎゅっと唇を噛み締めた。

「王宮で親しくしていた者からの話として、ヴィトリア様が骨と皮ばかりの様子だったという事は聞いていました」


 テレサ女史は、令嬢のマナーが完璧ではないのは、過去に行われた折檻が関係しているのではないかという推察しており、温かい目で見守って欲しいという事だった。


 仮にも王宮に上がる事になった第二王子の婚約者が、満足な淑女教育を行わないまま16歳になるまで放置されるなんて事があるのだろうか。


「ゔ・・・」

 暗闇の中で目を覚ます。意識を失っていた為、今が朝なのか夜なのか、わからなくなってしまっていた。


 ヴィトリア嬢の保護を命令されたペリグリンは、当初の予定地であったオビドスへと向かい、実は、ブリタンニアへ移送する予定の女性はフォルハス公爵家の令嬢である事を告げる事にした。


「ヴィトリア・デル・フォルハス?」

 ルシオ少年は驚きを隠せない表情を浮かべ、ピオーリョは悩ましげな表情を浮かべる。


「ヴィトリアって、あのヴィトリア・・・つまりはご主人・・」

「黙れ」

 疑問を口にしようとするピオーリョを一言で黙らせたルシオは、少年特有の可愛らしさが残る顔をクチャクチャにしながら胸の前で腕を組む。


 ヴィトリア・デル・フォルハス公爵令嬢、フォルハス将軍と義妹の間に生まれた不義の子であると噂されながらも、本当の所は、ブリタンニア第六皇子に手込めにされて生まれた女児となる。


 アルフォンソ第二王子の婚約者でありながら、運命の舞踏会で婚約破棄を言い渡され、冤罪でありながらカルダス領へ追放される事となった悲劇の少女。王家の追放を受け、コンドワナ大陸に連れて行かれる事はなかった、捨てられた公女。


「メロヴィングは王家の血筋を引くとも噂されるヴィトリア嬢を王妃に、皇帝の末の弟を王にしようと画策していて、ルシタニア王国をメロヴィングとブリタンニアで分割統治をしようという話まで出ている始末なんだ。そうなったら、ブリタンニアまで皇帝に頭を垂れるという事態にも繋がってしまう。我が国としては早急に令嬢を保護したいと考えているんだけど、ルシタニアの国民感情を考えると、大っぴらには言い出せなかったっていうのが現状だよ」



 ブリタンニアがヴィトリアを国に匿ったとして、うまい具合に行動をおこさなければ『誘拐された』『人質として連れていかれた』『ブリタンニアこそ王家が今はいないルシタニアを我が物にしようと企んでいる』などと言われ、国民感情を逆撫でる結果となりかねない。


「彼女の保護者であるフォルハス将軍に話がつけられたら良かったんだけど、どうやらこちらの人間が接触する事が出来なかったらしい。本来、ルシタニア上層部との意思を統一した上で令嬢を確保した方が良かったんだけど、コーランクールの動きも侮れない。という事で、令嬢は保護した方が良いという判断が下されたわけだけど」


ルシオ少年に将軍に渡してもらう手紙を託し、修道院にレイチェルとケイショを置いて、ピオーリョと共にカルダス領へと潜入した。


 すでに潜入していた仲間が、ヴィトリア嬢の婚約者という身分を作ってくれたお陰で、ブリタンニアから迎えに来たという体で領主館に入る事が出来たのだ。


「ああーーーー・・くそーーーー・・こんな所で監禁されている場合じゃないっつうのーーーー」


 柱に縛りつけられたまま恨言を漏らしていると、地下倉庫の扉をきしませながら開いていった。扉の隙間から覗き込む琥珀色の瞳が、確かにこちらを捉えたことに気がついた。




ここまでお読み頂きありがとうございます!

モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

☆☆☆☆☆ いいね 感想 ブックマーク登録

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ