第十四話 強制力発動なの?
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ヴィオが知る乙女ゲームの中で、王宮内で起こった殺人事件の犯人を見つけるというショートストーリーが存在した。ヒロイン・ベネディッタが公爵令息であるペドロの攻略を進めた際に起こるストーリー。
二人が協力して犯人を見つけるというメインストーリーと、行方不明となったヒロインをヒーローが何とか救い出し、殺人を行った犯人も捕まえるというサブストーリーが用意されている。
事件は女王に仕える女官長が殺害されるところから始まり、最後に女官長はメロヴィング側のスパイだったという事が判明して、見つけた犯人はメロヴィングが差し向けた暗殺者で、ペドロが死闘を繰り広げる事になる。
ここで暗殺者に殺されるとバッドエンド、こちらの情報が敵方に渡った結果、ブリタンニア・ルシタニア混合軍2万が敵に倒される事となり、一気に情勢が傾く事になる。無事に暗殺者を倒した場合はヒーローの愛が倍増、二人の関係が一気に進むきっかけとなるのだ。
ここに来て、またあれか、強制力発動ってことか。
ラゴスで起こった海賊イベント、多分、このイベントはこちら側の勝利で終わったと思う。だけど、カルダス領主館で発生しているイベントについては、今後、どうなるか皆目見当がつかない状態だ。
ゲームの中のルシタニア・ブリタンニア混合軍が、現実にはムーア将軍率いるブリタンニア軍1万7千だとするなら?
ここで負けたらブリタンニア軍がエスパンナで犠牲になるのかもしれないし、再び、皇帝の懐刀と言われるコーランクールとの駆け引きになるのかもしれない。
元女官長であったテレサが殺された。朝にメイドが様子を伺いに行ったら、ベッドの上で胸から血を流した状態で死んでいたらしい。
メイドの悲鳴を聞きつけて、テレサの寝室に慌ててみんなが集まったらしいけど、ヴィトリアとペリグリンさんが現れない。
「ペリグリンさん、きっとお姉ちゃんの部屋に居るんだよ!」
部屋の扉の前で待機させられていた双子がそう言って2階に駆け上がり、ヴィトリアが滞在している部屋の扉を開けたところ、血塗れのナイフを持ったペリグリンさんが立ち上がったところを見つけた双子が悲鳴をあげた。
ヴィトリアの部屋のベッドは血まみれの状態だったが、彼女の姿はどこにもない。
凶器となったナイフを持つペリグリンさんはすぐ様、拘束されて、地下倉庫へ押し込められた。尋問を行われているが、何の証言も得られていないという状況だという。
「ナイフを拾うのは侍女の役割なんだけどなあ・・・」
ストーリー展開が違っているので、頭を悩ませる結果となる。
「ねえ!ねえ!将校さんったら!」
「うん?」
「ちびっこ将校さん!」
「は・・はい?」
後ろを振り返ったらレイチェル・ワトソンが居て、
「これ、アマリアさんから渡しておいてって言われたんだけどぉ」
と言って、着替えやサンドイッチ、傷薬に塗る軟膏なんかが入ったバスケットを渡してきた。
アマリアの部屋で仮眠を取ったヴィオは、これから人々が寝静まろうという時間帯にも関わらず、出かける準備をしていた。
これから地下に囚われているペリグリンと接触を試みる予定でいるのだが、怪我をしているのは想定できるので、アマリアが傷薬と男物の衣服を用意してくれたようだ。
「レイチェルさん、ここでの生活はどうですか?」
オビドスは街の中に修道院が一軒、街の外にも修道院が一軒ある。街の中の修道院は百年以上前に建てられた古いもので、部屋数も少なく、瀟洒な作りであっても使い勝手があまり良くない。そのため、郊外にもう一軒、住民の避難所にもなる広い作りのものを新しく建てたのだった。
隣には瓶詰め工場も併設しており、孤児院の子供たちや周辺に住む女性たちが働きに来ているので、ここでは暇をしてのんびり過ごすという事は出来ないはずだった。
「色々とやる事はあるし、働くのは好きだから大丈夫なんだけどぉ、お兄様がどうなったのかは心配で」
「今日にも助けて出そうと思っていますので、安心してお待ちください」
「ダーリンが無理しないかも心配でぇ」
ダーリンっていうのは、ペリグリンさんの事なのかな?
「大丈夫です!私に任せてください!」
二人の仲は引き裂きません!大丈夫です!無事に救出してムーア将軍の元まで送り届けます!
ヴィオが自分の胸をドンと叩くと、ちょっとほっとしたような笑みをレイチェルさんは浮かべた。金髪に碧眼のレイチェルさんはかなり美人で、出るところ(お胸)もバイーンと出ているので、そりゃみんな夢中になりますよ。
「はあ・・・いいなあ・・・」
ため息を吐き出しながら馬に乗ると、
「ご主人様よ、なんか言ったか?」
ピオーリョが眉を顰めながら尋ねてきた。
今まで一緒だった部下二人は報告のために王都へとやっている、そのため領主館まではピオーリョ兄弟がついてくることになっている。
「あーーー・・春が来ないかなーーーと思って・・・」
「こんだけ寒いから、春が恋しくなるのもわかるけどな」
もう十二月、もうすぐ新年、この世界は月が夜空にふたつも浮いているというのに、前の世界と同じように一年は十二ヶ月で区切られている。運営は前世の常識を物語の世界の中に取り入れるものなのだ。
「気をつけていってらっしゃい!」
アマリアや他の修道女さんに混ざって、レイチェルさんが手を大きく振っていた。
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