第二十五話 爆発
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目の前の商船には火薬を積み込んでいたらしく、引火して大爆発を引き起こした。
炎と共に無数の落下物が弧を描いて海へ落ち、無数の水柱と飛沫をあげている。大きな穴が空いた船が軋む音を立てながら横に傾き、船底が海面から上に浮き上がる。
「きゃああああ!」
大きな波が海面を揺らし、漁師の出した船にしがみつくようにしてつかまりながら、やりすぎちゃったなあと、ペリグリンは心の中でつぶやいた。
ブリタンニア陸軍を指揮する際には旅団准将となって大砲を使った戦を得意とするため、上司に重宝されているという自覚がペリグリンには確かにある。
敵が取引の為に利用する入江を見せてもらい、水深が深い場所がどこになるのか、どの程度の船であればどの辺りに錨を下ろす事となるのかを、地元の漁師とピオーリョに教えてもらったペリグリンとしては、入江に船が5隻来ようが、10隻来ようが恐れる必要など何もない。
上から狙い撃ちにすれば良いだけの話なのだからね。
船が停泊する場所も分かるし、事前にどんな船なのかも分かっていたわけだから、バンデイラ要塞から運んできた大砲を設置し、発射角度を調整し、カモフラージュとして雑草の山を大砲の周囲に積みあげた。
ルシタニア人の商船とブリタンニア海軍の船2隻が早めに入江に入ってきたので、大砲の位置を微調整して回る。ペリグリンは計算が得意だから、大砲の調整は他人に任せるより自分でやったほうが確実なのだ。
満月の夜は満潮となって入江の水深が一番深くなるため、大きな船は必ず満月の夜に現れるという話を聞いたけれど、煌々と輝く満月の下での微調整は本当にやりやすかった。
船に乗り込んだピオーリョからの合図を受けて、まずはペリグリン自身が大砲を操り、ルシタニア商船のメインマストをへし折った。
この大砲を合図に、船3隻へ砲弾が次々と撃ち込まれていく。アルジェイーナの船はあえて今回は狙わない。確実に仕留めたい船にだけ照準を合わせたわけだ。
ある程度マストが折れた所でペリグリンは崖を滑り降り、アンドレが用意した漁師の船に乗り込んだ。
ルシタニアの商船にはヴィオやルシオ、ピオーリョ兄弟が乗り込んでおり、誘拐されたブリタンニア人女性を助け出す事になっている。救出現場となる海上にブリタンニア人であるペリグリンがいたほうが何かあった時に彼女たちの助けになるだろうと考えたからだ。
そうして船から逃げ出したブリタンニア人女性の中に、乳母の娘であるレイチェルが居たのには驚いた。ペリグリンの実家で働いている彼女は休暇をとって自宅に帰ろうとしていた時に誘拐をされたと言うのだが、まさか、他国であるルシタニアで再会するとは思いもしない。
だけれども、
「ヴィオ兄が降りてこないんだよ!」
と言うルシオの言葉で、レイチェルを構っている場合ではなくなった。
ピオーリョの弟のケイショが船から海に飛び込んできたというのに、その後に続いて誰も飛び込んでこない。
泳いで船までやってきたケイショは、
「お兄ちゃん、ご主人様と一緒に戦ってる」
と言い出した。
アンドレが睨みつけるようにして船を見上げていると大爆発が起こり、何かの塊を抱えたヴィオとピオーリョが、船の上から飛び降りてきた。
水飛沫をあげて飛び込んだヴィオは、肉の塊のような頭がはげあがった中年男をピオーリョと協力しながら小舟まで運んでくると、船に押し上げながら言い出した。
「アンドレ!死なせないでよ!結婚祝いに持っていくんだから!」
船はいよいよ沈みだし、周りは大騒ぎとなっているというのに、額を傷つけたままの血だらけのヴィオはアンドレの顔を見上げながら、
「コンドワナに運ばなくちゃいけないんだ!分かっているよね?」
と言って、船の上に上がって来ようとはしない。
「早く上がりなさいよぉ!体が冷えちゃうわ!」
と、レイチェルが叫び、
「ご主人様よ、あんたも船に上がった方がいいよ」
ピオーリョが声をかけても言うことを聞かない。
ヴィオは泣きそうな顔でアンドレを見ながら、
「お願いだから死なせないで、生きたまま運んで」
と、アンドレに対して懇願し続けている。
真っ青な顔で泡を吹いている中年の太った男は意識を失っているものの、息が止まっているわけではない。
ペリグリンが後から知ることになるのだが、この中年の男、ボルボーン男爵はルシタニアの貴族であり、ジョゼリアン第一王子暗殺に深く関わった男ということになるのだ。
「大丈夫、大丈夫です。コンドワナまで運ぶことが出来ます」
アンドレが船の上から諭すように言うと、ようやっと納得した様子のヴィオは泣きそうな顔に無理やり笑顔を貼り付けると、
「そうか・・なら良かった」
と言ってぐるりと反対方向を向くと、
「私は泳いで陸まで戻るから、みんなは船で戻ってくれ」
と言って泳ぎ始めてしまったのだ。
海に入ったままだったピオーリョは追いかけていくかどうしようか悩んだようだったが、アンドレが首を横に振るので追いかけるのをやめたようだった。
「ペリグリンお兄様?何処に行くの?」
船の上にアンドレやケイショ、ルシオやレイチェルを置いて、ペリグリンは海の中へ飛び込んだ。
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