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第二十四話  憤慨

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

ピオーリョ、お前、本当に良い奴だよな。


ヴィオはシナっとした黒髪の、軽薄な顔立ちをした男を横目に見ながら自分の首を横にブルンと振った。

今、船の上に残っているのはヴィオとピオーリョだけだ。数日の付き合いしかしていないというのに、肝心のところで諭されたヴィオは、唇を噛み締め過ぎて血が滲んでいることにも気が付かなかった。


「予言の聖女であるベネディッタ嬢は、戦争で死ぬ人間を最小限にしようと決めていた。多くの人間が死ぬ姿は見たくないという理由でね。だから、我々に恭順の意を示したわけだが、翻って考えてみるに、お前はどうなんだ?決して勝つ事の出来ない敵を前にして、あらがって、あらがって、あらがい続ける事を選んだようだが、その先に一体何がある?何千、何万という民の死体しか残らないんじゃないのか」


コーランクールは滔々と語りながら、侮蔑と嘲笑を浮かべて悪役令嬢を見る。


「ブリタンニア海軍はメロヴィングに降った、間もなくブリタンニアの議会もメロヴィングへの融和路線を選ぶだろう。エスパンナも然り、下々の者の考えはどうであれ、貴族どもは皇帝へ恭順の意を示している。ブリタンニア、エスパンナ両国がメロヴィングへ首を垂れる中、お前らルシタニアはどうする?王家は新大陸に移動し、我らに恭順を示そうにもその役割を担う高位身分の者は誰一人として残っていないじゃないか!」


 コーランクールが言っている言葉はもっともだ。

 王家は新天地へと逃げ出し、ヴィオは後を任された形となっている。


 メロヴィングと戦争をしている間は、常に、父であるミゲルや仲間の姿が近くにあったから、王家の不在を不安に思うことはなかったのだ。だけど今は、肝心の王家がここに居ないことに安堵しながら、この先訪れるかもしれない破滅を目の前にして、心の奥底から震え上がるような恐怖も感じている。


 確かに、このままで行けばブリタンニア、エスパンナ、ルシタニアの三国同盟は崩壊するだろう。そうなれば、取り残された我が国は滅びることになるだろう。


「要塞の大砲を使って我らを一網打尽にした策は認めるが、それもまた、昨年の戦いと一緒。一勝を勝ち得る事が出来たとしても、それはただそれだけの事。僅かなブリタンニア人女性を救い出す事が出来ただけで何が残る?ブリタンニアの戦艦を半壊させ、よりルシタニアとブリタンニアの間に大きな亀裂を残すことになっただけだろう?」


 入江を取り囲むように配置された大砲は問答無用で火を吹いている。砲撃を受けたブリタンニアの戦艦2隻もまた、マストが折れ、船に穴が空き、航海など到底出来ない状態となっている。奴隷と武器を受け取るためにやってきたアルジェイーナの船は反転し、入江から逃げ出す事となったが、残った3隻は航行不能の状態となっている。


「お前がなんと言ったって、一勝は一勝だよ。武器の横流しを阻止し、誘拐された女性たちを救出する事が出来た。我々は命令を遂行し、お前らに勝つことが出来たんだよ」


柱の影から姿を現したヴィオが胸を張って言うと、コーランクールはおかしそうに笑い出す。


「ドレスを着て恐怖に顔を引き攣らせて悲鳴を上げるのはあくまでも演技、汚いズボンにシャツ姿で転げ回っているのが真実の姿か」

「ああそうだね、10歳の時からそんな感じで過ごしているよ」


 王宮に引き取られてすぐに、少年兵として陸軍に入った。

 王宮で王子妃教育を受けるのは仮の姿、軍で絞られているのが本来の姿になる。

 破滅の未来から逃れるために、ルシタニアが敵国に隷属しなくても良い道を選べるように、最善の道を選んで歩いていたはずだった。


「私にそのつもりはなくても、確かに私は悪役令嬢かもしれない。私の選択の所為で、お前が言うとおり多くの人間が死ぬのかもしれない。死者を少なく見積もるだけの為に選択をするのであれば、確かに、メロヴィングへの隷属を選ぶだろう」


 そうだろう?みたいな感じで笑うなよ。


「だがな、そんな事を安易に選択して民が喜ぶのか?ルシタニア国民の立場を奪ってメロヴィングに隷属させるのが幸せの選択なのか?物言わぬ人々については考える必要もないと?」


 ああ、腹が立って仕方がない。


「彼らの存在をこの世界から無くしてしまう選択をして、戦役として取られ、迫害を受け、陵辱を受け、虐げられるだけの未来を、自分たちは無事にやり過ごす為、それだけの為に彼らに押し付ける事など私には出来ない!」


 虐げられる人々を見過ごせない、メロヴィングによって自国民が声を上げることもなく踏み潰されるのを黙って見てなどいられない。


「はっ!何故、我らの属国となると虐げられる一択になるんだ?」

「お前らが属国にどういった扱いを行っているかを、こちらは十分に理解している」

「思い込みが激しい奴らだ」


 あはっははっはとコーランクールは笑うと、男爵に向けていた銃口をヴィオに向けた。


「どこまでいっても我々が勝つことは決定事項なのだ。だというのに、ちょこちょこちょこちょこと出てきて我らの邪魔をするお前の存在が気に食わない。人々を死に追いやる選択しか出来ぬお前など生きていても災いにしかならない」


「自国を守る誇りを捨てず、民を守ろう、侵略を防ごうと行動する事が災いと言うのならそう思えばいい!それで悪役となるのなら上等だ!お前らが信奉するヒロインなどクソ喰らえだ!」


 爆薬に引火したのだろう、轟音と共に炎が噴き上がり、船が大きく傾いた。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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