第十二話 親友からの手紙
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『 最愛のレイチェル・W 君の事を嫌おうとしたよ、
ジョークとしてはふざけすぎだよ、僕は許せない。
君は大事な物を持っていなくなったけど、取り戻す機会はある。
僕のウェヌス、君を愛する気持ちに偽りはない。
最高の崇拝と変わらぬ忠誠を示して。
ヘンリー・ベルナドッテ 』
最愛は重要人物を示し、レイチェル・Wが今回の武器横流しの黒幕を示す。Óのアクセント表示が上司を示し、大文字のJとFはイニシャル、つまりはヘンリーの上司である駐在全権大使であるジョン・フッカムを示している。僕は許せない、つまりは早急な大使交代を求めている。
大事な物を持っていなくなった、これはブリタンニア国内で誘拐されている女性を示しており、今回に限り、取り戻すチャンスがある。
CがÇに変換された数が船の数、ウェヌスはビーナス、明けの明星を示している。その周囲に日にちを表す『・』が一つ、つまり翌日の明け方を示す。ブリタンニア王家への最高の崇拝と忠誠を。
ペリグリンは自分の髪の毛をかき回すようにしてぐちゃぐちゃにした。
やっぱり武器の密輸に我が王家の人間が絡んでいたわ!そうだとは思ったけど、現実を目の当たりにすると頭が痛くなってくる!駐在全権大使のジョン・フッカム、やっぱりコイツは使えなかったか!うちも人材不足だから、この調子でいくと上司であるアーサー・ウェストウィックが駐在全権大使としてエスパンナに送り込まれるかもしれない!
ルシタニア軍はうちの上司に来てもらいたいんだよ〜。期待値が高すぎて、上司がエスパンナに派遣されるかもとか、言い出しづらい〜。
「アンドレさんがヴィオを引っ張り出したようなので、とりあえず食堂の方へと向かいましょうか?お茶や軽食程度だったらすぐに用意いたしますので」
副師団長のロナウド・ペソアが声をかけてきた。今はがっちり友好国となるブリタンニアだけれども、ペリグリンの監視についている形だ。
「ペリグリンさん、武器の横流しを調べるということが貴方の任務だという事はお聞きしているのですが、どの程度まで関わる事が貴方の望みなのでしょうか?」
茶褐色の髪を短く刈り込んだロナウドは好青年だけれども、笑っていても目が笑っていない。
「実は我が国ではブリタンニア女性の誘拐が問題となっておりまして」
「ああ、そうですよね」
「それに、武器を横流ししている我が国の海軍も拿捕したい。私利私欲のために武器を売りに出すなど軍法会議ものですからね?もちろんその後には極刑が待っているという事になりますし」
「つまりは極端な手に出ても構わないと?」
「ええ、構いません。そちらは武器の横流しをしている仲介者とやらを捕まえたい、我々は、誘拐された女性たちを無事に救出したいと考えている。そこの辺りでひと工夫もふた工夫も必要になると思うのですが」
「そうですね、そこの辺りの事についてはヴィオが非常に得意なので、知恵を絞ってもらいたいと思います」
ここで少年兵頼り?意味がわからない!
「ヴィオといえば、酷い話でしたね?」
「何がですか?」
「元婚約者の結婚式に招待されたとか」
アンドレがヴィオを引っ張り出したという事だから、みんなでヴィオを励まそうという事だろうか。そうして、ペリグリンが食堂の方へと移動をしていくと、悲壮な泣き声が奥から響いてくる事に気がついた。謝る声と、ドスを効かせた怒りの声。
「てめえ何をやってやがるんだ!バカか!商会に泥塗る行為だってことを分かっててやってんだろう!なあ!おめえは分かってやってたな!商会に泥を塗りたくると分かった上でてめえの意思を貫こうとしたわけだ!クソが!死ね!今すぐ殺してやる!」
ヴィオの側近であるアンドレは、キレると執事モードがどこかに飛んでいってしまうのだ。
「アンドレさん!子供を殺しちゃダメですよ!」
「黙れロナウド!止めるんじゃねえ!こいつはやってはならねえ事をやったんだ!」
止めに入ったロナウドとアンドレの間で、ルシオがもみくちゃになっている。
そんな阿鼻叫喚の状態を、ほお杖をついてボーっと眺めるヴィオをペリグリンが見下ろすと、
「すぐに収まるんで、座って待っていたらいいですよ」
と言って座るように促してきたのだった。
あんなに接待、接待言って張り切っていたのに、ヴィオは全然元気がない。
「あのさ、一体何があったわけ?」
「いや、その、大きな結婚式があるわけなんですけど」
「君の元婚約者の結婚式だろ?」
「お聞きでしたか。それで、その結婚式でワインなんかのアルコールを用意しろと商会に注文があったんですけど、担当者のルシオが駄物を用意しちゃったものだから、アンドレの怒りに火をつけたんです」
「ああーーー・・・」
元婚約者、ヴィオに祝いに来いと言った上で、当日の飲料関係も用意しろって言ってきたわけ?すげえな。
「コメルシオ商会が舐められたと思ったんだろうねえ」
「いや、自分としては光栄な事だと思っていたんですけどね」
この子、商売根性が凄いな。それとも、元婚約者と関われる事になるからそこに喜びを抱いているとか?むなしすぎる。
「それで?ペリグリンさんも困り果てたような顔をしているようですけどどうしたんですか?なんかありました?お客様がお困りなようでしたら、最大限対応させていただきますので、何でもおっしゃってください」
ヴィオ、声に元気がないよ?そこまで元婚約者の結婚がショックだったの?大勢の前で婚約破棄された上に、その時付き合っていた相手は捨てて、更に別の人間と挙げる結婚式に招待するような奴の事なんか忘れてしまいなさい!
「いやー、今回取引されるブリタンニア人女性は絶対に救出したいんだけど、この人数でどうやったら救出できるのか頭を悩ましているところなんだよ」
ペリグリンはヘンリーが残した暗号文の手紙を見せながら、ヴィオに手紙が示している内容(武器の横流しに関わっている王族の部分は伏せた上で)について説明し、
「ヘンリーもいっぱいいっぱいだったのかなって、この暗号文を見て本当に思うよ。僕以外の人の手に渡っても内容すぐに分かっちゃうような出来だもの。つまりは、エスパンナのカディスの状態はかなりまずい状態だっていう事でもあるわけだね」
と言ってため息をつくと、ヴィオは琥珀色の瞳をキラキラさせ始めた。
「つまりは、主に横流しの武器を積んでいるのがブリタンニア海軍の船で、商船と偽ってラゴスに入港するのが女性を乗せている船で、武器と女性を載せてアルジェイーナに帰るのが海賊船という事ですよね?しかも、ブリタンニア海軍の船も、最悪沈没してもいいと?」
「そうだね、海軍の船も悪いことをしているんだから、最悪沈没してもOKだと思う」
王族案件だから闇に沈んでも問題ないだろう。
ヴィオは胸の前に腕を組み、しばらく俯いて考え込んだ後に、
「3隻の船がどこで取引するのかという事については特定する事が出来ます」
と、言い出した。
「それに、船を破壊する事が出来るというのなら、囚われた女性たちを完璧に救出する事も出来ます」
「どういう事?」
「それはですね・・・」
その時、ヴィオはものすごく意地悪そうな笑みを浮かべたのだった。
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