第十一話 だって許せなかったんだもん
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僕の名前はルシオ、十二歳、これでもコメルシオ商会で働いているし、有望株とも言われている。
商会の会長であるヴィオ兄があんなに若いし、男だか女だかわかんないし、後ろ盾が大物すぎてわけわかんないし、
「お嬢が拾ってくる奴は有能だって決まっているからな」
わっはっは、みたいな感じで周りの人もどっぷり仕事漬けにさせるような鬼畜ばっかりが揃っているんだよね。
1年ほど前にルシタニア王家が一切合切の全てを持って海を渡って新天地に行っちゃったものだから、僕はめちゃくちゃムカついた。ヴィオ兄は仕方がないとか言うけど、ちょっと信じられないよね、普通、自らを慕う民とか捨ててっちゃう?普通は捨てて行かないでしょう?
色々と理由はあるかもしれないけど、王家への不信感バリバリだった僕は、今回、アルフォンソ殿下の結婚式のために、最高級のワインを取り揃えてコンドワナに送る手配をしろと命令されたんだけど、バカじゃないの、死ねばいいと本気で思ったわけ。
だってそうでしょ?こっちは20万のメロヴィング軍が押し寄せてくるかもしれないとか、いつ、アレクサンドルがイムラス半島にくるかわからないっていう状況だっていうのに、寝言は寝てから言って欲しい。まじでバカか?ワインなんか、てめえが移動した新天地でてめえで作っててめえで飲んでろって本当に思ったよ!
だけどさ、
「色々と言いたい気持ちは分かるけど、我が王家の為だと思って」
とかヴィオ兄が言い出すわけさ。
確かこの人、最後の舞踏会で当人から婚約破棄されてなかった?
コメルシオ商会の後ろには確かにルシタニア王家が存在するんだけど、今、この時点でそこまで忖度する必要ある?
「出来る限りの努力はします」
渋々と僕は言ったけど、僕は本当に、出来る限りでワインを用意してやるって思ったわけだ。
本気出したらヨーロニア貴族を黙らせるレベルの物を百箱だって用意出来るけど、まじで本気なんか出ないから、最高級品20箱、中級レベル30箱、ハウスワインレベル50箱と酒樽とリキュールを用意して、サグレスから送る手配をしたわけさ。
サグレスにアルコール関係を集めていたから僕はヴィオ兄のお出迎えが出来たんだけど、祝辞をのべるためにヴィオ兄がアルコールと一緒にコンドワナに行くかもしれないって聞いた時には青ざめたよね。
えええ?婚約破棄されたのに、破棄してきた相手の結婚式に参加するなんて誰も思わないでしょう?
下っ端レベルが、戦時下ですが集められるだけのワインを持って参上いたしました!なんて言うのならこのレベルのワインでも許されるけど、会頭が持っていくワインとしては許されない。コメルシオ商会はそういったレベルで商品の勝負をしていないからね?
というわけで、僕は数日中にヨーロニア諸国の貴族が唸るレベルのワインを80箱用意しなくちゃいけないわけだ。
酒樽とかも用意したけど、めちゃくちゃ安物なんだよ!どうしよう!エスパンナから仕入れたシェリー酒も3級品だよお!今から行っても、国内の政情不安が酷すぎて、酒蔵まわりもまともに出来るわけがないよお!
「いや、でも、あそこの酒蔵に行けば何とかなるか?今、エスパンナってどんな状況だったっけ?侵入するにはどこから侵入すればいいんだ?」
「こんな時間までどうしたんだ?」
肩をポンと叩かれて、僕は思わずその場で飛び上がった。
ヴィオ兄はブリタンニア陸軍に対する憧れが凄くて、ウェストウィック閣下からの要請が来たって聞いた時には、自ら手を挙げる位の心酔ぶりだったんだよね。
閣下さえいれば20万のメロヴィング軍が来たって大丈夫!とか言うんだけど、本当にそうなの?ってこっちは疑問にしか思えないんだけどね?
そんな閣下の心をルシタニアに傾けてもらう為に、閣下の部下であるペリグリンさんにゴマすってゴマすって、誘拐されたペリグリンさんを守るために崖から飛び降りたっていうんだから、本当にアホだと思う。
だけどさ、そんなヴィオ兄がさ、アルフォンソ殿下が結婚するからお前も祝いに来い!なんて手紙が送られてきたらさ、シクシクシクシク泣いているんだよね。
乙女か!って思ったけど、あの人、乙女だったわ。まだ十六歳だもんね?男なのか女なのか訳がわかんなくなっていたわ。年齢も若かったんだよね、しかも、本当は貴族の令嬢だもんね?
「ヴィオ兄・・・」
僕の目から大量の涙が溢れ出た。
ギョッとするヴィオ兄の足元に僕はひれ伏すと、
「ヴィオ兄!ごめん!コンドワナに送るようのワインなんだけど!3級品ばっかりになっちゃったんだよ!会長が持っていくようなワインは二十箱しか用意出来ていないんだ!」
僕はワンワン泣きながら懇願した。
「これからエスパンナ行って、最高級のシェリー酒手に入れてくるよ!ポルトに行って最高級のポートワイン手に入れてくるよ!だからお願い!僕が用意した安物ワイン持ってコンドワナに行かないで!」
ヴィオ兄は最初、酷くびっくりしたみたいだけど、
「お前、私が失恋したとでも思って、仕返しするつもりで駄品を用意したんだな?」
と言いながら、うずくまる僕を立ち上がらせると、
「てめえ何をやってやがるんだ!バカか!商会に泥塗る行為だってことを分かっててやってんだろうなあ!」
アンドレさんが執事モードをかなぐり捨てて、僕の胸ぐらを掴みあげたのだ。
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