第十話 サブストーリーが追いかけてくる
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悪役令嬢となってゲームの世界に転生したヴィトリア・デル・フォルハスは、メインヒーローであるアルフォンソがコンドワナに逃げ出してしまった為、今現在、自分がどこのルートを進んでいるのかが分からない状況となっている。
ゲームの通りにサブヒロインとの入れ替わりが起こったけれど、逃げ出す事に成功した為、破滅エンドは回避。その後はヴィトリアとしてではなく、少年兵ヴィオとして生きているし、ゲームのメインストーリーからは逸脱する事に成功したと思っている。
ゲームの通りでいけば、アルフォンソ率いるルシタニア軍と、皇帝アレクサンドル率いるメロヴィング軍が激突し合い、皇帝に気に入られる事となったアルフォンソはルシタニアの統治を任される事になる。つまりは属国となった上で平和を迎える事となるのだが、前回の戦いでは皇帝が来なかったし、メロヴィング軍はすぐに敗れるし、停戦協定も結ばれるし。
今は戦争と戦争の合間の休憩時間のようなものだと思っていたけれど、海賊、3隻の船、ラゴスでヴィオは思い出した。
これってアルフォンソルートで海賊を撃退するサブミッションじゃないのよ!
海戦で大負けしたメロヴィングは船が沈没するか壊れてしまったので、皇帝はアルジェイーナの海賊を使って南部ルシタニアを侵攻しようとする。まずは物資の拠点としてラゴスが狙われるけれど、ここでの戦いでアルフォンソは絶対に完勝できない。
第一王子であるジョゼリアン殿下が亡くなっていた場合、ブリタンニア海軍の協力を得る事が出来ず、どのルートを選んでも敗退する事になってしまう。ここで敗退して皇帝に南部を押さえ込まれてしまうが為に、ルシタニアは属国エンドしか迎えられなくなってしまうのだ。
バンデイラ要塞の幹部連中が招集され、机の上には近隣から沿海まで記された無数の地図が置かれていき、沿岸を船が通りかかった際に大砲で船を攻撃することで話し合いが続けられている。
だけど、何やったって無駄だよ!隠された港に船3隻でやってこられたらこちらとしては有効な打撃を与える事が出来ないんだもん!1隻、いや、2隻までだったらいけたけど、3隻だったらアウト決定。なんでジョゼリアン殿下、死んじゃったんだよお!
「お嬢様、お嬢様」
ドアをノックした後、返事も待たずに部屋へと入って来たアンドレは、執事としては失格だと思う。
ベッドサイドに置かれたテーブルにコップを置くと、
「ホットミルクでございます、飲まれた方がよく眠ることが出来ますよ」
と言って、ベッドサイドの椅子に座り込む。
「一応乙女が寝ている部屋なんだけど?」
この親父、ミゲルパパと同じ歳だったと思うんだけど、色々と失礼なんじゃないんだろうか?
「ですが、お嬢様は平民出の少年兵という設定ではございませんか?」
「そこでその設定持ち出すわけ?」
「そうとでも考えてお嬢様のお部屋を伺わないと、このアンドレ、うかうかと夜を過ごす事など出来ませんよ」
アンドレはそう言って胸の前で腕を組むと、
「作戦会議にも参加せずに、布団に潜り込んでこんな態度をとっているという事は、生まれ変わる前に読んだ物語というのを思い出したのに違いありません」
「・・・」
「一体何を思い出したんですか?どうせ我々に都合の悪い事を思い出したのでしょう?」
ヴィオは大きなため息を吐き出した。
「お嬢様はダメだ、無理だと言っていましたが、リカルド様の暗殺を阻止する事が出来たじゃないですか?」
「だけど、ジョゼリアン王子はどうにも出来なかったよ?」
「ジョゼリアン王子を殺したのは、お嬢様と同じように生まれ変わる前の知識があって、同じように物語を読んでいる『ヒロイン』ではございませんか?」
「そうだけど」
「何事も諦めずに取り組むのがお嬢様の唯一の良い所ではございませんか?今回も諦めずに策を講じれば、挽回する事も可能ではございませんか?」
「唯一がそれ・・・」
「私は、絶対に何とかしようと常に考えるお嬢様を尊敬しておりますよ?」
「じゃあ、馬車を追いかけて行ったのは怒らない?」
「・・・・」
「説教する気満々だったでしょ?聖アンドレの説教だ!」
「それとこれは別の話でございましょう」
「あー、なんでアンドレが私のお目付役なんだろうー!」
ベッドから起き上がったヴィオは、用意されたホットミルクに口をつけると、
「これ、お酒が入ってるじゃん!」
と言って、アンドレを睨みつけた。
昨今の流行りだった異世界転生をする事になったヴィトリアは、ゲームの世界に生まれ変わったと思うのだけれど、ゲームのストーリーが現実となって目の前に突きつけられると、ほとほとうんざりしてしまうのだ。
「アンドレ、このサブストーリーは捨てるしかないクソ案件で、私にはどうしたら良いのか全然わかんないよ」
「お嬢様は、過去に見た物語と今の状況が同一であると考えるんですよね?」
「そう、今はサブイベントの出だしの所で、これからラゴスには海賊どもが続々と現れる事になるんだよ」
「海賊とはアルジェイーナの海賊の事ですか?」
「そう」
「なんで海賊が現れるのですか?」
「皇帝がルシタニアの南の港湾を押さえようと考えているから」
「なんで南の港湾を押さえるのですか?」
「皇帝は自国の船の代わりにアルジェイーナの船を活用する事を決定したから。ルシタニア南部の港湾を次々と抑えて、皇帝はまずは南の占領を確実にしようと考えているから」
「それは物語の中での話ですよね?」
アンドレは足を組み、眉間に皺を刻みながら考え込む。
「今、ヨーロニア中央に皇帝は目を向けているので、エスパンナや我がルシタニアなんかは二の次、三の次といった所ですよ。何せ一度は征服したオラスムニアの大都市ウィアナが不穏な動きを見せていますからね?中央から目が離せないと言っていい」
そう言って口をへの字に曲げるとアンドレは言い出した。
「そもそも、その物語の中にブリタンニアの諜報員が出てきたり、暗号文が登場したりしたんですか?推理物が中心となるのはペドロ・デル・カルバーリョ公子のお話で、王宮でサスペンスとか何とか言っていたではないですか」
「それはそうなんだけど」
「ペリグリン様やピオーリョ兄弟が出てきますか?」
「いや、絶対に出てこない」
「それじゃあ、コーランクールは?」
「はい?」
「ブリタンニアの諜報員であるヘンリー・ベルナドッテを殺したのはこんな男だったそうですよ?」
アンドレが渡してきた紙には、漆黒の髪で暗い瞳をした、鼻筋が通り唇の薄い男が描かれている。どうやら、皇帝の懐刀と言われるコーランクールをブリタンニアで見失ったと思っていたら、ラゴスに潜伏していたらしい。
「コーランクールが一諜報員を自らの手で殺る?」
「ピオーリョが言うのには、本日、夕刻ごろに奴隷商のマルコに呼び出され、約束の時間に向かった先で、黒髪の男、つまりはコーランクールにブリタンニア人の遺体を運ぶように依頼されたという事です。そのまま聖アンドレ教会に行ってペリグリンさんを回収するようにも言われたそうで、言われた通りに教会で誘拐し、マルコの事務所まで運ぶ途中でお嬢様に邪魔をされたという事なのですが」
えええー!ここに来てコーランクールって!色々と面倒くさくなって来たんだけどー!
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