第六話 隣国エスパンナの混乱
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サグレスはヨーロニア大陸の最西端に位置する街となるのだが、そのサグレスの隣街となるラゴスから、海岸線をそのまま東に300キロほど移動すると、ルシタニア王国の隣国となるエスパンナ王国との国境となる。
ちょうど一年前の事だった。
「ルシタニアを占領したら半分はお前にやるよ」
なんて事を言われたエスパンナのニコラス王は、自分たちも戦争には協力しますよ!とメロヴィングのアレクサンドル皇帝に申し出た。
申し出たのは良いけれど、そんな時に限って、浮気三昧の王妃のスキャンダルが流出。エスパンナ国民の王家に対する支持率が一気に低下。そこで皇太子がクーデターを起こして王位を簒奪したのだ。
息子に王位を奪われたニコラス王はアレクサンドル皇帝に泣きついて甘言に乗り、エスパンナのありとあらゆる権利を皇帝に売り渡し、俗世を捨てて、大金を抱えて、田舎町へと引っ込んでしまったのだ。
ルシタニア王国も王家が国民を見捨てて船で大移動をしているのだが、エスパンナの場合、全てを売りつけて、大金を持って逃避行に出たわけだ。
皇帝は自分の兄を新たなるエスパンナの王として送り込んだけれど、上手くいくわけがない。エスパンナの一切の権利を買い上げたからなどと言われても、国民が従うとは限らない。そんなわけで、隣国エスパンナは今、めちゃくちゃな事になっている。
各地で蜂起したエスパンナ国民を支援するため、ブリタンニアはエスパンナ王国内へ武器を提供することになった。憎き皇帝と共に戦おうということなのだが、武器の搬入にあたって問題が生じることになったわけだ。
一部の武器が敵国となる南大陸に位置するアルジェイーナへ横流しされていること。武器取引が行われるのが南部ルシタニアの港湾の街ラゴスということで、ルシオ少年を含めた四人は荷馬車でラゴスまで移動することになったわけだ。
ラゴスは、ベンサフリム川の河口にある街で、海賊の襲撃を防ぐ為の城壁が張り巡らされていた。バンデイラという名前の岬には小さな要塞が設けられ、ルシタニアの歩兵連隊が駐留している。
「僕らは駐屯地に顔を出さなくても良かったのかな?」
魚や貝をトマトソースで煮込んだ、郷土料理を出す店へと連れてこられたペリグリンが疑問の声をあげると、
「大丈夫ですよ!問題の船は途中で寄港したみたいで、まだこちらの海域に顔を出していないみたいですから」
と、夜食を食べるためにレストランまでくっついてやってきたルシオ少年が言い出した。
「その船がブリタンニアの何処かの港に寄ったという事は、多分、奴隷を乗せてくるんじゃないのかなと思います」
ヴィオが予約した店は魚介料理で有名な店であり、店は個室を用意してくれていた。個室を利用するような上等な服を着ているわけではなかったけれど、どうやら顔パスできるほどの常連のようだった。
だから、少し込み入った話をしても大丈夫なようで、
「ペリグリン様、ここはガチョウ亭のようにメロヴィングのスパイが入り込むような場所ではありませんので、ご安心ください」
と、アンドレが微笑を浮かべて言い出した。
「そうですよ、ペリグリンさん!ここは敵の人間が入っても気付かないようなとぼけたレストランではありませんから!ご安心ください!」
と、ヴィオが胸を張って言い出した。
すみません、ブリタンニア側で用意した場所がヘボだったようで、すみませんと、ペリグリンが心の中で謝りながら言い出した。
「ところで奴隷を積み込むというのはもしかして・・・」
「ブリタニアン人女性の誘拐は問題になっていますよね?」
ヴィオが表情を曇らせながら言い出した。
「最近、アルジェイーナでは白人金髪の女性がかなりの高値で売買をされてますよね?それが大公家の資金源となっているようで、遺憾ながら、そこにラゴスの奴隷商人も関わって居るようなのです」
「ああ―・・それですか・・・」
ブリタンニア国内では、自国民女性の誘拐、アルジェイーナへの売買が大きな問題となっており、攫われた女性を解放するために部隊を送り込むかどうするかで、連日、議会が揉めている所でもあったのだ。
元々、アルジェイーナはメロヴィングの親交国でもあった為、ブリタンニアとしては敵も同じ。この際、大軍で出向いて潰してやるか、という意見も大きくなっている。
「対アルジェイーナ戦線にウエストウィック閣下を持っていかれるのは困ります。ですので、まずはブリタンニア、アルジェイーナの奴隷および武器の密輸の販路を潰そうと思っております!だって!ウエストウィック閣下にはルシタニア・ブリタンニア混成軍を指揮して頂かないと困りますから!」
ルシタニア軍のアーサー・ウェストウィックへの愛が凄い。
「とりあえず、詳しい話は明日、駐屯地でいたしましょう。今日は移動、移動でお疲れの事と思いますから、美味しい料理をたくさん食べて、明日に備える事といたしましょう」
取り皿に取り分けながらアンドレはそう言うと、ペリグリンの皿の上に大きなロブスターをのせて、目の前に差し出してきた。上司への好感度を上げる為なのか、ペリグリンに対する接待がすごすぎる。
美味しい料理、美味しいワイン、なんでもワインは植民地となっているマデルナ島で作っているワインだそうで、
「マデルナ島は標高が高い山があるので、高地でワイン用のブドウを栽培しているのですが、自分としてはメロヴィングに負けない美味しさだと自負しております」
と、悦にいった様子でヴィオが言ってきた。
確かに、メロヴィングもワインの生産地として有名だから、こんな所にもライバル心が芽生えてしまうのだろうか。
「はあ・・美味しかった」
船の中で出された菓子や軽食も美味しかったし、夕食として用意された海鮮料理も美味しかったし、こんなんで本当に良いのだろうか。隠密の作戦中に、こんなに美味しい思いをしていて本当に良いのだろうか。
至れり尽くせりの対応に若干の居心地の悪さを感じながら、ペリグリンがレストランの裏口から出て行くと、
「あ・・すみません・・・」
裏通りを歩いていた男がよろけた様子でペリグリンにつかまり、パッと手を離すと、ペコペコと頭を下げながら雑踏の中へと消えていく。
「追おうか?」
隣に立っていたルシオ少年が問いかけてきたので、
「いや、必要ないよ」
と答えて、ペリグリンは首を横に振った。
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