第五話 上司への愛がすごい
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ルシタニア王国内で破竹の勢いで急成長をしている商会といえば、コメルシオ商会となるだろう。ここ数年で急成長を遂げた商会はルシタニア王家と太いパイプを持つという噂もあり、王配の出身となるラムエスブルグ皇家とも取引を行うほどの大商会と言えるだろう。
船内でも丁寧な扱いを受けた三人は、南ルシタニアの西端に位置するサグレス岬で船を降ろしてもらい、サグレス教会で用意された荷馬車に乗って隣街であるラゴスを目指す事となった。
「三百年ほど前にルシタニアの王族が建てた、航海術を学ぶための海洋学園がサグレスにはありまして」
「はあ」
「サグレスには学園の他にも造船所、気象台もあったのです。ですが、辺鄙な場所であるが故に寂れちゃったんですね。一応ですが、ヨーロニア大陸の最西端として風光明媚な場所でもあるため、観光地としては密かに人気だったりもするのですが・・」
「はい!でた!ヴィオ兄のうんちくたれ〜―〜」
と、御者をしていたルシオ少年が呆れたように言い出した。
「うんちくの何が悪いんだよ!どうせ移動はしなくちゃならないんだから、ガイド付きで楽しく移動できた方がいいだろう!」
「だけどさ、ヴィオ兄ったら、造船所の観光、見学をさせようとしていただろう?このお兄さん、ブリタンニア人なのにどうかと思うんだけど?」
各国は自国の造船技術を秘匿するのが一般的なのだ、その造船所の見学会など聞いたことも見たこともない。
「バカ!お前は全然わかってないな!工場見学とか萌えるだろうが!好感度アップに繋がるんだよ!」
「言っている意味がわかんなーい!」
「申し訳ありません。ヴィオはとにかく、ペリグリン様を楽しませようと躍起になっているのです」
御者台に座っていたアンドレが申し訳なさそうに頭を下げるので、ペリグリンは困り果てた様子で小さな笑みを浮かべた。
サグレス教会で用意してくれた荷馬車の御者台にはルシオ少年とアンドレが座り、荷台にはペリグリンとヴィオが荷物を抱えた状態で座っている。
その日はとてもよく晴れた日であり、雲ひとつない青空がどこまでも広がり、草原の向こうには紺碧の海がどこまでも広がっているように見えた。
一年前の戦争でルシタニア入りを果たしたペリグリンは、輜重隊として活躍するヴィオにその時会っているのだが、ヴィオの側近であるアンドレともその時に顔を合わせている。
ルシオ少年は十二歳とまだ若いのだが、有能さを見込まれてコメルシオ商会で働いているし、軍にも協力をしているのだという。
ヴィオは今年十六歳となるのだが、おそらく、コメルシオ商会の立ち上げにも深く関わっているのではないのだろうか。
何しろ、ヴィオが言えば大概のものが用意されるし、配給に回る部隊の中にヴィオの姿を見かければ、皆が皆、ほっぺたも落ちるような食事にありつける事となったのだ。
武器も食事も過不足なく支給され、ブリタンニア軍は異国での戦闘という中で、大きなストレスを感じる事もなく、短期間で敵軍を拿捕し、送り返す事に成功する事となったのだ。その成果の裏には、この有能すぎる輜重隊長の活躍があったからこそだと言える。
ペリグリンがここまでヴィオと行動を共にして分かった事は、ルシタニア軍が上司であるアーサー・ウェストウィックに対してものすごく崇拝しているし、次の戦いでも、ぜひ、軍の指揮を頼みたいと考えているようなのだ。
「ラゴスと言えばやはり海鮮料理が有名なのですが、ペリグリンさんは魚派ですか?それとも肉派ですか?美味しいレストランの目星はつけているのですが、魚か肉かで場所が変わるんです。あ、それとも、食事の前に女ですか?自分は年齢制限あって同席は出来ないんですけど、アンドレが一緒に行くと思いますので」
そんなわけで、部下であるペリグリンへの接待が凄すぎる。
「アンドレも一緒に娼館に行くでしょ?アンドレだったらどこのお姉ちゃんがいいとか悪いとか知っているだろうから、きちんとご案内して!ね!」
「私の扱い、どうなっているんでしょうかね」
アンドレは不服そうに顔を顰めた。
「私は娼館案内所ではないのですが」
「そうか、アンドレはもう年寄りだもんね、そういう欲とは無縁の人間になっちゃったって事か」
ヴィオは憂い顔となってため息を一つつくと、
「だってアンドレさんって聖人アンドレでしょ?」
と、ルシオ少年が言い出した。
「ヴィオ兄がもっと小さい時に、夏は暑くてたまらんとか言いだして川で泳いだりしていたじゃない?そんな時は必ずアンドレさんが見つけ出して、川べりで延々説教していたじゃない?あの時、地元住民が、アンドレさんは聖アンドレの生まれ変わりなんだなって言っていたんだよ」
聖アンドレはコリント教の聖書に出てくる聖人の名前で、彼についての逸話の中に、川魚に説教している間に、聖アンドレの説教があまりにも素晴らしいものだから、魚たちも川を埋め尽くすように集まってきた。というものがある。
「その時は魚が一匹、アホ面していたんだけど、やっぱり聖人は聖人なんだなと思って」
ルシオ少年はヴィオを魚に例えて言っているらしい。
ペリグリンが思わずふき出して笑うと、
「ルシオ・・わかって言っているんだよね?」
ヴィオが冷たい声で言い出したので、少年は即座に黙り込んだ。
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