第三十一話 愛する婚約者
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意味不明な発言連発のヴィトリア嬢だが、ジョゼリアンは狂人だと断定せず、面白半分で『前世で知った物語』というものを根掘り葉掘り聞き出した。
ゲームとかヒロインとか悪役令嬢とか攻略対象者とか、理解するまでに相当な苦労を要する事となったけれど、五年後、メロヴィングの軍が侵略戦争を仕掛けて来るだろうという予想は兄の予想とぴったりと合致したらしい。
何処の国がどういう経緯を経てメロヴィングに恭順の意を示したかっていう詳細が分からなくて、兄はイライラしたけれど、
「やり込み系とはいえ恋愛がメインとなるので、周辺諸国の国際事情まではファンブックにだって載ってないですよお」
というのがヴィトリアの意見だった。
ヴィトリアが言う通り、ヒロインというポジションに立つベネディッタ・ボルボーン嬢が現れた時にはゾッとしたけれど、うまい具合にメロヴィングの属国とならず、ルシタニアを勝利に導く事ができるのであれば、相手が男爵令嬢であったって媚も売る。
ヴィトリアが言うような一目惚れをする事もなく、女性として特別好感を持つ事もなかったけれど、アルフォンソが最終的にラムエスブルグ皇家の姫君を娶るのは決定のようだし、こちらの都合よく働いてくれるのならば、付き纏っても何の問題もないと思っていた。
まさか、ヒロインが最短ルートとやらを選ぶ為に兄の殺害ルートを選ぶとか、ジョゼリアンの殺害を進めるために敵国メロヴィングの間者と手を組むとか、皇帝に尻尾を振るために事前準備としてこちらの情報を流していたとか、そんな事など考え付きもせずに、アルフォンソはヒロインを王宮内で重用した。
ベネディッタは世界は周りのキャラクター以外は塵芥とでも思っているようで、強制力という名の元、世の中は都合よくまわっていくものだと信じているようだった。だったら彼女が望むように断罪イベントとやらを実行せねばなるまい。
メロヴィングを騙すために兄がうつけ者を演じていたのだから、兄亡き後はアルフォンソがうつけ者を演じよう。
それも稀代のうつけもの、周りをあっと驚かせて、馬鹿じゃないのか?信じられない!ああ、これではルシタニアも終わったなと、集まった人々に思い込ませる。
それほどのうつけ者として断罪イベントなるものを強行したところ、何も聞かされていない婚約者は呆れたような様子で、
『今までバカだ、バカだと思っていたけど、本当にバカだったのね?これってあなたがそこまでしてやらなきゃいけない事なのかな?』
といった風に琥珀色の瞳で語りかけてきた。
断罪後は鏡の間にヴィトリアを呼びつけて、エマヌエラとアルフォンソは二人がかりで罵る事となるのだが、
「ブリタンニアだっていつ戦火に巻き込まれるかわかったものじゃないわ!ヴィアも連れていきましょうよ!」
叔母はヴィトリアを抱きしめて離そうとしない。
「ヴィア一人居なくたって、何の問題もないでしょう?」
グズグズ泣きだす叔母を抱きしめながら、
「私はイーリャママをブリタンニアにお連れしなくちゃならないから」
何度も、何度も、叔母の背中を優しく撫でながら、
「みんなが無事にコンドワナに到着する事をお祈りしています」
と言って笑顔を浮かべると、今度は大きなため息を吐き出して、
「断罪イベントなんてやる必要ないってみんなで決めてなかった?」
叔母の次にアルフォンソを抱きしめたヴイトリアは、呆れた声で言い出した。
「アルフォンソはアホで間抜けでクソどうしようもないバカ王子だってヨーロニア中に喧伝する事になっちゃったわよ」
「それは望むところだろ。王家総出で本国から逃げ出すんだ。王家の義務を果たしていないだの、大砲を前に怖気付いたか腰抜け、皇帝を前に逃げ出すのか弱虫、とかな、そんな事を言われるのは完全なる想定内だ。むしろヨーロニア中から罵られたいね」
「いやいや、ルートにはない選択肢だし、度肝を抜く判断だし、さすが我が王家!マジすげ〜って思うよ」
ヴィトリアはアルフォンソの顔を見上げると、
「エスパンナ王家は皇帝に恭順の意を示した。だけど、エスパンナの民も教会も、王家はそう判断したとしても絶対に抵抗するといって反乱を起こしている。そんな板挟みの王様はきっと敵国との交渉もせず早々に新大陸へ逃げ出した我が王家を羨ましく思うだろうね」
と言って淑女らしくない笑顔を浮かべた。
「エスパンナ国内の上と下の意見が合致していないのに、とりあえず我が国との国境線までやってきたメロヴィング陸軍のジュドー将軍は絶対に輜重で苦労する事になる。なにせ船で運べないからエスパンナ経由で武器や兵糧を運ぶ方法しかないからね。そのエスパンナが今は火事場状態だから」
「エスパンナはそれほどか?」
「間違いなく、それほどだよ」
ああ、俺は、この仮初めの婚約者を愛している。この婚約者をコンドワナに連れて行きたい、そうして俺のものに出来たらどれほど嬉しい事か。
「愛してるよ」
「私だって愛してるよ」
お前の愛が家族に向けるものと同様のものなのはわかっている。
だけど言わずには居られなかった。
「私だってヴィアの事を愛してるわ!」
二人を包み込むようにしてエマヌエラ様はそう言うと、
「もちろんアルフォンソの事も愛してる」
と、ついでのように言い出した。
悪いけど、今、本当にそういうの、いらない。
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