第三十話 俺の婚約者
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「これが俺の婚約者ですか?」
ベッドに寝かしつけられている少女は酷く痩せ細っていた、全身を怪我しているようで包帯でぐるぐる巻にされている。
「そうだよ、彼女が君の婚約者だ」
王配フェリペはそう答えて、息子であるアルフォンソの頭を撫でた。
「といっても、最終的にはラムエスブルグ皇家の姫君を君には娶らせるつもりだから、仮初の婚約者と思ってくれればいいよ?」
神聖なる皇帝の血筋をくむラムエスブルグ皇家、ヨーロニア諸国はこの血筋を尊いものとして王族の血筋に取り入れようと躍起になる。
「仮初の婚約者でも俺がこの娘の面倒をみなくちゃいけないんですか?」
「そうだね、今はまだ、君の婚約者なのだから」
父はそう言って息子の頭を何度も撫でると、興味を失ったとばかりに部屋から出て行ってしまった。
アルフォンソの婚約者として王室に保護される事となったのは、フォルハス公爵家の令嬢であり、継母からひどい虐待を受けて、今現在、包帯でぐるぐる状態となっている。
アルフォンソはこの国の第二王子で、この国の第一王子であるジョゼリアンのスペアとして存在していた。
年々、直系の王族の数は少なくなってきているから、もしも兄上に何かが起こった時のことを考えて、そこそこの熱意をかけて教育を受けていた。
母は公務で忙しく、父上はそんな母上にしか目を向けない。
優秀な兄上はみんなからの期待も高く、いたって平凡のアルフォンソはオマケ程度の扱いで、みんなの目には映っているのだ。
母上は王位を継ぐべき存在である兄上には目をかけているけれど、俺の事なんか視界にも入らない感じ。そんな母上お気に入りの兄上に父上も目をかけているけれど、存在感の薄い俺に対しては、気まぐれ程度に頭を撫でて終わり。
そんな扱いを受けるアルフォンソの婚約者が包帯ぐるぐる女。一応仮初の婚約者であり、実際には高貴な血筋の姫君を娶らせるって言うけれど、どこまで本気でそんな事を考えているのかが良く分からない。
とにかく、目の前の包帯ぐるぐる女はブリタンニアと太い繋がりがあるのだそうで、我が国としては大事にしているところをアピールしたいらしい。そのアピールに一番暇人なアルフォンソを当てがおうというつもりだろう。
「あーーーああ、面倒見るなら包帯ぐるぐるじゃなくて、可愛い美少女が良かったのになあー〜―」
ベッドサイドに置かれた椅子に座ったまま思わず独り言を漏らしていると、
「殿下はメイン攻略対象者だから、美少女ゲットマジで出来ますって!」
さっきまで眠っていたはずの包帯ぐるぐるが明るい声で言い出した。
「ザ!ヒロイン!って感じのピンクブロンドの美少女と将来王宮で出くわすのです。運命の恋とか真実の愛とか言い出して、キャッキャ、ウフフの楽しい青春を送る事が出来ます」
「何その予言?え?予言?本当に予言なの?意味わかんない」
「予言と思ってもらっても大丈夫ですよ?五年後に隣国のメロヴィングがエスパンナ経由で我が国に攻め込んでくるんですけど、ヒロインとキャッキャ、ウフフしながら殿下は敵を倒すことになります。だけど、ジョゼ殿下の毒殺だけは防いでください。ジョゼ殿下が死亡すると属国エンドしか選択なくなっちゃうんで」
「な・・何?属国エンド?」
言っている意味が半分ほどしか分からないけど、この包帯ぐるぐるは物凄く不穏な事を言っているんじゃないのか。
「五年後には皇帝アレクサンドル・ボアルネがヨーロニア中央を征覇する事になるので、ジョゼ殿下が生き残ってないとその勢いに飲まれて、どれだけ戦に勝っても属国化しちゃうんですよねえ」
「アレクサンドルがヨーロニア征覇だって?」
隣国メロヴィングは王政を廃止して以降、ゴタゴタを続けていたものの、国民投票という名のパフォーマンスを行った結果、軍人アレクサンドル・ボアルネを皇帝として認める事となった。今現在、国内の敵対派閥を潰しているところだけど、ある程度落ち着いたら外に目を向け出すだろうというのが大多数の意見だ。その皇帝アレクサンドルがヨーロニア征覇だなんて、夢物語にしか思えない話だけど、兄上だったら別の意見を持つのかな。
「お前、なんでそんな予言みたいなことが言えるんだよ?」
ベッドに身を横たえる包帯ぐるぐるは琥珀色の瞳を俺に向けると、ニコッと笑った。
「だってあなた、第一ヒロインのメイン攻略対象者だもの。こっちの手持ちの情報は全て渡すから、将来的に私への断罪は回避したいなあって思っているので」
「は?攻略対象者?」
「私、実は生まれ変わる前の記憶があるんですよ」
「なんだって?」
「そこで、この世界の事を物語〜・・みたいなものでみていて知っていて、それで、これからどんな展開になるのかっていう事は大体知っているんです」
「なんだか頭が痛くなってきた」
「アルフォンソ殿下、あなたって第二王子特性バリバリテンプレ通りのお悩みを持っていて、後継のスペアでしかない自分の価値ってなんなんだ?とか、兄上ばかり見ていて誰も自分なんか見ていないとか、凡人の俺が居なくなったって誰も困らないし、気が付きゃしないとか、そんなしょぼけた事を延々考え続けているような奴ですよねえ。そのしょぼけ具合とヒロインの慈愛の心が妙な感じでマッチングして幸せ青春まっしぐらにそのうちなるんですよ」
何を言っているか半分くらいしか分からないが、こいつ、メチャクチャ失礼な事を言っていないか?
「王配も、13歳の息子に5歳の子供にするように頭なでなでしているし。自分の幼少期もそれで喜んでいたし、とりあえず頭を撫でておきゃいいやと考えるような、ほとんど王妃しか見えていないヤンデレ気質ですもんね。でも、いいじゃないですか?私なんて頭撫でてくれる人居ないですし。暴力と泥水しか貰えないような三年間を過ごした人間としては?飯も食えて、寝るとこあって、暴力もない、王宮は魑魅魍魎の住む場所とかいうのはこれまたテンプレかもしんないですけど、マジで天国としか思えないですよ」
あ・・だめだ、理解の範疇を越えてきたぞ。
「ちょっと君」
扉の前に控えている侍女を呼びつけて、
「兄上を呼んできてくれない?」
凡人のアルフォンソは結局兄であるジョゼリアンに丸投げする事に決めたのだった。
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