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【改稿版】 悪役令嬢のそのあとは  作者: もちづき裕
第一章  悪役令嬢編
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第二十三話  大きな喪失

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

ルシタニア王国はイムラス半島の西端に位置し、北部はピエルト山脈が連なる起伏が激しい山岳地帯が広がり、北部から南部の間にはゆるかな台地性の平原が広がる。海岸線には砂丘や潟湖が多く、西洋岸には海岸平原がひらけていた。


 主要農産物は大麦、ジャガイモ、とうもろこし、米で、最近では乾燥トマトの瓶詰めが諸外国に人気の商品となっている。


 イワシの瓶詰め、オリーブの瓶詰め、ピクルスの瓶詰めなどの商品開発も進めていて、

「兵士の兵糧が豊かになるという事は士気の向上にも一役買う事にもなるよな!」

と、嬉しそうにジョゼリアン王子は言っていた。


 幼いヴィトリアの話をいつも真面目な顔をしながら聞いていて、時には怒りながら、時には笑いながら、彼女が指し示す未来に向けて、真っ直ぐに歩いて行こうとしていた。


「グアアああ・・離せ・・・離せ・・離してよお・・・」


 手足の爪の間、全てに長い針を差し込み、ぐりぐりとかき回した後には、生爪を全て剥がしていく。

 丁寧に生皮を剥ぎ、手足の指の先から一本ずつ折っていく。


「もう話したよお・・知っている事は全て話したよお・・・」

「お前がメロヴィングのスパイだったのは理解した。知りたいのはあの特殊な毒をどうやって入手したかという事だ」


 顔の表皮一枚を削り取るようにしてナイフを入れると、

「アルジェイーナだよ!」

女は気が狂ったように泣きながら言い出した。


「アルジェイーナのアホガド山の山頂付近にネハリタっていう花がある、その花芯と根は生薬にも使われるけど、同時に使うと血液が固まりだすんだよ。根は紅茶に、花はクッキーの中に混ぜられていた。同時に食べなければ毒にはならないが、王子は硬めのクッキーを紅茶に浸して食べるのが好きだという事は知っていたから、きっと上手い具合に作用するだろうって言われていたんだよ」


「紅茶・・紅茶か・・」


 最近、王子が気に入りの紅茶があった。

 紅茶単体で飲めば全く問題ないが、それにネハリタの花が加わると猛毒となる。

 ジョゼリアン王子の側近であったリカルドが立ち上がると、女は床に転げ落ちた。

「紅茶か・・紅茶だよ・・・」

 女の処分は部下に任せて地下室の扉を開けると、そこにはアルフォンソ王子が立っている。


「リカルド、兄上の葬儀がもう始まるぞ」

「殿下、そちらの手配は別の者に任せておりますので」

「誰が犯人か分かったのか?」

「殿下、紅茶ですよ」

「紅茶?」


「紅茶の中にネハリタの根が混ぜられているのです。紅茶単体ならば毒にはなりませんが、同時にネハリタの花芯を取り入れると猛毒となるようで」

「どういう事だ?」


「著しく血液の凝固を進める事になるのだそうです。血の塊があらゆる箇所に飛んでしまうため、うまくいけば廃人に、悪く行けば臓器の不全症状を起こして死にいたる」

「そうじゃない、紅茶ってどういう事なんだよ!」

「殿下、最短ルートですよ」


 リカルドがアルフォンソの顔を見つめると、アルフォンソの顔は青から白に変色した。


 ヴィトリアが言うには、この世界は、まるで予言書のような形となって、遠い世界で物語として紡がれているらしい。その物語の中ではリカルドやアルフォンソ達が登場人物として現れ、女性と恋愛しながら様々な問題に取り組んでいくという。


 リカルドやアルフォンソは主人公の恋愛対象者となるけれど、ジョゼリアンはその枠には当て嵌らならい。枠に嵌らないからこそ、その命が軽く扱われるというのだ。


「リカルド!」

 アルフォンソが、リカルドの腕を掴んで引き寄せる。


「何をしに行くつもりだ?」

「裏切り者は殺さなくてはなりません」

「兄上だったらなんと言う?兄上なら自分の死を最大限効果的に使えと言うに違いない、と、そう思うだろ?」


「ただ殺すだけでは効果がない?」

「メロヴィングを揺さぶるだけ揺さぶろう。俺に策がある、もしもの時を想定して兄上とも散々話し合った内容だ」


 アルフォンソの話す内容を聞いていくにうちに、熱を持っていたリカルドの頭が急速に冷めていく。アルフォンソが話す内容はそれだけ常識はずれの内容だったからだ。


「俺は今まで、ルートだの、恋愛だの、攻略対象者だの、そんな内容の話をされるのが大嫌いだったんだ」

「まあ・・それは僕もそうです・・・」


「決められた複数の内容からしか選べない?俺はその考え自体を嫌悪する。俺は、どれだけ誹りを受けようが、周りの奴らを愕然とさせてやりたいし、世界中から拒絶され、轟々と非難されようが、甘んじて受ける止めるだけの覚悟を持っている」


「ルシタニアの王族としての格を落とすことになりますよ?」

「甘んじて受けると言っている」

二人はお互いを睨み合うようにして見つめ合った。


彼らにとって、ジョゼリアン王子は光だった。

 彼さえいれば、例えメロディアンの大軍が押し寄せて来る事になったとしても、押し返せる、侵略を阻むことが出来ると確信していた。ジョゼリアンさえ生きていれば、降伏する事もなく、ルシタニアを生き残らせる事が出来ると思っていたのだ。



ここまでお読み頂きありがとうございます!

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