第四話 レイチェルとケイショ
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私はレイチェル・ワトソン、子爵家のメイドとして働いていた私が、休暇中に実家に帰ろうとしたら、よく分からない人たちに拉致されて、奴隷商人っていう人たちに連れ去られてしまったの!
うちの国なんかは奴隷制は撤廃されているけれど、まだまだ奴隷は利用できますのよ!なんていう国も世の中にはあるのですって!
この私が奴隷!信じられなぁい!嘘でしょう!誰か嘘だと言ってー〜!
狭くて薄暗い船室に押し込められた私たちは泣いて、泣いて、本当に酷い事をされそうになったら舌を噛み切って死んでやる!とか言い出す子もいた位なの。
はー〜、この先どうなっちゃうのぉ?
お先真っ暗の状態の中、私たちを助けに現れたのが、漆黒の髪の私のダーリン!
助け出された私は、なんとなんと!ペリグリンお兄様と異国の地で再会する事になってしまったの!どういう偶然なのって思ったわ!
その後はペリグリンお兄様と一緒に行動をとる事になったのだけど、ヨーロニア大陸はメロヴィングの皇帝の所為で、至る所で戦争、戦争、戦争状態なのよね!
危ないからって、私はオビドスという街の修道院でみんなの帰りを待つ事になったんだけど、そうこうするうちに、隣街であるカルダスに皇帝の軍が攻め込んで来たっていうのよ。ブリタンニアは島国だから、敵の軍が攻め込んで来た事なんてないの、せいぜいが海賊程度のものなのよ!それが皇帝の軍?嘘でしょう!大陸に移動するとこんな事になっちゃうのね!
カルダスから逃げ出した大勢の人たちがオビドスへと移動してきたし、修道院でご厄介になっている私は、みんなを迎え入れるために調理係に任命される事になったの。
私はベラさんという人と一緒に芋の皮剥きをひたすらしていたんだけど、ベラさんも、隣町のカルダスにご主人様を置いて来たみたいで、すっごくすっごく心配しているの。
ちびっ子将校が私のダーリンと弟のケイショをカルダスに連れて行ってしまったし、ペリグリンお兄様はカルダスの領主館に行ったきり帰って来ないし、5千近くの兵士が北から移動してカルダス領へと入ったというし、もー!どうなっちゃうのー?
数で見ると圧倒的に不利だったのに、戦いはなんと一晩で決着がついちゃったの!何でも、ボンパル侯って奴が皇帝の軍を引き入れたらしいんだけど、自国への裏切り行為に反旗を翻した人たちが結構出たものだから、あっさりと戦いは終わってしまったのですって!
ブリタンニアに居る時には、戦争なんて何処かの遠い世界の話って感じだったのに、今は隣街の話になるのよ!怖い!怖すぎるわ!それに、いくら戦いには勝ったと言っても、ダーリンやその弟のケイショや、ペリグリンお兄様、ちびっ子将校は大丈夫なのかしら?
一日千秋の思いで帰って来るのを私は待っていたの、私の事なんてうっかり忘れてしまうんじゃないかしらって考えない日はなかったわ!
「あなたの事を忘れるわけがないじゃない!」
と、修道女長のアマリア様は言ってくれたけど、心配で心配で仕方がなかったのよん。
私が心配で心配で仕方がなかった同時期に、ベラさんも同じような状態だったのか食欲がなくなって、顔色も悪くなって、夜も眠れないようになってしまったの。
そうしてちびっ子将校に従うようにしてダーリンとケイショ、ペリグリンお兄様がその他大勢を引き連れてオビドスへと帰って来た時には、ベラさん、ちびっ子の前で跪いて泣き出して、そしたら、知らない女までベラさんに取り縋って泣いているし、ちょっとごめんなさい!邪魔でダーリンに飛び付けないんですけどぉ!
「ねえ!ダーリン!一体何があったのかしらん?」
泣いている女の人たちを避けて歩いた私は、馬から降りたばかりのダーリンの腕に取り縋りながら尋ねると、
「何故、お前は俺の腕にぶら下がる?」
ダーリンは呆れ果てた様子で私を見下ろした。
とりあえずダーリンも、ダーリンの弟のケイショも目立った怪我はないみたい。
良かった、良かった。
◇◇◇
僕のお兄ちゃんは格好いいし、頭がいい!
ピオーリョお兄ちゃんに抱きついているレイチェルさんは、お兄ちゃんが大好きみたい。
だって僕のお兄ちゃんだもんね!その気持ちはよく分かるよ!
なんか前の方で女の人たちが泣いているんだけど、女の子って涙がすぐにこぼれ落ちるよね。
戦いがあって大勢の人が死んだんだ。
みんな敵だから問題ないっていうんだけど、その人たちを埋めるためにたくさんの穴を掘ったよ!
そして全員を土の中に埋めた後、王都のリジェっていう所へ移動する事になったんだけど、リジェに行く前に、レイチェルさんがいるオビドスっていう街に寄ったの。
レイチェルさんは興奮した様子で、
「それでどうだったのかしら?ペリグリンお兄様は、自分の恋心に気がついた感じなのかしら?やっぱりまだ、ちびっ子の事を男の子だと勘違いしているのかしら?禁断の恋に進む二人はどうなったの!いやー〜ん!その後の展開が気になるー〜!」
って言うんだけど、だったら本人に聞けばいいのにね!
あ!本人にきこうにも、大事なお話を教会でしているからきけなくて、だからお兄ちゃんにきいているのかな?僕らのご主人様の事をレイチェルさんはちびっ子って言うんだけど、その言葉を聞く度に、僕のお兄ちゃん、頭を抱えるんだ。
僕らの前のご主人様は『マルコさん』だったんだけど、今は『ヴィオさん』に変わっているんだ。新しいご主人様は僕らにきちんとご飯を与えてくれる、とっても良い人なんだ!お兄ちゃんはご主人様を守らなくちゃいけないって言うんだけど、マルコさんよりも良いご主人様だもの、マルコさん以上にきっちり守らなくちゃいけないよね!
「ケイショ!サンドイッチを作って来たからあなたも食べてね!ダーリンもお疲れでしょう!」
「誰がダーリンだ!何がお疲れでしょうだ!お前が俺を疲れさせて・・」
「こっそり厨房で用意したスープもあるのん!じゃがいもスープよ!召し上がれ!はい!ケイショも!こぼさないようにしてね!」
「おいおい、他にやらなくちゃいけない事もあるっていうのに」
教会の外には丸太で作った椅子とかテーブルがあるんだけど、メイドさん?として働いていたからかな?こういうのを用意するの、レイチェルさんは早いよね?
「ダーリン!食べないならお手伝いしてあげるわん!はい!アーン!」
「やめろ!やめろ!やめろ!」
レイチェルさんが面白いところは、お兄ちゃんにアーンするけど、僕にもアーンをしてくれる所だよね。
甲斐甲斐しくお世話してくれるレイチェルさん、お兄ちゃんは押しが強い人に弱いから、そのまま突っ走っても良いと僕は思うよ!
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