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【改稿版】 悪役令嬢のそのあとは  作者: もちづき裕
第四章  最後の決戦編
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第三話  ピオーリョの独白

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 俺はピオーリョ、ノミみたいにぴょんぴょん跳ね飛んで歩いていたからか、それともガキのときにノミに集られている所を見られたから、ピオーリョ(ノミ)っていうあだ名がついたのか、詳細については今でもわかんねえけど。


 デカブツの弟はケイショ、顎が突き出て見えるからケイショ(顎)って言うあだ名がついている。

 下町の奴らでつけるようなあだ名は大概がこんなもんだ。俺らの仲間で、ほっぺたにゴキブリの形に良く似た痣がついていた奴なんかはバラッタ(ゴキブリ)って呼ばれていたしな、大概がそんなもんさ。


 大体は見かけなんかであだ名っていうのが付けられると思うんだが、新しい俺たち兄弟のご主人様のあだ名が『悪役令嬢』だっていうんだよな。


 髪の毛は短いし、男そのものにしか見えねえ格好をしているのに『悪役令嬢』だってよ。『悪役令嬢』よりかは『クソガキ』とか『悪魔の申し子』と言われる方がしっくりくるように思うんだが、メロヴィングの奴らはご主人様の事を悪役令嬢って言うんだよ。


 隣国メロヴィングの奴らにはあれが令嬢に見えるって事か?令嬢っても悪役みたいだけど。わからねえ、全くもってわからねえ。他国の男の感性が全く俺にはわからねえ。

 何はともあれ、奴らは俺たちのご主人様を『悪役令嬢』とあだ名をつけたわけだ、とにかくぶち殺したくて仕方がねえらしい。


 俺の頭の中で、ご主人様の傷だらけのちっこい手と、しわしわの老婆の手が、シンクロしていっちまうんだよな。


娼婦が産み落としたまんま放置したのが俺たち兄弟で、しばらくの間は、個人で客を取る母親の小さな家で、まるで息を潜めるようにして生きていたわけだ。母親がどこかの男とトンズラ決め込んだのを機に、俺たち兄弟は大家におっぽり出される事になったわけで、ケイショは確か3歳とか4歳だったか、とにかく奴の手を引いて古い船が捨ててある、村から離れた浜辺の方へと移動して行ったわけだ。


ひっくり返ったままの船には穴が空いていたけど、暑さ寒さは凌ぐ事が出来る。穴という穴に海藻を突っ込んだり、海に流されてきたボロ切れを突っ込んだりしてやり過ごしていたんだよな。

そうしてしばらくすると、一人のバアさんがやってきた。


「こちらに出ていらっしゃい」 


 修道女の服に身を包んだババアは船の中に隠れる俺とケイショに声をかけてきた。布切れに包んできたパンとか、時々は焼きしめた菓子なんかを持って俺たちのところへやってきて、

「あなたたちも連れて行けたら良いのだけれど・・・」

と、言いながらケイショを自分の膝の上に乗せて、憂いを含んだ眼差しで俺を見ながら独り言を言うんだよ。


 バアさんは孤児院もある隣町の教会で働いている修道女で、俺のとこの村にも時々手伝いにやって来る。誰も気にしない、視界に入れもしない俺たちを、バアさんは唯一気にかけてくれる人だった。


 バアさんが靴下を持って来てくれなけりゃ、ケイショが熱を出した時にクソまずい薬草を煎じたもんを持って来てくれなけりゃ、孤児院で使い古したボロボロの毛布を持って来てくれなけりゃ、俺たちは冬を越す事はできなかっただろう。


派遣されて来た司祭はクソみたいな奴で、そこらじゅうの人から人気があるバアさんが気に食わないもんだから、奴はバアさんを殴り殺した。殴り殺した上で、不慮の事故で亡くなったと宣言しやがった。


「皆から愛される人ほど早く天に召される事になるのでしょう」


 奴は平気な顔で宣いやがったが、俺はその司祭をこっそり大きな石で頭をかち割って殺す事にした。俺が司祭を殺したんじゃねえかという噂が広まって、奴隷商のマルコがやってきた。それからマルコが俺たち兄弟のご主人様になったわけだ。


 この世の中には、誰の視界にも入らないって奴らが存在するんだよな。


 助けたって何の得にもならねえ、助けた所で自分の負担にしかならねえ。兎角そんな奴は、誰の視界にも入らねえし、情報として認識もされねえ。生きていようが死んでいようが関係ねえって事になるんだろうが、そんな奴らに対して目を止めて、そっと手を差し伸べるのが俺たちのババアだった。


 クソみてえに乱暴だし、無謀だし、時にはお前どうしたんだって思うほど狡猾だったりする今のご主人様もそう。

 視界にも映らねえ、見えねえ奴らに手を差し伸べていくんだよ。

 うちのご主人様はメロヴィング人からしたら悪役かもしれねえな。でもよ、俺たちルシタニア人には希望みてえな人に見えんだよ。


 王家が仲が良いお仲間を引き連れて新大陸へと逃げ出したっていう話を聞いた時に、本当にクソだなと思ったわけだ。平民身分である俺たちが見殺しにされたのは間違いない、メロヴィング軍が国を侵略してきたら、黙って殺されろと言われたような気がしたわけだ。


 だけど蓋を開けてみりゃあ、王家が残していったルシタニア陸軍とブリタンニア陸軍が協力してあっという間にメロヴィング軍を追い出しちまったわけだ。


 戦争になっても、コメルシオ商会が用意した避難所に避難すれば、住民の安全が守られるっていうんだから驚いた。うちの街の方でも、昨年は、北からわざわざ修道女が沢山やって来て、戦地からの疎開者の保護なんかをやっていた。


 逃げ出した奴らを保護したとして、食糧なんかすぐに尽きるし、面倒なんか見切れねえってことですぐさま追い出されることになるだろうと思ったんだけど、食料が無くなるってことがまず起きねえ。


 裏でコメルシオ商会が動いているから、物資の輸送が滞るってことがねえんだとさ。それで、そのコメルシオ商会を誰が取り仕切っているのかと言ったら、どこだかの公爵夫人と、うちのご主人様だっていうんだよ。マジで信じられねえぜ。


 コメルシオは領地なんか関係なく、困った奴らに手を伸ばしていく。教会がやってるっていう形にしているが、誰が金を出しているのかなんてことは言わないまでも分かっていることだ。だからこそ、マローネ子爵だとかカステリ男爵だとか言う奴らも、ボンパル侯とかいうクソジジイを裏切ってご主人様へと寝返ったんだろう。

 みんなに慕われて、愛されてんだよ。

 だけど、そういう奴に限って容易く死んじまうんだよな。


「皆から愛される人ほど早く天に召される事になるのでしょう」


司祭の言う通りにあっさり死なれたら面白くもねえ。こういう奴はほとんどいねえんだから、俺たち兄弟が守らなくちゃならねえって訳だよな。



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