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第三十一話  絶対絶命のピンチ再び

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

敵の騎兵部隊は城門前に横陣、メロヴィング騎兵隊の約半数が馬を降りているが、その数は二千、その後方にボンパル公率いる騎兵隊、その後方に歩兵部隊と騎馬連隊が扇形となって、こちらの逃亡を阻止するように広がっている。


 小高い丘の上にある領主館の背後は原生林となり、館の制圧後に火を放てば、裏門から逃げ出した人間も丸ごと焼き殺す事が出来るだろう。


 敵の数は五千、目の前にすると圧巻の一言に尽きる。


館に居る人間は785人、兵士身分は368人、昼間は狙撃と火炎瓶で敵を退ける事が出来たが、視界が悪くなる夜はこちら側の不利になる。締め切られた門の前に、おそらく上から総指揮を任された男と、ベアトリスとヴィオ。


 ベアトリスはヴィオを庇うために出て来たのだろうが、話の落とし所が見当たらない。


「私は皇帝の弟君にあらせられるジャメル殿下との婚姻が約束さているのですよ!コーランクールから聞いてはいないのかしら!」


 ベアトリスが声も高々に宣言すると、メロヴィング兵に騒めきが起こる。


「私はジャメル様の妻になるのは運命で決まったこと!」

 そういうエンドもあるもんね。

「ですが貴女はにせもの」

「何処までも!にせもの扱いするか!不敬であるぞ!」


 ベアトリスは激昂して見せるけれど、即席で作ったキャラなのは丸わかりだし、ギャスパーって男はイライラしている。


「あなたのご意見は十分に理解いたしました!ですが私は、この不届き者をいつまでも生かしておくわけにはいかないのです!」


「悪役令嬢だから?」

「そう、悪役令嬢だからです」

「何なのです、その悪役令嬢って!」


 馬鹿馬鹿しいとばかりにベアトリスが高笑いをすると、怒りに任せて男が拳を振り上げた。


「ベアトリス!伏せて!」


 ヴィオはギャスパーの拳を掻い潜るようにして侵入し、下から顎を拳で突き上げる。そうして奴の胸ぐらを掴み、腰の上に乗せて一回転するようにして地面へと叩きつける。


 そのままその場にしゃがみ込んだベアトリスへ、覆い被さるようにして飛びつくと、轟音と共に土煙が上がり、騎馬隊の馬が爆裂した火薬で弾けるようにして首と胴体を分断する。


 そもそも、攻城戦と同じようなものだというのに、住民を威圧するためだけの理由で前列に騎馬隊を持ってきたのは愚策と言い切ることが出来るだろう。数が圧倒的に多いことを理由に舐めてかかったツケがここにあらわれた。


 カルダスに配置した野砲は機動性を重視しているために砲門が小さく、衝撃や被害規模はそれほどでもないのだが、突然上がった大砲の轟音は敵を驚かせるのには十分だった。野砲の砲撃を追いかけるようにして、カルダス領主軍の騎馬隊が突如、森の中から現れたからだ。


 森の中から現れた騎馬隊の前列が馬を走らせながらライフル銃を発射させる。その後ろから出てきた第二軍が、砲弾と射撃で崩れた敵軍の上を蹂躙していった。


「ご主人様!こっちだ!」

「ご主人様、持ち上げるよ〜」


 いつの間にかピオーリョ兄弟が近くに来ていたようで、ケイショが二人を両手で抱えあげると、ピオーリョの先導で城壁の鉄扉の隙間に向かって走り出し、あっという間に門の内側へと滑り込む。


「ケイショ!そのまま城壁の上まであがってくれ!」

「はあ〜い!」


 門扉が閉まる音を聞きながらケイショはヴィオとベアトリスを担いだままの状態で、城壁の狭い階段を駆け上がる。城壁の上には真っ赤に燃え上がる篝火が焚かれており、ルシタニア王国軍の騎兵部隊が激突し、敵を薙ぎ倒しながら走り抜ける姿が視界に入った。


 味方の数が予想よりも多い。


 我が軍の騎兵部隊は隊列を乱す事なく敵を薙ぎ倒していくと、後方に控えていたボンパル侯の歩兵部隊が、杖に蛇が絡みつく、コメルシオ商会の旗印を掲げながら鬨の声を上げた。

ボンパル侯率いる騎馬隊は後方の歩兵部隊からの攻撃に即座に反応する事も出来ず、崩れに崩れる。


 ルシタニアの王国騎兵部隊の動きは洗練されており、騎兵部隊の動きを援護するように野砲が火を吹いて応戦する。


 敵を排除するには何処を攻撃すれば良いのか、即座に理解できるのがブリタンニアの旅団准将であるペリグリンの凄いところで、射入角度といい、騎兵部隊を配慮した着弾の正確さといい、見ているだけでヴィオの肌に鳥肌が立ってくる。


「ヴィオ!ベアトリス!無事でよかったよ!」


 二人揃ってアパレッシーダに抱きしめられたけれど、


「お嬢様!私!お嬢様の事!ブスって思ってないですから!お嬢様を助けるために!ただただ必死だったんです!」


ベアトリスが言い訳めいたことを喚いていたけれど、そんな事は実にどうでも良い。


 層の厚みから見ても、王国軍の騎兵部隊は義兄であるルイスが指揮するものに間違いない。ブリタンニアと共に戦った経験から、ルシタニアの騎兵部隊は馬上でのライフル攻撃を得意とするようになったのだ。


 馬上での攻撃を可能としたのも、武器の性能が見違えるように良くなったことが起因しているし、ヴィオが新型の武器を大量購入したことにより、祖父であるウィンドウッド伯爵がウハウハ状態になっているのもまた、間違いのない事実。


 敵が総崩れとなったのをいち早く察知した野砲部隊があっと言う間に引き上げていく。混戦となれば大砲は無用の長物、引き際が早いのもペリグリンの特徴でもあるのだった。


「マジですげえよ!ペリグリンさんは神だ!神砲兵連隊総括指揮者だ!」


ヴィオは昨年の戦いから、砲撃部隊を指揮するペリグリンに心酔しているのだった。輜重隊と砲撃部隊は持っていく荷物が多いことから、共に行動をすることが多いということもあったのだけれど、行動を共にすることが多いからこそ、ブリタンニアの砲撃部隊の活躍をその目にする機会も多かった。


「完全に負け戦だと思いきやの大逆転劇!さすが!さすがです!ありがとう!」


ヴィオがあまりにもはしゃいだ声をあげていたので、周りが一気に呆れ果てたのは言うまでもない。




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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりに読み応えのある面白い小説に出会えました! 昨日見つけて、時間を見つけては読み進めました。 続きも楽しみにしております!
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