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第三十話  私こそが公爵令嬢

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「嘘でしょう!まさか、双子の命を助けるためにとかそんな理由で、あのお嬢様、城門から出ていくとか、しないわよね?」


 一人取り残されたベアトリスは、猫のような好奇心に満ちた琥珀色の瞳を思い出す、嫌な予感しかしない。


「嘘よ、嘘、まさか裏切り者のうえに赤の他人の子供のために、自分の命を危険に晒すようなことなんて、普通しないわよ、絶対にしないって」


 ベアトリスの腹違いの姉は、周りが言うような悪役令嬢なんかではなかったのだ。過去に虐待を受け、心に大きな傷が残り、夜もなかなか眠ることが出来ない、誰からも愛される人だった。


 悪気もなく破滅に追いやろうとしたベアトリスに対して救済の手を伸ばしてくれたのは間違いなくヴィトリアであり、ヴィトリアのお蔭で、ベアトリスはこの領主館で皆から仲間として認められたのだ。


 散々悩んだ末に、ベアトリスは梯子を登ると、鉄の閂に手をかけて、そのまま蓋を押し上げて穴の外へと飛び出した。


 領主館への秘密の入り口にはまだ、敵兵の監視は置かれていないようだった。草むらの中から覗き見ると、城門の前にはメロヴィングの敵兵が勢揃いとなっている。


 ここまでベアトリスを誘導した双子の少女は敵の手に囚われた様子で、気が狂ったように泣いているし、すでに城壁の上に篝火を焚いているカルダスの領民たちは、何があったのだと慌てたようにして城壁の上に集まり始めていた。


 何やら敵の将校が双子を脅しつけながら城壁に向かって大声をあげていると、案の定、、ヴィオが鉄扉の隙間から出てくる姿がベアトリスから見えた。


 太陽が沈んで辺りは夜の闇に沈みこもうとしている中、城壁の上の兵士も、城門前に集まった兵士たちも、黙って事の成り行きを見つめている。


 草むらの中に埋もれるようにして這いつくばりながら前へと進んでいたベアトリスは、敵の将校が両手をあげて前へと進み出るヴィオの肩を掴んで、ナイフを振り上げるのを見た瞬間、


「お〜っほっほっほっ!私の偽物を用意するのは良いけれど、なんでそんなチンケなブスが出て来るのかしらぁ!理解できないわ〜!」


と、大声を上げながら草むらの中から立ち上がったのだった。


 いきなり現れたベアトリスは、優雅な仕草で口元に自分の指先を当てて、男に掴まれて今まさに殺されようとしているヴィオの方へと足を進めながら、場違いなほど大きな声で言い出した。


「見てちょうだい!王家の髪はそんな栗だか土だか良くわからない褐色の髪なんかじゃないのよ!」


 ベアトリスは自分の美しい髪を指先に巻きつけながら笑みを浮かべる。


「金色の筋が幾つも入るハニーブロンドは王家特有!ベルリット島に昔から住むと言われる妖精の痕跡と言われるものなのよ!さあ!よく見てちょうだい!」


城壁の篝火がうつしだす金混じりのハニーブロンドの美しい髪は、誰からも良く見えた事だろう。


「なんでこんなブスが私になっちゃってるのぉ?ルシタニア側も私の身代わりを用意するならもっと美人を用意しなさいよぉ!頭に来るにも程があるわぁ!」


 偽物公爵令嬢であるベアトリスは、ナイフを片手に持つメロヴィングの将校の事など視界にも入らない様子でヴィオの顔を覗き込むと、虫けらでも見るような表情で顔を顰めてみせた。


高慢令嬢を演じるベアトリスは、妖精のような可憐な顔立ちも相まって、篝火に浮かび上がるその姿は高貴な令嬢にしか見えない。今、着ているものは、とても粗末なものではあったけれど、ヴィトリアとして領主館に滞在していたベアトリスには、今までにない貫禄のようなものまであった。


「短髪を用意するならもっと私に似た美人を用意なさい!ねえ!聞いてる〜?」


 ベアトリスは城壁の上の兵士に喚き散らした後、優雅な仕草でカーテシーをした。


「私こそ、ブリタニアの第六皇子であるジョアン・フォフ・ブリタンニアの娘、ヴィトリア・デル・フォルハスにございます。以降、お見知りおきを」


 ヴィオは心の奥底から感心した、ベアトリスがこんな胆力の持ち主だとは思いもしなかったからだ。


 力が緩んだ男の手から抜け出したヴィオは、依然、メロヴィングの兵士に囲まれたままの状態だった。ナイフを持ったメロヴィング人の将校は、不服そうに顔を歪めながら言い出した。


「お前こそが偽物だろ?」

「まあ!王族の血を引く私を偽物扱いするのですか!」


 すると城壁の上から、

「あの人こそヴィトリア公爵令嬢だ!」

「俺は知っているぞ!」

「ヴィオ!いくら人がいいからって、あんな美人の代わりに出て行くお前の行動は間違っているぞ〜!」

領民たちの声が降ってくる。


 いつの前には城門の上にはアパレッシーダまで登って来たようで、

「ヴィオ!あんたに出番はないんだよ!早く戻っておいで!」

と、大声をあげている。


「そうよ!こんなブスが公爵令嬢である私の代わりに出てくるのだから癪に触って仕方がないじゃない!皆様には私の気持ちが良く分かりますわよね!」


 城壁の上からドッと笑い声が上がり、ヴィオは顔をくちゃくちゃにして見せた。

お前ら、後で覚えていろよ!


 ヴィオはベアトリスとの面談後、念の為、ピオーリョをつけていた。

 ピオーリョが今、何処にいるのかわからないが、きっと近くには居るのだろう。


 やはり裏切り者はジョアンナ親子で、メロヴィングの兵士に羽交締めにされた双子は狂ったように泣いている。



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[気になる点] 96,97話とルイスお兄様の名前が全てルシオお兄様になってます。 [一言] いつも更新楽しみにしてます!
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