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41.妹の事情2

 ワルター様が捕まってしまいました。



 先日、もう一度お姉様のところに話をしに行くと言って出て行ったきり、ワルター様は戻ってきませんでした。


 私は数日の間、一人でワルター様の帰りを待っていました。

 ワルター様が採ってきてくれていたお芋などの野菜を塩で茹で、とても長く感じる夜を一人で過ごし、退屈過ぎて散らかったお部屋の片付けをしてみて……頭の中が爆発してしまいました。


 もう!! ワルター様は一体どうしたというのですか!!


 何日も私のことを放置するなんて、おかしいです!

 きっと姉に捕まってしまったに違いありません!


 どうしましょう。こうなったら、私も王都にあるエンダース邸に向かうべきでしょうか……。


 でも、私一人ではとても行けません。


 ああ、どうしましょう……!!



 そう思っていたら、ワルター様のお父様であるスタントン子爵がうちにやって来ました。


 子爵様は言いました。


「アイマーン男爵の次女の、イナ様ですね……! この度は愚息が誠に申し訳ないことを……!!」


 はて?


 子爵様はどうしてそんなに慌てた様子で私に頭を下げているのでしょうか。


 ワルター様が私を一人で置き去りにして何日も戻らないからでしょうか。


 確かにそれは怒っていますが、お父様がそこまで謝るだなんて、少し驚きです。


 お姉様なら、こういう時なんて言うでしょうか。


「お顔をお上げください。わかってくだされば良いのです」


 私はもう立派なレディなので、上品にそう答えました。

 けれどお父様の口から続けられた言葉には、少し耳を疑ってしまいました。


「……本当に、申し訳ない。貴女と婚約しておきながら、エンダース侯爵の子息に対し、殺人未遂を犯して捕まってしまうとは……っ」


「え?」


 それは一体どういうことでしょうか?


「ワルター様は、捕まってしまったのですか?」

「……はい。本当に愚かな息子で申し訳ない!」


 ああ、そんな。

 なんということでしょう。

 何かの間違いではないでしょうか。

 たとえば向こうが先に手を出してきたから、やむを得なく立ち向かったら嵌められてしまったとか。


 酷いです。私が一人ぼっちになってしまうではないですか……。


「うう……っひっく」

「ああ、どうか泣かないでください……」

「私はもう、こんな生活耐えられません……っ! お姉様……、お姉様に会いたいです……っ助けてください、お姉様ぁ〜!!」

「……」


 それから私は、スタントン子爵様の前でしばらく泣き続けました。


 子爵様は困ったような様子でしたが、私が落ち着くまでそこにいました。


 そして気持ち程度の慰謝料を用意してきたと言いましたが、私にはその程度のお金だけがあっても困ります。


 一生困らない程のお金がなければこの先、生きていけないということはわかります。


 それに、どっちみち私は一人では生きていけません。

 領地経営も無理です。


 助けてください。


 そうお願いすると、子爵様はまた困ったような顔をしました。


 そして、今後アイマーン領をどうするか相談に乗ってくれました。

 私一人では無理ですし、すぐに結婚してくれそうな方もいません。

 スタントン子爵家の長男はもう結婚しているそうです。ワルター様に弟はいませんでした。残念です。


 私がまた泣きそうな顔をすると、領地は国に返そうと提案してきました。


 もう、一人ではどうしたらいいのかわからないので、私はスタントン子爵様の言うとおりにすることにしました。


 それから手続きに必要な書類を用意してくれて、そのほとんどを手伝ってくれました。


 まぁ、私にはやり方がわからないので仕方ないですし、息子が罪を犯したせいというのもありますからね。


 その間、私はスタントン子爵家で少しの間お世話になりました。この家もそれほど裕福ではないようですが、ちゃんと使用人がいて、食事にお肉も出てきました。

 私は久しぶりにちゃんとした食事を摂りました。

 生き返った気分です。



 そして一通りの手続きが済み、住むところのなくなってしまった私に、スタントン子爵様は「君のお姉さんのところへ連れて行ってあげよう」と言ってくれました。


 そうですね。スタントン子爵家の養子に入れてもらおうかとも思いましたが、姉はエンダース侯爵家にいるのでした。

 スタントン子爵家よりもお金持ちです。

 それに、やっぱりこうなった原因はきっと姉にあります。私の身寄りは姉だけです。だからお姉様になんとかしてもらいましょう。


 そう思うと、少しだけ希望が見えてきました。

 大丈夫です。姉も昔は私にとても優しく、甘くしてくれていました。

 だからきっと、困っている私を見捨てたりはしないはずです。



 涙を溜めた瞳でお礼を述べると、スタントン子爵様はぽうっと頬を赤らめて私を見つめました。


 さすが、ワルター様のお父様。きっと私を気に入ってくれたのだと思います。ですが、さすがにこんなに年の離れたオジサンは嫌です。


 でも、使えるものは使いましょう。


 そういうわけで、私はスタントン子爵様の馬車に乗り、姉がいる王都のエンダース邸へ向かうことにしました。


1回妹回挟みました。

次回またクレス視点です。

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