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14.妹の事情1

 ルビナお姉様がこの家を出て行って一週間ちょっとが経ちました。

 あの日、お姉様にお礼をしに、とても素敵な騎士様がうちに来ました。

 ワルター様よりも背が高く、ハンサムで、お金持ちそうな方でした。それも王宮の騎士様だそうです。


 こんな田舎に住んでいる私には、素敵な方との縁談話がなかなか来ませんでした。私はまだ十六歳なのでこれからだとは思っていましたが、姉の婚約者だった優しいワルター様と結婚することになりました。

 私の方が姉よりも可愛いので、ワルター様が私と結婚したくなるのも仕方ないと思います。

 お父様が生きていた頃も、お姉様より私のことを可愛いと言って、欲しいものはなんでも買ってくれました。

 ルビナお姉様だって、お母様が使っていたドレスやアクセサリーを私にくれました。

 私の方が似合うので当然です。

 お姉様はあまりオシャレが好きではないのか、女性なのに汚い格好をして畑に行きます。

 私は虫が嫌いだし、畑に行くと汚れてしまうので絶対に行きたくありません。


 でもワルター様はそれをわかってくださるから、私を無理矢理畑に連れて行こうと意地悪するお姉様を叱ってくれていました。

 私は可愛いから何を言っても許されるのです。

 可愛く生まれた私の特権です。



 この騎士様の方がうちよりもお金持ちなのは明らかでした。

 どうして私の方が可愛いのに、この騎士様はお姉様を見てこんなに嬉しそうに笑っているのでしょうか。


 そうだわ、きっとまだ私に気づいていないのね。


 私を見れば、この騎士様もきっと私を見初めてくださるわ。そしたらワルター様との婚約は破棄して、こちらのお金持ちそうな騎士様のところへ嫁ぐことにしましょう。


 そう思い、可愛く見えるよう挨拶したのですが……何故か騎士様は怖い顔で私を睨みつけました。

 お姉様にはとても優しくしているので、変わった方もいるのだということを初めて知りました。


 お姉様は騎士様の豪華な馬車に乗って行ってしまいましたが、これでもう意地悪を言われることはありません。


 ……でもなんだか心にぽっかりと穴が空いたような気分です。

 昔はお姉様も私に意地悪を言うこともなく、お姉様が持っているものを私も欲しいと言えば譲ってくれる優しい姉でした。


 私は二つ年上の姉が持っているものが凄く魅力的に見えたので、純粋になんでも欲しがりました。


 お姉様に婚約者ができた時もそうでした。

 私の方が可愛いのに、どうしてお姉様にだけ婚約者ができるのですか? ずるいです。


 ワルター様は飛び抜けてハンサムというわけではなかったのですが、お姉様と結婚するのかと思うと無性に「欲しい」と思えてきてしまいました。


 だから可愛く甘えてみたら、あまりにも簡単に私のことを好きだと言ってくれました。姉よりも私の方が可愛いので当然でしょうが。



 やはり私はワルター様と結婚することになりそうですが、ワルター様は先程の騎士様と違って優しいです。きっとお姉様もあとで騎士様に睨まれたりするのでしょう。

 でしたら私の方が幸せですね。お姉様が出て行ってしまったのは本当は少し寂しいですが、これからは二人で好きなことしながら好きなものを食べて、楽しく生活していくことにします。


 そうだわ、今度新しいドレスを買ってもらいましょう!


 そう思ってうきうきしていたのに、この気持ちはすぐに消えてしまいました。

 ワルター様は急に仕事に出かけ始めて、私にまで料理や掃除をしろと言い始めたのです。


 外食したらいいじゃないですか、と言ってみたのですが、ワルター様は毎日外で食べるとお金がなくなってしまうと言いました。


 うちにはそんなに余裕がないのでしょうか?

 貴族の家なのに。


 でもきっと、私が料理も掃除もできないとわかったら、ワルター様も昔のように使用人を雇ってくれるはずだわ。そう思っていましたが、ワルター様はなかなか使用人を雇おうとはしません。

 それに、あんなに優しかったのに段々イライラするようになりました。


 ルビナお姉様に口うるさく言われなくなったのに、どうしてでしょう?


 でもきっと、可愛い私がいれば大丈夫なはずです。

 だってワルター様はいつも私のことを「可愛い」と言ってくれますし、私のことが大好きなのですから。


 ……でもおかしいです。そういえばルビナお姉様が家を出て行ってから、一度も私に「可愛い」と言ってくれなくなったような気がします。


 ワルター様はお仕事を始めたせいで疲れているようです。

 もしかして、意地悪なルビナお姉様はワルター様が困るようにお仕事に必要なものを持って行ってしまったのでしょうか?

 そういえば、キッチンにもろくな調味料がありませんでした。


 そのせいでたくさんお塩を入れれば美味しくなるのだと思いスープを作ったら、しょっぱくてとても食べられたものではありませんでした。

 ワルター様は酷く顔を歪めて震えていました。


 きっとお姉様が他の調味料は持っていったのだと思います。


 だから美味しく作れなかったんですね、納得です!


 ということは、もしかして、ペンダント以外にもお金を隠し持っていて、それも持って行ってしまったのかもしれません!

 それは許せないです。


 どうしてルビナお姉様は私に意地悪をするようになったのでしょうか。

 きっと私の可愛さに嫉妬しているのですね。


 あの騎士様がなぜ私よりあんな姉に優しく微笑みかけていたのかわかりませんが、もしかしたらうちから持ち出したお金で雇っていたのかもしれません。


 そう考えるとすべて納得です!


 だからお姉様は一人でも大丈夫だと、あんなに強気で家を出て行ったのですね!

 うちにお金がなくなって外食できないのは、そのせいですね!


 きっと、私たちが困って「帰ってきて」と言うのを待っているのだと思います!

 自分からは言い出せないのですね。本当に可愛げのない姉です!


 こうなったら、ワルター様にお願いしてお姉様が持っていったものを取り返してきてもらいましょう。


 お姉様がどうしても帰ってきたいと言うのなら、私は帰ってきてもいいと思っています。


〝イナ、今までごめんね。貴女の可愛さに嫉妬していたのよ。でも離れてみてわかった。とても寂しかったわ〟


 とか、そうおっしゃるのなら、許してあげます!

 そして、この散らかってしまった部屋を片付けてもらいましょう。


 そうと決まれば安心です。

 その間だけ少し、部屋が散らかっていますが、すぐに片付けてもらえますね。


 その間だけ、ほんの少し我慢することにしました。


続きに期待していただけましたらブックマークや★★★★★にて応援よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] すっげぇ!なんてお花畑な脳内!(笑)
[一言] この妹はダメですねぇ 耐えられません ルビナの幸せをただただ祈るだけです
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