懐かしく甘く優しい記憶
いつもお読みいただきありがとうございます
少し短いです
「おまたせ致しました。こんな感じで宜しいですか?」
「無理を言ってすみません。
片塚君、落ち着いたらで良いから、少し食べてみないか?」
ぐずっぐずっ、涙止まらない、それよりも鼻水!
止まらない困った。
30歳過ぎて涙止まらないって酷いなぁ。頑張って止めないと!
そう思えば思うほど止まらない。
ヤバい
そう思ったあたしの目の前に「それ」が鎮座していた。
懐かしい『苺の牛乳がけ』
「…ずびまぜん、いだだぎまず…」
※鼻声なので濁音です
小さい頃、泣いているあたしを慰めるために
「ほら、泣くな~この苺をお前を泣かした悪いモノと思ってぐちゃぐちゃに潰してしまえ!」
ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ
「あたしひとりぼっちじゃないもん、ひとりぼっちじゃないもん、いま、そばにいないだけだもん、もう少ししでおむかえにくるもん、ひとりじゃないもん…」
ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ
すっかりイチゴミルクになってしまった
「ほら、大好きな「涙を止める魔法の薬」の出来上がり!早くお食べ」
先ずは、潰れて牛乳を吸ってトロトロになった苺を食べる。
これだと、少し「そのまま」で食べるには未熟だったり熟れすぎたものが混ざっていても気にしないで食べることができた。
甘酸っぱい香りと味が口一杯に広がる。
美味しい
顔がほころぶ
「良し!涙止まったな、良かった。ゆっくり食べて、それから『最後のお楽しみ』だ」
こくり、頷く。
『最後のお楽しみ』
それは、苺の果汁と残った果肉が入った「濃い苺牛乳」の事。
飲み物としての「苺牛乳」の倍以上の「濃い液体」普段はこんなに「濃い」ものを飲み物としては出さない。
だから、この『薬』は、あたしの涙を止めるためだけに「苺の季節」だけ特別に作ってくれるものだ。
「もう、のんでいい?」
「良いよ、今年はこれで最後だけど、また来年作ってあげるから、泣くのは困るけどまた作ってあげるからな、安心して飲みな」
「またつくってくれる?」
「勿論。
そうだなぁ…もしずっと頑張って泣かなかったら、来年一番美味しい苺で「泣かなかったご褒美」としてもっと美味しいの作ってあげるよ」
「ほんとう!やくそくだよ!」
嬉しい!一気に飲んだ
こくこく
甘くて美味しい
これでまたがんばれる
「ごちそうさまでした」
「やっと笑ってくれた」
優しい声
むかしむかしの、懐かしく甘く優しい記憶
どうしてご存知なんですか?
石井課長…
ここ数話が書いていて切なくなり、「彼」を助けたく一回切ります。
悲しい話を書くと感情が引っ張られます
自分はまだまだです