家族 その3(彼の視点)
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「あぁ、ジュニー!やっぱり生きていたのね!母様は信じていましたよ。」
「よくぞ、よくぞ生きていた!」
この男女が俺の両親…
実感がない。俺の眼には、立派な貴族の夫婦にしか見えなかった。
「義兄上様ですか?」
「君は?」
「ジュニー、この子は貴方の義弟の『ポーラシアル』よ。私の姉夫婦の息子で、先日二人とも病で妖精の国へ旅立ったのよ。仲良くしてあげてね。」
「ポーラシアル様、はじめまして。」
「あぁ、ジュニー。義弟に『様』はいらないよ」
「ですが、自分は自分の立場をわかっております。『デ・グル・モラ』家の家督を継ぐのは『ポーラシアル』様。自分は12年も不在の上に貴族の事は全くわかりません。ですが、『ポーラシアル』様は、貴女様の血筋とお伺い致しました。自分より年少者であっても教育をご存知の方が、幸いかと」
「ジュニー。貴方の事を忘れた日は1日たりともなかったわ。ましては、この子を貴方の替わりにする気などありません!母を、母を信じて下さい」
目の前に居る美しい女性は泣き崩れた。
「お前も混乱しているのは理解しよう。『薔薇の門』の門下生として立派な教育を受けてきたのだな。
しかし、時間がかかっても良い。両親を信じてみてはくれないだろうか。少しづつで構わない。自分達の事、義弟の事を考えてみてはくれないか?」
ジュメルダーク・デ・グル・モラ
父と名乗った将軍が言った。
生家に戻る前、レイモンドと名乗る方から、俺が行方不明だった12年間のこの家にあった『悲劇』について話を聞いた。
俺が行方不明になり、母は心を病み昨年まで実家に静養していた。
そんな中、追い討ちをかけるように、姉夫婦も亡くなり相次いで不幸が襲った。そんな母が悲しみの中に居た時、『ポーラシアル』様の存在でようやく立ち直られたとの事。
父は、ずっと自分の生存を信じ、俺以外の「跡取り」を作らなかったとの事。
「恐れながら、発言を許されるなら、貴方様の『一兵』として成人まで自分を鍛えていだだきたい。その時まで、ポーラシアル様には『跡取り』として見て差し上げていただき、自分に家督を継ぐ資格がないと判断された時には、自分を廃嫡していだだきたい」
「ジュニー!」
「わかった。その時までお前を鍛えよう。しかしお前が嫡男として認めた際は、『跡取り』とする」
「ありがとうございます」
父様
母様
すみません。浅はかな考えを持った自分をお許し下さい。
ポーラシアル
ポール
俺の大事な義弟
どうか、俺を許してくれ
まだまだ、彼の悲しみは続きます。