妖精が来る前に
お読みいただいたすべての方、ありがとうございます
本日2回目のドナドナ…
支店から社長車に乗せられ本社からの【酒房おさむ】での死刑宣告
ぁぁ、あっという間だったなぁ8年の思い出が走馬灯のように甦ってきますよ
「片塚君、大丈夫か?」
お優しいですね石井課長
「はい、大丈夫です。ただ心の準備『クビ宣告』が出来ていなくて、すみません。」
「あぁ、そうだな。すまなかったこちらの都合で振り回してしまった。謝罪する」
「お気持ちだけでも…でももし宜しければ次のステップ『再就職斡旋』のお力をお貸しいただければ有難いのですが」
「そこまで考えてくれてるとは…任せてくれ、必ず力になる事を約束する」
はい、考えてますよ!家賃、光熱費、生命保険、諸々の支払い。あとは国民年金の口座振替の手続き行かないとなぁ、近場の年金事務所どこかなぁ、ネットで出来るのかなぁ…
「あぁ、ここだ」
【酒房おさむ】の暖簾をくぐった
「では、本日のオススメで
牡蠣は生と焼きで、蟹は茹でたのを食べやすく切り込み入れてくれ、鍋はそうだなぁ、河豚で頼む。アンコウもあるのか?ではあん肝を頼む。
片塚君、他何か食べたいものあれば遠慮なく言ってくれ」
あぁ、神様
「はい、大丈夫です」
「後、すまない全員揃ってから残りを注文するから、先付けと日本酒と軽く食べられるものを持って来てくれ、あとは呼ぶまで…」
「畏まりました」
10畳間くらいある個室で二人きり
あぁ、早くクビ宣告して、早くご飯食べさせて下さい。そして再就職斡旋よろしくお願いいたします!最後だもん我儘聞いていただきますよ!食べますよ!飲みますよ!クダマキマスヨ!
そして
目の前には
三つ葉のお浸し、サーモンマリネ、蓮根のきんぴら3点盛りの先付け
山うに豆腐の山わさびのせ
ホタテと牡蠣の貝味噌焼き
鯖寿司
大吟醸
あぁ、もう、石井課長食のチョイス最高です!
「今日ご苦労だったな。昼飯もまだだろう。無礼講だから食べながらで良い、話を聞いてくれ。」
「では、失礼して遠慮なく」
うはぁ~シャッキシャキの三つ葉の歯ごたえ、サーモンマリネさっぱりして良い感じ、蓮根ぴり辛ですね!ビールにも合います(笑)
山うに豆腐初めてです!山わさびが最高のアクセント!
何これ?ホタテと焼き味噌牡蠣と焼き味噌!合わない訳ないでしょ、誰か~大吟醸一升持って来て~
鯖!サバ~だ~サバサバだ♪
シャリの間のガリとのバランス。飲み始めだから小ぶりのが3個。丁度良い
大将最高です!
「…クスッ」
ヤバい!石井課長の存在忘れてた
「あぁ、『食べること』『飲むこと』になると回りが見えなくなるのは変わらないなぁ
大丈夫誰も取らないよ
安心して食べろ」
あれ?石井課長と食事したことあっただろうか?
『…大丈夫だ、そんなに慌てると妖精が寄って来るよ、慌てるくらい美味しい物かって。』
『だから、妖精来る前に食べるの!』
『そうだなぁ、妖精が来る前に食べれば良いんだなぁ~でも、ほら、こぼしてる!気を付けて食べろ』
誰との思い出?
顔がわからない
優しく暖かい深い蒼い瞳
誰?
「…片塚君
ほら、こぼしてる!
大丈夫妖精ならまだ来ない。安心しろ」
へ?
妖精?
石井課長の口から
よ う せ い?
「…あ
すまない
何言ってるんだろう
気にしないで、さぁ食べてくれ
落ち着いたら、自分の話を聞いて欲しい」
いやいや、気にしないでって
気になるわ!
でも
とりあえず、目の前のお食事いただきますよ
妖精が来る前に
【酒房おさむ】は実在しているお店があります。多分大将が読むとわかります!私もバレます(笑)ドッキドキ