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私という人。

キラキラと氷の粒が陽の光を反射してまるで宝石のように帝都の広場へ舞い落ちる。

手を伸ばせばそれは私の熱で消えてしまって、でもそれがまた一層幻想的だった。

「じゃーな!!」

大きな声で誰かが頭上をかけていく。

空を見上げれば自分より少し年上の青年が箒の上に立ち、まるでいたずらっ子のような顔で王城に背を向けて飛んで行った。

城から出てきた大勢の人達が彼に対して何かを叫んでいたが覚えていない。

だが彼と太陽が重なり、彼のイヤリングがキラリ、と光った光景を私は一生忘れることは無いだろう。

「わぁ、綺麗!」

幼き私が正直に口にしたその言葉に彼はこちらを向いてフッと笑った。



──それが初めて、魔法使いをみた時だった。




「あら、随分と大きな船。」

大きな汽笛が空気を震わせる。

顔を上げて港を見れば帝都から来た大きな船が着港していた。

バサバサとたなびく白い洗濯物が日を反射して眩しい。

ヴィオラ、と自分の名を呼ぶ声が1階から聞こえ、急いで持っていた洗濯カゴを足元に置き階段を降りる。天気がいいとついベランダで一休みしてしまう。暖かいものが好きな、自分の癖だ。

母に呼ばれ、1階に着くとカウンターでは父が接客中だった。お客様に会釈をしながらその後ろをそろそろと通り、厨房にいる母の元へ急ぐ。

「休んでる時にごめんね、誕生日ケーキのラッピングしてくれる?今手が離せなくて。」

「うん。」

申し訳なさそうにする母に大丈夫だよ、と頷いてすぐに注文表を確認する。

ぱぱっとリボンを手に取り、普段のラッピングより華やかに結んだ。

造花とバースデーカードを挟み、パッと見ただけで特別なものだとわかる。

出来たよ、と声をかければ母はありがとう!と満面の笑みを零した。

「やっぱりヴィオラは昔から手先が器用ね。ヴィオラがラッピングしてくれるとみんな喜ぶんだから!」

焼きあがったスポンジを運びながら母は私に気遣いの言葉を投げる。

「ありがとう。私、買い出しに行ってくるね。もう牛乳ないんでしょう?」


ついでに明日の朝ごはんもお願いね!、と母親に見送られ軽い身支度を済ませて店の外へ出る。カラッと晴れた外は眩しくて、思わず細めたが日陰を頼りにして歩いた。



私と父母は血が繋がっていない。

私は父母の友人の子供で、実親は私が7歳の頃に事故で亡くなった。

それからと言うものの、私は今の父母に育ててもらった。

繁盛している菓子屋だとしても、実の娘と私を育てるのは大変だっただろう。

しかしもう私も18歳。

そろそろ一人暮らしをし、恩返しをしなければ、とこうやって買い出しに来たら求人を見るようにしている。



中々いいのが無いな、と街の掲示板を眺める。

出来れば自分の特技を活かしたい。

掃除、料理、裁縫は少し得意だ。

苦手なのは接客、人と会う事。

倉庫の整理とか、何か人に合わず出来れば数少ない自分の長所を行かせる場所はないかと掲示板に貼られた求人票を眺めていると、少し気になる募集があった。

『掃除、料理をしてくれる人、募集。

仕事内容:家主が出掛けている間に掃除と食事の用意を済ませる』


「これだ……!!」

「なにが??」


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