表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人カラス  作者: あいまりぃ
8/35

7.再会

あきら、晃だよね? こんなことってあるんだ……」


 僕は、普段かけている制御装置が外れたのか、海外映画の再会シーンであるようなオーバーリアクションが自然と出た。


「やっぱり大和だ。同じ学校で同じクラスって俺すげーうれしいよ」


僕の瞳に映った晃はあの頃と何も変わっていなかった。


彼との再会は椿と違うクラスで落ち込んでいた僕にとって、この上ない朗報だった。


そして、晃が僕の事を覚えていてくれたことが何より嬉しく、フレンドリーなアメリカ人のように肩と肩でハグをした。


「ちょっと! 私も仲間に入れてよ」


 彼女は、さっきまでまとわりついていた男たちを振り払って駆け寄ってきた。


「おー! 椿もいたのか。大きくなったな」


「お互いね。面接のときに晃っぽい人見かけたけど、やっぱり晃だったんだ」


「ってことは椿も部活推薦か? 俺もサッカーでここ入ったんだ」


喜んでいる彼女の姿はとても無邪気で、せっかく大人っぽく着こなした制服ごと、中学生に様変わりさせてしまっていた。


晃は遠くに行ってしまったと思い込んでいたが、ショッピングモールが一つしかないようなこの小さな町で、九年間も会わなかったことの方がよっぽど奇跡に感じた。


それも今日の再会を盛り上げるための神のいたずらなのかもしれない。


「やっぱり音楽が好きなんだな」


 晃は、椿が通学バックとは別に持っている楽器の入ったバックに気付いたようだった。 


「うん、あれからもずっと続けてる」


「「「フフッ」」」


『おんがくたい』という言葉を出すのを躊躇ったのか、『あれから』という言葉に置き換えていたことに、少しくすぐったい気持ちになった。


きっと三人とも同じことを考えて今笑っているのだろう。


三人が共通認識できることがあるということも、僕は嬉しかった。


「椿~! ホームルーム遅れるよ」


 彼女の友達らしき女子が呼んだ。長い黒髪で小柄なその子もまた、椿が持つ楽器が入ったバックと同じものを持っていた。


部活推薦組は入学式の前にオリエンテーションをしているみたいだから、きっとそこでできた友達だろう。


「今行くー」


 椿は振り返って友達らしき女子に返事をした。


「五組から七組は別館なんだって! ちょっと遠いからもう行かなきゃ」


 別館は渡り廊下でつながっている。


同じ学校とはいえ、下駄箱や食堂以外で普段すれ違うことはないだろう。


少し残念に思っていると、去り際の彼女の腕を晃が掴んだ。


「俺ら昼は屋上にいるから」


 彼女は大きく二度頷き、僕たちのもとを後にした。屋上で晃と椿とお昼を食べるなんて。


諦めかけた青春ができそうで、口元が緩んでしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ