6.運命のクラス発表
声がする方へ向かうと、中庭の掲示板の前には二百人近い人の群れができていた。
「あーもうすごい人だかり。見に行こう」
自転車を止め、張り切って掲示板に近寄る彼女は、当然何の不安もなさそうだ。
彼女は可愛くて明るい天真爛漫な性格だから、どのクラスに入っても人気者になるのだろう。
一方、置いてきぼりにされた陰気者の僕は。
……。
遠くから目を細め、視力に全神経を集中させながら恐る恐る掲示板を見た。
早くも一組に自分の名前を見つけると、そのまま“早川椿”の文字を探した。
同じクラスでも隣のクラスでもない。
彼女もきっと残念がっているはず……もなく、前の方で友達とワイワイしていた。
彼女がいないと僕にかかる雨雲は晴れないし、友達もできない。
こんな僕でも青春に憧れていたが、叶いそうもない。
それどころか絶望的な高校生活を覚悟し、無心で綺麗に晴れ渡る青空を背景に屋上を見た。
このとき、僕の体はきっと、校舎の階段を駆け上りたい気分だったのだろう。
そう、あの日から僕は何も変わっていない。
「ハァ」
この賑わいに似合わないため息をつき、目の行き場のない僕はもう一度彼女の方を見た。
見ず知らずの男子数人に声を掛けられているようだった。決して僕は嫉妬をしているわけではない。
ただ、僕の居場所を奪ってほしくなかっただけだ。
こんなとき
「探してたんだ、ホットドックを食べに行く約束してたよね」
とでも言って彼女を連れ去りたいのだが、ここは海外映画の世界ではないし、イケていない僕は、頼むから一組にいる男友達を紹介してくれ。
そう彼女に願った。
そのとき、トントンッ誰かが僕の肩を叩いた。誰だろう? 彼女は目線の先にいるし、僕に声を掛ける人物に検討もつかなかった。
「小笠原大和君ですよね。同じクラスの佐藤です。友達になってください」
早くも願いは通じたのか、男の声が僕に話しかけてきた。
聞き馴染みのない名前だったが、どこか懐かしい感じがした。
振り返ると、運動部に所属しているのか、春だというのに日に焼けた高身長のイケメンが片方の口角を上げ、ニヤついた顔で立っていた。
正体は一瞬で分かった。