4.連続殺人事件
早いな、あれからもう九年も経つのか。
今日僕は彼女と違うクラスだったとしても、友達作りができるのだろうか。
彼女と同じクラスになる八分の一の確率は、祭りの福引で一等を出すことより難しく思えた。
こんなときウィルスミスなら『ヘイ、トム!』なんて言って、初対面の人にもハイタッチしながら廊下を歩いて行くんだろうな。その人がダニエルだったとしても。
そんなことを考えながらリビングに降りると、白髪を七三に分け、眼鏡をかけた父さんが真剣な眼差しでテレビを観ていた。
「それでは最初のニュースです。昨日青森市の山中で五人組の男性が狩をしていたところ、一人の男性が倒れているのを仲間の一人が発見し通報しました。男性は首に刃物で刺されたような深い傷を負っていて、救急隊が駆け付けましたが、その場で死亡が確認されました」
このニュースを見る光景にデジャブを感じながら、口の中のちぎりパンを牛乳で流し込んだ。
しかし、次に原稿を読み上げるお兄さんの口から、デジャブではない事が証明された。
「また、一週間前に同市で起きた殺人事件によく似ていることから、警察は連続殺人の可能性を視野に入れ、犯人の特定を急いでいます」
最初の事件も、同じように山に入った猟師の一人が首に深い傷を負っていて助からなかった。
当初仲間内による怨恨殺人と考えられていたが、ぬかるんだ山中にも関わらず、辺りには被害者と第一発見者が駆け寄ったときの、一方通行の足跡しかなかった。
更に、刃物で刺されたような損傷にも関わらず、凶器が見つからない。
世間では空中からの攻撃という噂が立っていた。
近辺の山の麓には規制線が引かれ、警戒が強められている。
このニュースは連日流れていたが、犯人は未だ何の痕跡も残していない。有能な犯行だった。