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プロローグ『恋愛、友情、謎の連続殺人。青春の全てを手に入れた高校一年生の夏そして、突然訪れた青春の終わり。それと引き換えに彼を有名にしたある事件とは』
僕は物語の主人公に匹敵するような人間ではない。
どんな悪魔や独裁者でも、極まっていれば主人公になれる。
本来なら僕はウィルスミスが演じるような、口の立つ人気キャラになる予定だった。
銃を突きつけられても冗談を言って逃れられるくらいの余裕を持っていて、
ピンチのときにも笑いを届けるヒーローに。
しかし僕は不運にも、物心がつく前に設定を変えられてしまったらしい。
希薄な性格で、とてもヒーローと呼べる性分ではない。
何一つ秀でる才能がない僕は、普通人以下なのかもしれない。
海外映画に翻弄され、日々人気者研究をしてきたが、妄想だけで実践できたことなどない。
そんな僕が一躍有名になれたのは、ヒーローとしてでも、役者としてでもない。
ただ不運な被害者だったからだ。
僕を有名にしてくれたマスメディアには感謝するとしよう。
君たちは僕を物語の主人公にしてくれた。
もしかしたら、誰かの検索履歴にはウィルスミスの名と僕の名が並ぶかもしれない。
そんな僕の作品タイトルは『殺人カラス』と名付けよう。