目に見える終わりの世界5
アサヒが目を覚ますと、雲の隙間から差し込んで来た太陽の光が、窓の外から部屋の中を照らしていた。
雨が止んだようである。
――どうやら、ここで数日間足止めを食らう心配はしなくて大丈夫そうだ……。
寝袋から出たアサヒは、一息つき安堵の表情を浮かべると、すぐに隣で眠っていたミソラの姿が見当たらないことに気が付く。
きちんと丸められ、整頓されたミソラの寝袋。
自分が寝ている隙に誰かに襲われたという形跡はない。だとするならまた、勝手にどこかに行ってしまったらしい。
「またか……」
アサヒは小さくため息をつくと、傍に置いておいた猟銃を手に取ってミソラを探すために部屋を後にした。
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ミソラの姿を見つけたのは、ビルを出て数分後のことだ。
核の爆風か、それとも老朽化のため分からない倒壊したビル。その2階ほど積みあがった瓦礫に、歪曲しながら突き刺さる鉄骨の柱の上に、ミソラの姿はあった。
太い柱に腰を付いて座り、雲の隙間から見える空に向かって、ミソラは何気なく手をかざしている。
「おーい、ミソラ!そんなところで何をしているんだ?」
「あ、おにぃ。見てみて、虹だよ!」
自分の名前を呼ぶ声に気が付いた様子の彼女は、真っ青な空にかかる七色の虹を指さした。
――危ないからやめさせるべきだろうか。それとも、このままミソラの気が住むまで続けさせてやるべきだろうか……。
アサヒはそんなことを悩んでいると、ふとどこからともなく、強い風が吹いた。
風は、ミソラの被っていたフードを勢いよく脱がせると、ずっと隠れていた彼女の素顔が露わになる。
その時、アサヒは――あぁ……、と改めて思った。
ミソラの体の半分は、鋼鉄の機械で出来ている。
――そう、彼女は、『機械人形』(マシンドール)なのだと……。