目に見える終わりの世界3
雑居ビルの硝子の無い窓から見える空の天気は、数時間経った今でも相変わらずだ。
いや、むしろ外を覆う雨は、止むどころか時間が経つにつれ、激しさを増していく。
夕立か、それとも通り雨か、と考えていたアサヒの予想は見事に外れ、このまま嵐でも到来しそうな勢いに、次第に不安になってきた。
――このまま、ここでいつまでも足止めを食らうのは、さすがにまずいな……。
今までの旅の途中、打ち捨てられた廃屋や、もう使われていない建物なんかを間借りして、野宿することはよくあることだ。
だが問題は、人が集まる次のコミュニティに辿り着くまでの、水と食料だろう。
当初の予定では、目的のコミュニティには、もう付いているはずだった。
しかし、相次ぐ道の崩落や、落石による通路の封鎖によって、通常の何十倍もの遠回りを強いられているのが、自分達の現状である。
勿論、食料に関して言えば、アサヒは2、3日食べなくても、何も問題はない。だが、ミソラに関しては別だ。
何か口にしないと本気で駄々をこね出し、仕舞にはどうしようもないくらいぶつくさと喚き出す。
まぁ、今更そんなことを心配したところで、状況は進展するはずもない。
今は、空の神様のご機嫌が治るのを待つばかりである。
雑居ビルに入ったアサヒ達は、キャンプをするのにちょうど良さそうな部屋を見つけると、簡単に床を片付け寝袋と荷物を広げることにした。
今夜はここで野宿だ。
オフィスの一室は、大戦前まではどこかの会社が使っていたようで、部屋の隅には古びた椅子やら机やら、その他雑多な機械類が散乱している。
中から、誰だか分からない人骨が出てきても、もう驚きはしないだろう。
「おにぃ、またレーションなの~?」
部屋に転がっていた廃材を集めて作った焚火の上で、串に刺した携帯食料、もといレーションを焼くアサヒに向かって、ミソラは不満げに言った。
「文句言うなって、レーション美味しいだろ?」
「うーん……。こうずっと食べてると、さすがにね……。どうせなら、こうおっきなステーキ食べたい。それか、魚。おっきな魚!」
「はいはい、いつかくわせてやるよ。今日のところは、これで我慢してくれ……」
「ぶぅー」
頬を膨らませるミソラであったが、出来上がったレーションをアサヒが渡すと、無邪気な子供のようにもぐもぐと食べ始めた。
ミソラのそんな様子を見ながら、同じようにアサヒもレーションを一口かじることにした。