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機械の化け物3

 目の前で繰り広げられている殺戮と、異常なまでの狂気を目の当たりにしたヒナタは、目を丸くし、息を飲んだ。


 先ほどまで、微笑ましく、笑顔を振りまいていたミソラの姿は、もうそこにはない。


 今の彼女は、ただ人を殺すことを楽しんでいる機械の悪魔の様であった。



「あれが、マシンドールの力……」


 ――マシンドール。噂では聞いたことはある。


 なんでも、マシンドールと化した人は、体の一部を自我を持った機械に侵食され、本人の意思とは関係なく、暴走するという。


 彼らは一度暴走してしまうと、振りまく狂気と殺意は、その本人でさえも抑えることは出来ない。



 ずっと、西側か東側のプロパガンダだと思っていたが、実際に存在しているなんて思いもよらなかった。



 なぜ、機械が人間の体を蝕むようにして取りついているのかは全くの謎で、ある日突然、その現象は発症する。


 勿論、治療方法はない。マシンドールになったら最後、本人が死ぬまで、体に取りついた機械は、生身の体を徐々に侵食していく。


 その現象をいつの日か、マシンドールの呪い、と噂されるようになった。


 当然、暴走したマシンドールの鎮圧には、それ相応の犠牲が強いられる。


 このため、西側社会主義国も、東側民主主義国も、マシンドールを見つけ次第、速やかに排除しているそうだ。


 そうしないと、自分達の命はおろか、マシンドールのせいで都市が壊滅しかねないからだ。


 そのため、マシンドールの呪いに掛かった人間は、長く生きることは出来ない。




「あの子が……」 


 ヒナタが声を洩らすと、隣で傷を押さえながら座っていたアサヒが、弱弱しく口を開いた。


「あれが、ミソラの正体だ……。ミソラは自分の意志で、マシンドールの暴走を引き起こすことが出来る。こうなったら、ミソラに敵う者は、誰もいない……」



「あぁ……。痛てぇよ……」


「誰か、助けてくれ……。死にたくない。死にたくない……」


 まだ息のある、赤狼達の断末魔が、聞こえる。


 それらすべての人間を、弄ぶようにミソラは、背中から生えた機械の刃で止めを刺してく。


 そして、最後に残されたのは、赤狼のリーダーだけになった。


「きゃははっ」


 不気味に笑うミソラに、相対したリーダーは、徐に握っていた拳銃を向け、何度か発砲する。


「糞……。糞……!糞野郎!こんな所で、死んでたまるかっ!」


 鈍い拳銃の発砲音と、いくつかの薬莢が床に落ちた。


 しかし、放たれた弾丸は、すべて機械の刃にはじかれてしまい、ミソラには全く当たらない。


「きゃははははっ」


 ミソラは首をかしげながら笑うと、ゆっくりとリーダーに近づく。


「来るな……!来るな……!化け物……!」


 怯えきった赤狼のリーダーは、拳銃がマシンドールには効果がないと分かり切っているにも関わらず、引き金を引く手は止めなかった。


 彼にはそれしかもう、手段は残されていないからである。


「あっ、があぁぁぁぁぁ!」


 最後の弾丸を打ち切った瞬間、男の片腕が吹き飛んだ。


「腕が……!腕が……!」


 床に悶え、転げまわるリーダーの男。もうすでに、最初の威勢はなくなっていた。


「きゃはっ!」


 そんな彼に向かって、ミソラは背中の機械の刃を振り上げた。



 ――あぁ、もう十分だろう……。



「ミソラっ!」


 アサヒは、怪我の目立つ体を無理やり起こすと、彼女の名前を呼んだ。


 すると、ミソラの動作が一瞬、ピクリと止まる。


「あっ、ちょっと……!」


 ヒナタの静止に耳を貸す様子もなく、アサヒは今にも死んでしまいそうなくらいの傷を負った自らの体を引きずるようにして、ミソラの元までやって来た。


「ミソラ、お前を、こんな姿にしてしまってすまない……」


 彼女を背中からそっと抱きしめたアサヒは、ミソラに向かって小さく言う。


「おにぃ……?なんで、泣いてるの……」


 その時、一瞬だけ正気を取り戻したミソラは、不思議そうな表情で聞くと、アサヒはすぐに自分のポケットにしまっていた鉛筆ほどの細い注射器を取り出し、彼女の首に刺した。


 注射器の液体がミソラの体内に入って行く。


 そうすると、ミソラ意識が徐々に失われていき、彼女の背中から生える機械の翼も生気を無くしたように、体の中に戻って行った。


 そしてしばらくすると、完全に暴走前の体に戻ったミソラは、アサヒにもたれるようにして、深い眠りについた。


「戻って来たな……。ミソラ」


 安心した反動か、それとも、とうに体の限界に達していたのか、小さくミソラに囁くと崩れるようにして、彼女を抱きしめながら床に倒れる。


「だ、大丈夫ですか?アサヒさん!」


 ヒナタが、すぐに駆けて寄って来た。


「あぁ、ヒナタ。問題ない。どうやら、少しばかり、無茶しすぎたようだ……。すまないが、俺の代わりに、ミソラのことを、頼めないか……?俺は少し眠る……」


 アサヒは言い残すと、彼もまた意識が遠のいてしまった。


「あのっ!しっかりしてください……!あのっ!」


 すでに遠くなった意識の中、ヒナタの叫び声が、何度か聞こえたような気がしたが、アサヒにはもう、答える気力は残されてはいなかった。




ここまで読んでくださった方々、

本当に感謝です。

前文でも書きましたが、なろうにupするのは、話の内容が溜まってから一気にするので、気長にお待ちください。

ノベルアップ+の方では、でき次第upいたしますので、もし待てない!と言う読者の方がいましたら、そちらで見つけてもらえると、ありがたいです!

でわでわっ!


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