地上へ
銃を構えながら移動するアサヒを先頭に、3人はホテルの最上階。階段へと足を進めることにした。
当然のことながら、電気が来ていない。
そのため、エレベーターが稼働している訳でもないため、ここから先は敵を制圧しながら、進むしかない。
階段へ向かう、途中の渡り廊下。
ヒナタを確保するため、駆けて登って来た赤狼のメンバー2人を、続けざまに排除。
銃の散弾は、彼らの胴体を吹き飛ばした。
鮮血を廊下に流しながら奴らはその場で崩れるようにして倒れる。
残りの弾倉装填数は、3発。
それらを頭の中で把握していたアサヒは、下り階段の傍の壁までやって来ると、背中をつけ、ポケットの中から、12ゲージショットシェル(散弾銃の弾薬)を取り出し、再装填した。
アサヒの後ろを遅れてやって来るのは、いつもと変わらない調子のミソラと、廊下に転がった奴らの死体に怖がりながら、とぼとぼとついて来ているヒナタだ。
――そう言えば、赤狼の奴ら。ヒナタのことをお嬢様って言ってたような……。もしかしてこいつ、外の世界に出たことないのか……?
ヒナタを横目に見ながら、アサヒはそんなことを考えていると、一瞬、彼女と目が合うが、すぐに逸らした。
――まぁ、ヒナタのことはミソラに任せるとして、問題はどうやって下まで、無事にたどり着くかだが……。
「おい、上で銃声が聞こえたぞ!」
「最上階だ!行け!行け!敵を仕留めろ!」
アサヒが頭を悩ませていると、すぐ下の階から、再び赤狼の声がする。
足音を聞く限り、3人、または4人と数は多い。
アサヒはすぐ横にいるミソラとヒナタに、ここで待つように手で合図すると、銃の標準を階段の踊り場に向けて待ち伏せする。
そして、先頭をやってくる赤狼の頭が見えた瞬間、引き金を引く。
銃口は小さな火をあげると、発砲音と共に放たれた銃弾は、赤狼の頭に命中。その場で、トマトが破裂すように吹き飛んだ。
さらに、散弾銃の先台を引いたアサヒは、続け様に階段を上って来た赤狼1人に、標準を向け引き金に指をかけた。
タンっ!と言う短い発砲音が、狭い空間に反響し、反応の遅れたもう1人の赤狼を排除。これで7人目だ。
「上の階だ!くたばれ、糞ったれ!」
目の前を先導していた、2人の仲間が殺されたことに気が付いた1人の赤狼の男は、そう言うと、階段の踊り場に身体をさらすことはせずに、持っていたマシンピストルの銃口だけをこちらに向けて発砲する。
「こいつら、いったい何人いるんだ?」
壁に身を隠したアサヒは、小言をぼやくと、隣にいるミソラの顔を見た。
「ミソラ、あれもらえるか……?」
「ほいほーい!」
ミソラはそう口にすると、背負っている鞄の中から、手榴弾を取り出しピンを外してアサヒに放り投げる。
「さんきゅ……!」
アサヒは受け取った手榴弾を、赤狼が銃を構える階段の踊り場目掛けてすぐに放り込む。
手榴弾は、階段をゆっくりと下って行き、赤狼の足元まで来た瞬間、鉄の破片を辺りに撒き散らし爆発。白い煙を巻き上げた。
「おにぃ……。やっぱり、えげつないことするよね……」
両耳を手で塞いで、身を屈めていたミソラは、アサヒの顔を見上げながら、そうつぶやいく。
「仕方ないだろ……?敵が銃を撃って来るんだから……」
当然だろ?と言うように、アサヒは散弾銃を構えながら階段を1歩ずつ降り始めた。
「まぁね……」
ミソラは小さく言うと、アサヒの後に続くのだった。