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010  糾弾しましたが、廃嫡されました <シモン>

軍部組織名を修正いたしました。

ああ、こんな事も必要なのね。考えた事もなかった(汗

日々勉強です。

父が帰って来るのは夕食を食べた後だろうと思っていたが、思いの外、早かった。

「お帰りなさいませ。父上」

シモンは3階から2階へ降りる階段の手すり超しに、2階へと昇ってきたレイモンに挨拶をした。レイモンは、ちらりとシモンに目をやったが、声をかけるでもなく、そのまま自身の執務室の方へ向かった。


この父は、どうしてこう、人の神経を逆なでするのだろう

人が、したくもない挨拶をしてやっているというのに、なんだ、その態度は。


シモンが、自分の父に対して居丈高になれるのには理由がある。

普通の貴族であるならば、父の機嫌を損ねた場合、弟になり養子を取られたりして廃嫡される事もあるが、彼はシュバリィー辺境伯の唯一の男子である。

そして、養子もあり得ないと思っていた。シモンの母であり、レイモンの妻であった女性は、もう隠居されているクレマン大公の娘で、現当主の姉であった。

35年前のブランケンハイム王国との戦い勝利の功績によって、ようやく辺境伯に叙位された男の嫡流。しかもまだ無位の軍人が、この国最古の大公家・・・初代ワロキエ国王の次男を始祖とし、『第二の王家』とも言われるクレマン家の御令嬢を、どうして妻に娶る事ができたのか?その経緯をシモンは知らなかったが、とにかく現クレマン大公の甥を、そうやすやすと廃嫡できる訳がなかった。


シモンは、無視された事を憤り、一瞬歩を止めたが、キッと目を吊り上げ、普段よりも歩幅を広く大股で歩いた。バタンと執務室の扉を開けると、レイモンは領地管理人からの報告書に目を通していた。

「ドアは静かに開けなさい」

レイモンは、書類から目を離すこともない。シモンの熱が上がる。レイモンの傍らにいた領地管理人が、シモンに代わり、扉をゆっくりと閉める、

「すみません。父上」

シモンは執務机の前に立つ。威圧する。領地管理人はぶるりと身を震わせた。しかし、レイモンは、そんな事も意に介さない。最後まで書類に目を通すと、

「ジュール。ご苦労だった。また、よろしく頼む」

「かしこまりました」

領地管理人は、そそくさと執務室を退室していった。


レイモンは報告書を引き出しの中に入れると、

「時期的には中途半端だが、4月20日付でシュバリィー辺境伯軍の入軍を許可した。もう、王都に帰る必要はない」

何の前触れもなかった。

「はっ?」

呆気にとられるシモンを無視し、尚も続ける。

「お前の経歴なら士官にすべきなんだろうが、とてもまかせられない。新兵から始めて、伯爵の護衛でたるみきった根性を叩き直してもらえ」

「な、何をおっしゃってるんですか!?」


シモンには、レイモンが何を言っているのか理解できなかった。

逆にレイモンは、何故、シモンが話を遮ったのか解らない。と、いった風を装った。


「私の所属は、ワロキエ王軍近衛隊です。いつ、シュバリィー軍に入ると言いました!」

堪えきれず、ついに、執務机をバンッと叩いた。

レイモンは、一切動じず

「お前に、何度、帰領命令を出した?帰って来たという事は、やっと観念したんだろう?」

「はっ。冗談でしょう。私はまだ、第十親衛隊(殿下の護衛)を辞める気はありません。それに、二つの軍に所属するなんて、許されない」

「心配するな。お前がこちらに帰った報せを受け、すぐに王都に使いを出した。元々、お前がこちらに帰ると同時に、ワロキエ王軍から移籍する手続きは整っていた」

「なっ」

二の句がつげなくなっているシモンに、レイモンは更に続ける。

「あきれる程あっさりと受理されたよ。あちらもお前を持て余していたようだ」

「横暴だ!だいたい、殿下が許すわけがない」

「伯爵に何の権限があると?」

レイモンは、にやりと笑う。


いくら第三王子・・・現国王の子であろうと、位は伯爵。今、王太子は、王妃に与えられた海の近くの領で病気療養中の為、王都にはおられないが、廃太子されたわけでも、ましてや亡くなられた訳でもない。

しかも、母親は公妾である。認知されているとはいえ、王太子が生きている限り、侯爵より上の位を与えられる事はない。

まして、王太子殿下は現在26歳。王妃領内で秘密裏に結婚されていないとも限らない。そして、御子が産まれていれば、次の王太子はその御子となる。

最も、もし、産まれたのが娘であった場合、結婚相手は【大公家の嫡男以外の男子に限る】という制約がつくが、王族や貴族の結婚というものは、概してそういうものだろう。

つまり、第三王子と崇め奉ったところで、所詮はスペアでしかないのだ。

それでも、軍籍に名を連ねているというのならば、人事権に口を出せるかもしれないが、彼の伯爵は、その責務さえ負っていない。

今、シモンが第三王子警護の為の第十親衛隊に所属しているのは、忖度の結果に過ぎないのだ。


シモンは、わなわなと震えていたが、何かを思い出した様に喋りだした。

「父上こそ、そろそろ引退されてはいかがです。そうすれば、こころゆくまで人形遊びができますよ」

「人形?」

レイモンの眉が、ぴくりと上がった。

「トーマ子爵から人形を頂いたのでしょう?ジゼルが『お気に入りだったのに』と寂しそうにしてましたよ。いい歳をして、何やってるんです・・・」

シモンが、べらべらと喋っている間に、今度は、レイモンが、怒りに身を震わせていた。

「聞いておられますか?父上」

勝ち誇ったかの様に、レイモンに詰め寄る。すると、信じられない言葉が返ってきた。


「シモン。お前を廃嫡する」


ブックマークが初めてついた。すごく嬉しい。


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