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隠し事

少し修正してあげ直しました

「あんたって子は!」


 母から頬をビンタされて口の中が切れる。痛みに思わず涙が出て声を上げて泣いてしまう。


「泣くんじゃない!」


 今度は父が私の顔を殴る。その衝撃でまだ4歳だった私は後ろに吹き飛んで壁にぶち当たる。


「ご、ごめんなざい」


 血の味が滲む口で必死に謝る。軽い障害のある私が唯一得意だったのが謝ることだった。


「ごめんなさい、許してください」


頭を床につけて泣きながら必死に謝る。そうすれば彼らは満足していつも私をぶつのをやめてくれた。でもその日だけは違った、どれだけ謝ろうが泣こうがいつまでも殴られて気づけば気を失っていた。幸いそれで脳に異常をきたしたり、顔にマヒが残ったりはしなかったが次に起きた時には知らない天井を見ていた。ついに病院にでも連れてこられたのかと思ったが違った。


「大丈夫?」


 見たことのないおばさんが私を見ていた。


「だれ?」


 正直誰でも良かったがかすれた声で問いかける。


「私はこの孤児院の平野よ、おじょうちゃんはなんていうの?」


 こじいん?言葉の意味は分からないが自己紹介はする。


「ゆう」


 優しい表情で頷いてくれる。


「ゆうちゃんのお父さんとお母さんはどこか知ってる?」

「知らない」


 でも幼心に分かっていた。ついに捨てられたのだと。そう分かっても殴られる時以外に喜ぶべきなのか悲しむべきなのか判断する感情はとっくに失われていた。


「そう、ゆっくり休みなさい」


 優しく頭を撫られその安心感に私は寝てしまっていた。




「真っ暗だ」


 ベッドの上で目が覚める。


「変な夢見ちゃったな、忘れないと」


 未熟児だった私を産んだ両親は、私に障害があることを知って、お互いに責任をなすりつけあって憎しみあっていた。お互いの関係が冷え込みすぎたからか、いつからか私の事を憎むことによって2人の関係は良好になっていた。共通の敵を持つ人間は仲良くなるんだなあ、って今でもクラスの女の子を見ていると時々思ってしまう。


「考くんに話したらなんて言われるだろう」


 拒絶されるのか受け入れてくれるのか、考くんでも嫌な顔しちゃうのかな。いつ言いだそうかと幼いころから思い続けて、結局この関係になっても言えないままでいる。もしかしたらもう気付いてるかもしれない。それが一番いいけどこれは私の口から言わないといけない。それが私のけじめだ。本当は告白の時に言おうかと思ったが流石に全校生徒に知らせたくはない。


「ところで考くんはどこ?」


 慣れてきた目で辺りを見回すも何処にもいない。一緒に寝てくれればいいのに。ベッドから降りて部屋の電気を付けると、暗い所に居たせいで目がすごいことになる。開けるのが辛くて、何分かしてゆっくりと目を開け時計を見ると3時を指していた。昼寝したせいで中途半端に起きちゃったみたいだ。


「早く考くんの所に行こう」


 考くんの部屋から出る。どこに誰の部屋があるかは知っているので一番可能性の高い考くんのお父さんの部屋に入る。


「おじゃましまーす」


 小さな声で部屋に入ると、「すーすー」と寝息がする。この寝息は考くんで間違いない。足音を立てな

いようにゆっくりとベッドまで近づくと気持ちよさそうに仰向けで寝ている考くんが居た。起きないか頭を撫でるも反応はない。

 考くんの右わきの方に布団を上げて入り込む。考くんの体温で布団が温かくなっていて心地いい。


「こうくーん、おきてー」


 耳元で小さな声で囁いてみるも全く起きる気配を見せない。寝起きのせいなのか、見たくもない夢を見たせいなのか、起きてくれないことに寂しくなる。


「こうくーん、起きないと耳噛むよー」


 考くんから返事はないので宣言通りに耳を甘噛みしてみる。耳たぶを弱い力でしがんでも全く反応をしめさない。ドラマとかでこういうの見たことあるけど気持ちいものじゃないのかな。そのままなんとなく耳をしがんでいると耳の違和感に気づいたのかこっちに寝がえりをうとうとしてくるので急いで離す。目と鼻の先に考くんの顔が来いてどきどきしてしまう。起きて寝がえりをうったわけではないようだが、ちょっと離れようと動こうとすると考くんの手が私の背中に回さ強い力で抱きしめられる。


「こ、考くん、おきてるの」


 耳をしがんでいたことを気づいて寝たふりをしていたのかと思ったがそうではないようで、寝息が頭の上から聞こえてくる。


「まだ話さなくていいよね」


 自分に甘い私は、今日も打ち明けられずに一時の幸せにすがって眠っていく。


お読みいただきありがとうごじました。

12部分は20時投稿

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