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あたりまえの朝



プロローグ


「おはようー」


 重い目を開けて家の門の近くで立っている彼女に毎朝の挨拶をする。


「おはよ!まだ眠そうじゃん、夜更かし?」


 僕とは対照的にさわやかな挨拶をする。彼女のそばまで来ると自然と横に並んで歩き始める。2人で並ぶと身長の差が如実に分かる。


「いやー、まあちょっとだけね」


 そう言いながらも大きなあくびが出る。うちの家族の遺伝なのか朝は苦手だ。寒さのせいなのか今日は特に眠い。


「へー、なにしてたの?」


 僕の顔を覗き込みながら聞いてくる。彼女の長い髪から一瞬シャンプーの甘い香りがする。


「うーん、友達と遅くまで電話してた」

「そうなんだ・・・遅くまで話してると授業寝ちゃうよ?」


 彼女の顔が少し険しくなる。


「寝てもテストで点数取れるから心配ないよ」

「で、でも遅くまで起きてると頭に良くないって聞くし」


 彼女が必死に早く寝させる理由を見つける姿に微笑ましくなる。


「でも優の方がいっつも点数悪いじゃん」

「それは私の頭が元から悪いだけだから!なんか今日いじわる」


 拗ねたのか少し早歩きで僕の前を歩き始める。寝不足でちょっと不機嫌だと自分でもわかる。これ以上拗ねたままで学校に行かれたくないので、


「あー、寝不足のせいでちょっと機嫌悪いかも」


 その言葉に嬉しそうに僕の方を向きながら器用に後ろ歩きを始める。


「いまのは夜更かしのせいって認めたよね」

「そうだな、夜更かしのせいだと思う」

「うんうん、そうやって素直に認めればいいのに」


 満足したのか笑顔でまた横に並んで歩き始める。

 もう冬だな、なんて思いながら無言のまま歩いていると、


「電話してたのって女の子?」


 今日はやけに静かだと思っていたけどそれを聞くか悩んでいたのか。最初の寝させようとしてたのも女の子と話してほしくなかったからだろう。


「いや、グループで話してた」

「あ、そうなんだ」


 会話が途切れて、またしばらく無言で歩く。


「全員女の子?」


 その言葉にたまらず笑ってしまう。


「ちょ、ちょっと笑わないでよ」


笑われたことで言ったことが恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にする。


「ははは、ごめんごめん。まさかそんなこと言うなんて」


 ツボに入ってなかなか笑いを抑えられない。


「もう!笑いすぎ!」


 彼女の軽いパンチが僕の脇腹に飛んでくるが痛みは全くない。


「はあ、もう大丈夫。話してたのは男友達だけだから」

「なら良いけど」


 笑われたことでまた拗ねてしまう。


「じゃあ今日の夜電話する?」


 たった一言で彼女の顔が拗ねていたと思えないほど明るくなる。


「するする!約束だからね!じゃあ夜更かししなきゃだから授業は寝るぞー!」


 ちょっとあほっぽい彼女だけど全てが愛おしい。 

ありがとうございました。



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