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まず佐藤秀作よりはじめよ  作者: 佐藤秀作
5/6

エレベーターワールド


 四畳半一間の部屋、ギリとチエに一通りの説明を受け、たわいもない話をして寛いでいた。


  ピンポーン♪


 !

 ギリとチエと俺は顔を見合わせた。

これってチャイム・・・呼び出し音ですよね~?


  ピンポーン♪


「細、出ないのか?」

「やっぱり呼び出し音だよな?」

「細君出ね~」

一体誰だろう?

立ち上がり部屋から出て、玄関に向かう。

内ドアに覗き穴があったので覗く。



 !

 誘導係のジジイだ!

フッフッフッ遂にこの時が来たぜ。

このクソジジイ、どうしてくれようか?

ガチャ


「おい!「家賃お願いしまーす」

「ハァ~!?」

「家賃お願いしまーす」

「このやろ「家賃お願いしまーす」

「話聞いてよ~」

「5金貨(ゴルド)になりまーす」

「ごっ、5金貨(ゴルド)もすんの?ってゆうかいきなり家賃払うものなの?始めに引いとけよ!」

「5金貨(ゴルド)になりまーす」

「ロボットなの?ってゆうかあんた新人は始め100金貨(ゴルド)貰える筈だろ!ピンハネしてんじゃね~よ!それに喫茶店で俺に勘定押し付けるってどういうことだよ!?」

「社会勉強が必要だから」

「ただの詐欺じゃね~か?」

「取り敢えず5金貨(ゴルド)貰おうか」

「そんなの払うかよ!」

「じゃあ家を出てってもらおうか?」

「何だよお前?ジジイの癖して、舐めるのもいい加減にせんと痛い目みせるぞ!」


「君、僕のレベル知ってて言ってんの?」

「知らね~よ!」

「ちなみに僕はね~565レベルですけど」

 えっ、本気(マジ)で?

「そっ、それがどうした」

「初日に死にたいの?一撃ももたずに死ぬから」

 ウッウソでしょ?

「やっ、やってみろや!」

「細!」「細君いけん!」

「この人の言ってることは本当のことだ!」

「誘導係は強いんよ~」

「こんなジジイがか?」

「この人、誘導係は新人を守る為にわざわざ上の階から呼ばれるんだ、あらゆるイレギュラー、例えばチートスキルやチート魔法を始めから持っている奴とか、すでにここにいる人間の暴走を止める為に充分なレベルマージンを持って誘導係に任命されるんだ」

「君の言ってる事は概ね合ってるね、でも少しだけ違うかな」


 こんなジジイが強いのか?

この世界はステータスが絶対・・・本当だとするとこのジジイはかなりの強さを持っていることになる。

 レベル565・・・やっぱりレベルが上がるとステータスも上がるのだろうか?

 レベルが1上がったとしてステータス1上がるとしても565の数値・・・駄目だ、勝てる気がしない。


「自分さっきの勢いはどうしてん?」

クソ!何て腹の立つジジイだ。

「僕は君にとって、神・だ・か・ら」

ぐぬ~!やりたい放題やりやがって・・・何で俺の時に限ってこのジジイが誘導係なんだよ!

「ピンハネしてないから、それは君の勘違いだから」

「じゃあ何でギリ達は100金貨(ゴルド)貰えるんだよ」

ギリもチエも何故か申し訳なさそうにしていた。

別に気を遣わなくてもいいのに。

「それは知らん!」

「・・・」

「管理人に聞けば?まあ聞いても教えてくれないと思うけど」

「何でだよ!」

「言えないには言えないなりの理由があるんとちゃう?大人の事情ちゃうかな、ハイ5金貨(ゴルド)

 しぶしぶ5金貨(ゴルド)を渡し

「君!手を離しなさい」

クソ!ジト目してやる。

「そんな目をしても無理なもんは無理!」

力ずく一本一本指を剥がされていく。

 クッ、何て力だ!ちっチ・ク・ショ・オー!

俺の5金貨(ゴルド)が~。

「カハハ自分、泣くことないやんか~」

 ギリは悔しそうに、チエは泣きそうになっていた。

何だよ!俺まで本気で悲しくなるだろ。

「ハイ確かに貰いました、これで1ヶ月居てもいいから」

 ジジイはそう言って去って行く。

「バーカ!」

「馬鹿いうもんが馬鹿やから」

最後までムカつくジジイだ。


「大丈夫細君?」

「悪いジジイだな」

「最悪だろ」

俺の全財産13金貨(ゴルド)と7銀貨(シバー)・・・これヤバいな~。

3ヶ月も、もたね~よ。

「なあギリ、エレベーターワールドに乗ると異世界に行けるんだよな?」

「そうだけど・・・一人で行くのは危ないぞ」

「いや、すぐに金が欲しいんだ」

「細君、金貨20枚スタートじゃもんなぁ~」

「いや、もうすでに13金貨(ゴルド)ぐらいしかないんだ」


「まさかあの詐欺にあったのか?」

「もしかしてギリもか?」

「あんな卑怯なこと、引っ掛らない奴なんてて女ぐらいしかいないだろ!」

「あれは恐ろしい詐欺だな」

「なぁーなぁーさっきから何の話、しょーん?」

「チエちゃんには内緒の話」「オッパイ詐欺について」

「細!」

やべェ、ここは内緒だったな。

実際すごくジト目されてるし。

「なぁ~に~オッパイ詐欺って!?」

「ちっ、チエちゃん、ちっ、違うんだ!細!」

任せとけ!ほろーすればいいんだろ。

「十階の女性店員がオッパイを擦り着け「細!」

ダーダン♪

「違うわ!とにかくオッパイがいっぱい「細!」

ダーダン♪

「思わず買っちゃうよねティーバック「細!」

ダーダン♪

「お前も揉んだんだろオッパイ「ほ!そぉぉぉぉー!」

鮫が出たぞ~。

すまんギリ、お前の犠牲は無駄にはしない。


  青春しろよ。


 ギリの頬っぺたに手のひらの赤い跡。

悲しいかなギリはみっちりチエちゃんに絞られたみたいだ。

「憶えてろよ細!」

ん~知りません。

忘れるし。

「それよりも、何か安全でいい稼ぎないか?」

「ねーよ!」

ギリの奴、相当根にもってやがる。

「十階になぁ~、仕事あるにはあるじゃけどなぁ~「やめとけ細、仕事の割に安いんだよな」

「1日だいたい3銀貨(シバー)ぐらいしかくれんのんよ~、じゃけぇ~なぁ~生活するの精一杯になるんよ~」

 先に来たもん勝ちか~どこの文明でも一緒だな。 

う~ん、やっぱりエレベーターワールドしか手っ取り早い方法はないよな。

「細、良かったら一緒に行かないか?」

「チエもなぁ~今ギリと一緒の事言おうと思ったんよ~」

 願ったり叶ったり、やっぱりいい奴等だ。

「いいのか俺で?何も知らないけど?」

「手取り足取り教えてやるよ」

「チエも」

「チエちゃんには無理だから」

「無理じゃ、ないもん」

ハイ、始まった。

しばらくお待ち下さい。



「終わった?」

「ごめん細」

「ギリ君がわり~んよ」

また始まりそうだ。

ここは早めに手を打つ。

「ところで、装備、このままで行けるかな?」

「一階のエレベーターワールドなら問題無いんじゃないかな~」

「2つ名は、行ったことないけど1つ名なら行けると思う」

「2つ名?」

「ボタンに書かれてある名詞の数のことだよ、ほとんど1つしか名詞が書いて無いんだけど、2つ名詞があるボタンも在るんだよ」

「上の階には3つ名もあるんじゃけぇ~なぁ~」

「2つあると問題なのか?」

「難易度が上がるらしい、俺達もまだ行ったことないんだ」

 それは危険だな。

死んだら、やっぱり死ぬのかな?

死んだことないけど・・・ここが死後の世界ってこともあり得るよな。

 まあ、試す気はないけど。

取り敢えず、行ってみないことにはわからんし。

「じゃあ明日、朝の8時に俺の家で待ち合わせしよう・・・そう言えば、ここ、何で朝なのに暗いんだ?」

「う~ん、何でだろう?俺達も不思議に思っているんだ」

「チエもなぁ~外が明るくないから気持ちが暗くなるんよ~」

「明るい時間ってあるのか?」

「ない」「ねぇ~んよ~」

答えるの早。

ということは

「一回も、1日も明るい日はないのか?」

「俺達がここへ来てから一度もないんだ、だからここは一体何処なんだろうって俺が聞きたいぐらいだ」

 ですよねー。

「ちなみにギリ達は外に出たことはあるのか?」

「実際に出たことはないけど、戻って来れない・・・死ぬんじゃないかと思う・・・あくまでも噂だけど」

「チエもなぁ~マンモス新聞で読んだときなぁ~外に出た人がなぁ~誰も戻ってきょ~らんって聞いてなぁ~きょうてぇ~なぁ~って思ったんよ~」

 新聞に載ってたぐらいだから信憑性は高そうだ。

まったく予想もつかない世界に来たなコレ。 

「まぁいいや、今はこの世界のことより明日の生活だよな・・・とりあえず明日朝8時俺の家に集合でいい?」

「了解」「チエもええよ」

と二人は言い俺の家から出て行った。



 う~ん、色々あったけど・・・もうすでに昼の12時かぁ~・・・お腹空いたけど・・・ここは寝る。

 何だか考えることが多すぎて疲れた。

お休み。



 「ハァ~あ」

「お腹空いた」

「・・・」

しかしこの部屋なんも無いな。

真っ白い壁紙・・・天井・・・寝る以外のことが思い浮かばない。

良い意味で殺風景。

行動範囲が狭まる、つまり判断をする必要がない。

よし何か食べにいこう。


 ガチャ。

ハイ真っ暗。

今は夜の8時かぁ~・・・。

意外に人がいんのね。

エレベーターに向かう奴、家に出入りする奴、階段に向かう奴。

この世界ではこれが当たり前なのか?

まあ、色々あるよね。


 

   10階。


 いかついフルアーマーの守衛に1銀貨(シバー)を渡し、9銅貨(カット)を貰い中に入る。 

 ここに来ると賑わいに参るな。

絶え間ない喧騒、無駄に明るい店員の呼び声、混濁する臭い、目移りする商品の数々。

祭りなのか?

 いつもこんな感じなんだろうな。

さて、なに食べよ。

やっぱり異世界といえば骨付き肉・・・ないかな~。

さっき来た時には見当たらなかったけど・・・・・・―――あるよね~!

見つけましたけど。

 何の肉かはわからないけど大きな長細いグリルに大きな串、端々に二人がかりで回し豪快に焼いてるよね。

肉の焼ける香ばしい嗅ぐわい、こりゃ堪らん。

そしてあの滴る肉汁、ジリジリと焼ける肉の色合い、こりゃ堪らん。

これは確実に美味いこと間違いなし。

 これで不味かったら、俺は味覚捨ててあらゆる食べ物を不味いと思って食べるからな~!

「おい!そこの兄ちゃん、何なら買ってくかい?それとも食ってくかい?」

 むさいオッサン・・・風呂入れよ。

かなり臭いぜ。

「・・・美味しいのか?」

「あたぼ~よ!このマンモスマンションじゃあ1.2を争うほどの美味さよ!どうだ買ってくかい?食ってくかい?一本5銀貨(シバー)だよ」

 あたぼ~よなんて久々に聞いたな。

江戸子かよ。

しかも5銀貨(シバー)もすんの?

かなり高いな~。

 店員がお姉さんだったら即決だったのにむさいオッサンじゃな~。

 しーかし!明日は初のエレベーターワールド。

ここは奮発するべきところだろう。

 明日の鋭気に備えるべきだと俺のお腹もおかんむり。

「よっしゃ!一本貰おうかこのコンコンチキ!ところで何の肉?」

「うちがもってるエレベーターファームに飼ってる脂のってるピッグトンネルを丸々使っているからよ」

 聞いてもないことを喋り始めましたよ。

相当、熱の入った演説、ありがとうございます。

 しかしピッグトンネルって!穴の空いた豚・・・焼きやすくするめに自ら進化したのか・・・何て優しい豚さんだ!もうそれは


 おもてなし豚さんに名前を変えよう!


 フゥー思わず興奮したぜ。

まさかそんなえげつない優しさを秘める豚さんがいたとは、驚きに驚いた。

 それはともかく、エレベーターファームってなんだ?

聞いてみたところ、わざとクリアー出来ないエレベーターワールドの1つの面にモンスターを繁殖させ飼うらしいとのこと。


    クリアー?


 クリアーしたらその面は無くなって新しい面に替わるらしいとのこと。


   誰がそれを管理すんの?


 用心棒ならぬ傭兵を雇うとのこと。


   バイト代は?

  

 日給3金貨(ゴルド)、それは高いな~。

まあ強盗が相手だしそれぐらい貰って当然かも知れない。

 相手がチートスキル持ちかも知れないしな。

「おーい!兄ちゃん?」

でもこのエレベーターファームって考えようによっては、べらぼうに儲かるじゃないだろうか?

「おーい!おーい!」

だって人件費だけだろ。

これはもしかしたら俺にもチャンスがあるぞ!

「なぁ!兄ちゃん、買うの買わねーの?どっちかに決めてよ~」

明日、さっそくギリとチエちゃんに報告しよう。

「テヤンデバーロー!買うのか買わねーのかはっきりしやがれ!」


「買わへん奴が逆におんるかい!そして5銀貨(シバー)ドーン!!」 


 オッサンの顔にぶつけてやりましたわい。

「兄ちゃんなにも投げるこたーないだろ」

あんまりしつこいと、俺も怒るよ。

「金さえ払えば文句ないだろ!」

「ちょっとお兄さーん!・・・」

やっべっ。

オッサン怒ってる、こめかみの血管が脈打ってるやん。

斧出すなや。

ウソですやん。

冗談ってわかります?

ここは必殺

ソッコー土下座。

そして、相手が、油断したところでーからのー


 肉を貰いまーす。


ありがとうございまーす。

「兄ちゃんまた買ってちょうだいよ」

「自分この店以外で食べ物買わないっす」

「ありがとよ」

「失礼つかまつります」


 いや~怖かった。

あの人、絶対にその筋の人だよ・・・だってめっちゃくちゃ怖かったし、目も据わっていたよね。

さっ帰ろ。



 俺は家に骨付き肉を持ち帰り―――猫舌には熱過ぎて無理だった。

だから猫舌なのに犬のように持ち帰った訳で。

 そして今、骨付き肉を、銀貨(シバー)5枚の、焼き色、焼け具合、この匂い、滴る涎。

 ゴクッ

「いただきまーす!」


「ハッハッハッハッハッハッハッ」

 

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