3話
落ち着きを取り戻し、お互い自己紹介から始めることにした
「俺はリキ 見ての通りの鬼人で、狩りの途中でお前を見つけてここまで運んだ よろしくな」
「俺は健太だ よろしく 助けてくれてありがとうな」
礼を述べると照れくさそうに頭をかいた
「いいよそんなこと 倒れてる人間見たら普通助けるだろ」
なんていい奴なんだろう 魔物が人間にやさしい世界って素晴らしいな
「それより、なんであんなところで倒れてたんだ? 熊にでも襲われたのか?」
あの山って熊が住んでるのか よく5日間襲わずに済んだな
「いや、遭難してたんだよ 気づいたら山にいて歩き回ってて、力尽きて倒れてたんだ」
「へー、そうなんだ」
場が凍った 思わず表情に出てしまう
「すまん‥‥ 場を和まそうと思ったんだけど‥‥ だから、その顔はやめてくれないか?」
「いや、その心遣いはうれしいんだけど、それだけはないわ」
まさか異世界まで来てこんないたたまれない気持ちになるとは思わなかった
その言葉を皮切りに二人の間に無言が生まれる
「確かお腹が空いてたんだよな 飯作ってやるから部屋から出よう」
空気に耐えられなくなったのかリキはそう切り出した この部屋にとどまる意味もないのでリキの後ろについていくことにした
魔物の料理と聞けば、肉を焼いたものだったり野性的なもののイメージだが、意外にもちゃんと料理をするらしい
台所を見れば、ちゃんとした道具もあり生活感があった
「今から作るけど、なにか食べれないものとかある?」
道具の準備をしながら聞いてくる
どうして俺は友達や恋人がする会話みたいな事を鬼としているんだろう 死ぬ前にも言われたことないのに
「多分大丈夫だよ ゲテモノ系じゃなければ」
「そっか なら少し待ってろ すぐ作るから」
食材を切っていく その手捌きから普段から料理をしているが分かる ご飯ができるまで暇なので世間話をすることにした
「リキってここに一人で住んでるの?」
「いや、家族と一緒だけど」
「その家族は俺みたいなのを家に入れてなにも言わないのか?」
「うーん 多分文句は言うだろうけどちゃんと説明すれば分かってくれると思うよ なんだかんだで優しいから」
まぁ、こいつを育てた両親なら悪いやつではないだろうな その根拠はどこから来るのか分からないけど
「じゃあ他の家族は今どこにいるんだ?」
「両親は仕事中かな 多分妹は外で遊んでるんじゃないかな」
妹がいるのか 羨ましい 現実の妹はあれだが、妹属性はいいものだ
「助けた時は狩りの途中だって言ってたけど、リキはハンターなの?」
「う、うん そうだね……。 まぁ、そんなものだよ」
返答があやふやだったが、何故だろう 何かやましい事でもあるのだろうか
世間話もそのほどほどにして聞きたかったことを聞いた
「まだ聞いてなかったけど、ここってどこなの?」
「ここは鬼人が多く住んでいる街オウマだよ ケンタには魔王城って言えば分かりやすいかな」
リキは自嘲的な笑い方をした そう言われ窓の外を見てみる だが、見えたのは青い空に石造りの建物そして道を歩く鬼たち
「魔王城? ここが? 俺には普通の街にしか見えないんだけど」
そう言うと調理を中断してこちらを物珍しそうに見てきた
「変わってるね 普通は 自分と違う容姿をしていて分からないものは拒絶するだろうに」
こいつは何を言ってるんだ 今まで普通に話してるんだから今更だろう
「確かに最初は驚いたけど、自分を助けてくれた恩人を怖がてもしょうがないだろ」
素直に答えると、リキは嬉しそうに
「そっか……」
とだけつぶやき、調理を再開した
これがギャルゲだったら好感度上がったな 俺は頭の中で雰囲気をぶち壊すことを考えてしまった
「料理ができたよ 冷めないうちに食べな」
そんなどうしようもないことを考えてるうちに、サラダやステーキなどの簡単な料理が運ばれてきた
「じゃあ、いただきまーす」
そうして俺は6日ぶりにまともな食事にありつけた
「なにこれ すごい おいしい」
思わず口からこぼれてしまう ちゃんとしたものを食べてなくどんなものでも美味しく感じるんだろうか
「喜んでくれて僕もうれしいよ」
本当にうれしいようにニコニコしている
ほんとにいい奴だよな もしこれで女性だったら求婚してしまいそうだ
「特にこのステーキがおいしいんだけど これってなんの肉なの?」
「あーそれ 人肉だよ」
その言葉に脳が完全にフリーズした
え、なに 俺美味しく人間の肉をバクバク食ってたの?
考えていくと強烈な吐き気が込みあがってきた
「オエェェ……。 お前俺になんてもの食わせてんだよ ふざけんなよ」
リバースするのをなんとかこらえ、涙目で抗議する すると、慌てたように弁解を始めた
「ごめん 冗談だよ 熊の肉だから安心して」
こいつの冗談のセンスは終わってんな こういう価値感の差が人間と魔物の違いなのだろうか
「人には言っていい事と悪いことがあんだよ 気分が悪くなるから マジでやめろよ」
「ほんとにごめんね まさかそこまで反応するとは思わなくて」
リキはしょぼくれて小さくなった 本当に悪気はなかったらしい
「ほんと反省しろよ 全く」
そういい、食事を続けた 会話が無くなり、ひどく居心地が悪くなる
「お前は俺になにか聞きたいことってないのか?」
空気に耐えられなくなり、口を開いた
「聞きたいことはたくさんあるんだけど、聞いていいか分からなくてね」
どうやら気を使ってたらしい
「俺だってさっきお前の事を聞いたんだ お前が聞いちゃいけない理由はないだろ」
そう答えると、質問をし始めた
「どうして山にいたの? あそこは立ち入り禁止なのに」
「山にいた理由はわからん 気づいたらそこにいたとしか言えない それとなんで立ち入り禁止なの 熊がいるからとかか?」
立ち入り禁止の理由を聞くと笑いながら話してくれた
「熊くらいじゃ立ち入り禁止なんてしないよ 人間じゃあるまいし あそこは神様が住んでるって言い伝えがあるんだよ だからここの住人は入らないようにしてるんだよ」
今さらっと自慢されたがスルーして考えた
あの、少女女神があんなところに落としたのはあそこしか無理だったからなのか? そうだとしたら無能な気がするんだが
そんなことを考えていると、また質問をしてくる そんなに俺の事を知りたかったんだろうか
「ケンタは今までどこに住んでたの?」
「日本ってところだけど」
嘘をつくのがめんどうで素直に話すことにした どうせ言っても分からないだろう
「ん? ニホン……? もしかしてチキュウってのと関係がある場所かな?」
「そうだけど……」
なんで知ってるんだよ もしかして転生者は他にもいるんだろうか
「じゃあ次ね なんで遭難してたの?」
「さっきも言ったけど遭難してた理由はわからん 少女に拉致られて捨てられたと思ったら山の中だったんだよ」
今度は自虐的に答えてみた だがそう答えると、リキは何故か興奮しているよう見えた
「最後の質問ね ケンタは魔物の言葉が喋れるのはどうして? もしかしてその少女と関係があるの?」
近い 顔が近い そして凄く怖い なんでこいつこんなに興奮してんの? ちょっと引くんだけど
「そ、そうだよ 言葉はそいつから教えてもらったんだよ 怖いから顔を離してくれない?」
「そうか……。」
意味深につぶやくと顔を戻して質問が終わった そしてリキは何少し考えて、頼みごとをしてきた
「なぁ、ケンタ 食べ終わったら行く場所があるんだけど一緒に来てくれないか?」
なんだろう すごく嫌な予感がする でも恩人の頼みは無下にはできなかった
「別にいいけど どこに行く気なんだ?」
そう聞くと、少し笑い場所を言った
「それはね この街で一番の権力者の所にだよ」
「ごめん やっぱり行きたくないわ」
即答した だが、すでに肩は捕まれており逃げることはできなかった




