1話
特例がある そんなことを言われたがここへ来てから思っていたことを口に出した
「あの、女神ってもっと大人びててスタイルのいいお姉さんなイメージがあったんだけど あんた本当に女神なの?」
「今は私の事より特例の方を気にして貰えますか ちなみに私はれっきとした女神です それ以上言うなら罰を当てますよ」
女神は笑顔を崩さず言う 確かに特例はうれしい うれしいのだが目の前の少女女神が気になってそれどころではないのだ
「いやだって、気にするなって無理でしょ こういうのは雰囲気が大事なんだよ 祭りや祝い事だってそうでしょ? だいたい女神が少女だった事もがっかりなのに場所も神聖さのかけらもない訳のわからないところなんだから集中できないって」
そんな自分勝手な意見に女神は笑顔が崩れだしていた
「なんでそんなことを死者であるあなたにそこまで言われなくてはいけないのですか? 私はこういう部屋が好きだからこうしてるんです それに少女だからって甘く見てると痛い目見ますよ」
マジかよ こんなのが好みなのか 若干引きながらも俺はダメ出しを続けた
「だいたいこういう部屋で話をされると圧迫感があって嫌なんですよ これだからお子様は―――
そう言いかけ女神の表情が険しくなっていた やばい、これは地雷踏んだわ
「それ以上口を開くようであれば神様権限で特例を無しにして地獄へ叩き落としてもいいんですよ」
「ほんとにすいませんでした それだけは勘弁してください」
そう言われすぐさま土下座をした 痛いのも怖いのも嫌いだ そんな思いをするなら頭を下げたほうがマシだった
「いえあの、冗談ですから そこまでしないでください そこまでされると私が脅してるみたいなんでやめてください」
慌てるように止めてきた 土下座されるのが嫌なのだろうか だがそこまでいい反応されるともっと困らせたくなってしまう
「本当に申し訳ありません 私のような下賤なものが尊くて崇拝対象である女神様に反抗するなど以ての外でした どうかお許しを」
「もうやめてください 私も謝るので顔を上げてください」
女神は半泣きでそう言ってきた
話し合いの末に口調を少し変えてもらうことにした 部屋の圧迫感もそれで多少はマシになるだろう
「はぁ… 疲れた まだ説明もなにも出来てないのにいつもより疲れた もうやだ 帰りたい」
「砕けた感じで接してほしいとは言ったがそこまで気を緩めろとは言ってないんだけど まぁいいや それで、特例ってどんなの?」
「あー、特例は2つあって 1つ目は地球で生まれなおして真っ当に生きること 2つ目は転生しその世界に平和をもたらすこと どっちがいい?」
勇者展開キタアアアアアアア‼‼ 生前はボッチでなにもいいことなんてなかったが、とうとう俺の時代がくるわけなのか
「なるほどな 俺に封印されし力が覚醒してその力で魔王を討伐すればいいんだな?」
そんなことを適当に嘯く
「違います‼ あなたには封印された力なんてありませんし、魔王を倒さないでください」
魔王を倒さないでくれ その言葉にいくつか疑問を覚えたが、そんなことはどうでもよかった
「え、魔王打倒が目標じゃないの? それなら異世界転生なんてさせる意味ある? ないよね? 俺の冒険はいつになったら始まるの?」
「別に魔物を狩るだけが転生者の役目じゃないですよ 例えば――― ねぇ、ちょっと‼」
夢見た冒険が出来ないことにテンションがダダ下がりになり、その態度を見て女神が怒ったように食ってかかる だがもう俺には関係のない話だ
「そうか 俺は勇者になれないのか じゃあいいよ 地球で生まれてまた赤ん坊になって頑張りますから せっかくここまで連れてきてくれたのにすいません」
そう言うと女神が慌てだす いちいち動揺するがこの女神はやはり新人なのだろうか
「あのぉ・・・ ちょっと待っていただけます? あなたには転生してもらわないとこちらとしても困るんですけど」
なんで俺がそちらの都合でそんなめんどくさいことをしなければいけないのだろう 能力も人並み以下で隠された才能もなにもない俺に何をしろと言うんだろう
「別に俺じゃなくても問題はないでしょ 俺より能力があって立派な人に頼めばいいでしょ それとも俺じゃないといけない理由でもあるんですか?」
そう迫ると女神は小声ながらも理由を伝えようとする
「・・・・いないんです」
「えっ、なに? もっと聞こえるように言って 大きな声で さあ 恥ずかしがらずに お兄さんに言ってごらん」
そんなセクハラ紛いなことを言いながら促す 恥ずかしかったのか女神は涙目になりながら大きい声で言ってきた
「あなたしか適任者がいなかったんです これでいいですか」
怒りながらそう伝える少女女神 何故だろう 少女が愛おしく感じる これが父性というやつなのだろうか そんなことを思いながらも新たに湧いた疑問を投げる
「なんで俺しかいないんだよ? 俺が適任ならほかのやつができないわけがないだろ 俺の何が適任なのか教えてもらえる?」
「その理由は教えても大丈夫なんですが・・・ 聞きます? 気分を悪くしちゃうと思うんですけど」
「こんな俺が選ばれた理由は聞きたいに決まってるでしょ」
「じゃあ、言いますよ? 怒って掴みかかったりしないくださいよ?」
「分かったから 早くどうぞ」
そのしつこさにどんなことを言われるのかと不安になるが早く言うように促した
「えっと、他人への関心が薄く人を利用することへの罪悪感が少ないのであなたになりました・・・ 立たないで 怖いから一旦座ってください」
物凄いショックを受けた まさかそんな理由で選ばれるとは考えもしなかった しかも少女の姿で言われると精神的に来るものがある
「俺が人間として欠けていたことは認めるけどそこまで非情な人間じゃなかったつもりなんだけどな」
思わず愚痴がこぼれた 女神が慰めるべきかと困ったような顔をしていたが、それに構う余裕はなかった
数分後
「まずそんな人間じゃないと務まらない時点でおかしいだろ これ転生を選んだら絶対めんどうなことになるじゃん 絶対碌な目に合わないじゃん」
ショックから立ち直った俺は女神に抗議する この流れは不幸に巻き込まれる流れだ なんとか阻止しなければ
「いや、大丈夫ですよ あなたならきっと 選ばれたんですから不幸なことになるわけないじゃないですか」
目を泳がせながら女神は言う 嘘をつくならもっと上手についてほしい
「それを俺の目を見てちゃんと言えます?」
「まぁ、それはそれとして 転生はしてくれませんか?」
俺の詰問には触れないことにしたらしく、女神はそうせがんできた
「絶対嫌ですよ そんな選ばれた理由聞かされて行くって答える奴なんていませんよ」
「そうですか それは残念です」
諦めたのか本当に残念な表情をする 自分の身を守るためなのにとてもひどいことをしている感覚になる
大丈夫、俺はなにも悪くない 自分にそう言い聞かせないと心がぶれてしまいそうになる
「それじゃあ、俺は地球で・・・ あの、すいません これはなんなんでしょうか?」
だが、その感情はすぐに消えた 俺を囲むように檻が現れたのである 俺もここへ来たときもこんな感じだったのだろうか
「本当に残念です こちらとしては合意の上でやりたかったんですが、仕方がありません」
えっ、この子なに言ってんの? やばいって この流れはシャレにならないって
「あの、女神様? 聞こえてますか? なんで本を手に取るんですか? 俺に何をする気ですか?」
必死に女神に呼び掛ける だが、女神は声が聞こえたないようにふるまう
「あなたに祝福を授けました これであちらの世界の言葉を全て理解し、話せるようになったでしょう 宮下健太さん これからとても大変な道のりになるでしょうが、頑張ってください」
ふざけるな こんなめんどうごとに巻き込まれてたまるか
「違うよ 違うから待って 話し合おう? まず目的が―――
俺は尚言葉を投げかける だが最後まで女神には届かなかった
「あなたが全てをやり遂げた時 天から祝福を与えられるでしょう それではまた会える時を心待ちにしております」
女神がそう言い終え 景色が変わる 俺は女神を呪いながらまだ見ぬ異世界への覚悟を決めることになった




