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俺、テイムされます - オオカミシェフの異世界漂流記 -  作者: たかじん
第2章 アルベルノ王国《王都マクスウェル》
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第12話「城下町の幽霊屋敷」

今回やっと一番書きたかった女の子の登場です。

この子書くために今まで書いてきたと言ってもいい。。長かった(14万文字

 ティアの使い魔になってひと月がたった。

 変わったことといえば、夕飯を一品だけ作るだけだった俺の仕事が、いつの間にか全品作るようになっていたことだろうか。

 もともといた料理人たちは朝食とティータイムの間食を作る程度で、結果的にほとんどの仕事をとってしまった形になる。


 正直、少し心苦しい。

 まぁ彼らも彼らで面白くないのか、チマチマとした嫌がらせをしてくるので、あまり同情の余地はないのだけど。

 まったく、悔しいなら実力で奪い返せばいいものを。


 ......いや、違うか。

 俺にとってこの世界が異世界なように、元の世界の料理はこちらでは異世界のものだ。

 当然目新しいだろう。

 何より世界中の情報が簡単に手に入る情報社会で、蠱毒のごとく混ざり淘汰され研鑽された現代の料理技術が、中世レベルの食文化に負けるわけがない。


 魔術と違い料理の腕は俺が人生をとして手に入れたスキルだ。

 安売りはするつもりはないし、卑下するつもりもない。

 それでも立ち位置からして俺にとって優位な土壌が整い過ぎている。

 あまり上から目線な考え方をしてはいけないだろう。


      ※


 ともあれ現在、俺はとある問題に直面していた。


ヴィート(小麦粉)がない?」

「ひぅっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


 怒られたと思ったのか涙目で頭を上下に振るルナ。

 振りすぎてヘビメタのライブ客みたいになっている。


「いやいや、怒ってないから理由を教えて?」

「うぅ......朝は確かにあったんです」

「うん、でないとパンティーを焼けないもんね」


 ふむ、まいった。

 今晩は揚げ物をメインにしようと考えていたので、ヴィートがないと非常に困る。

 どうして朝にあったものが夜に無くなって......ん?


「......ルナ、確認なんだけど、今朝の朝食を作ったのは誰?」

「えと、えと......あ」


 名前を思い出してルナも気づいたらしい。


「テレサ料理長、です」


 まぁ、十中八九それだな。

 どうやらこれも嫌がらせの一環らしい。

 まったく陰険な女だ。見た目は美人なのに勿体ない。


「ま、ないものは仕方ないか。一応許可をもらいにティアのところに行ってくるから、その間にルナは他になくなってる食材のチェックお願いできる?」

「? えと、どうするんですか?」

「ないなら買いに行くしかないだろ」


 というわけで俺たちは街の市場へ向かうこととなった。


     ※


 マクスウェルの市場は平民居住区・工業区・貴族区すべてにある。

 ただその規模や質や品ぞろえは大きく異なる。

 今回俺たちがやってきたのは貴族区の市場。


 市場......なんて言うが、露店があるわけではない。

 通りに面する店全てが店になった、どちらかといえば商店街に近い。

 当然客層を考え商品のグレードもお値段も他とは数段上だ。

 中には「これってほんとに標準価格?」と言いたくなるようなものもあるが……。

 まぁそこは貴族が相手の商売。

 多少高くても見栄を張るのが俺の知る異世界の貴族像だし。

 むしろ高いことに意味があるみたいなところがある。

 だからこれでも商売は成り立つのだろう。


 さて、そんなわけで俺たちは市場にやってきた。

 買い出しメンバーは俺、ルナ、テリア。

 そしてなぜかついてきたティアである。


「へぇ! すごい賑わいねぇ」


 市場に足を踏み入れたティアの第一声は、お上りさんの田舎娘みたいな台詞だった。


「ティアは市場に来たことがないの?」

「ええ、機会もなかったし必要もなかったからね」


 当然ように言われて、改めてこの子が王族だと理解する。 

 どうやら出会う前のティアは想像以上の箱入り娘だったらしい。

 まぁその箱に収まりきれずに飛び出しちゃったみたいだけど。


「さて、じゃあ何を買うの? 荷物持ちくらいしてあげるわよ?」

「そんな! ミーティア様に下々の仕事をさせるわけには!」

「いーのよ。ちょうど息抜きが欲しかったところだし、こういう経験も新鮮でいいわ」


 恐縮しきりなルナと珍しく表情豊かに生き生きとしたティアがじつに対照的だ。

 ただし、なら目立たないのかと言われればそんなわけがない。

 なにせ二人とも違った意味で花がある女の子だ。


 ティアは王宮での派手な服とは違い落ち着いた赤を基調とする格好。

 素材の良さは言うまでもないし、もとの良さを引き立てる一着といったところか。


 いつも地味なルナも今日は空色で明るい私服姿。

 見た目の花ではティアに勝てなくても大人しい見た目とは裏腹につき出した二つの果実に男の視線をバキュームしていた。


「二人とも今日はオシャレでかわいいね」

「ふぇ!?」「でしょ?」


 ボンと瞬間沸騰して照れるルナに、自慢げにクルッと回って見せるティア。

 こんなところまで対照的な二人だった。

 とにかくこれだけ目立つ二人ならはぐれることはないだろう。

 視線が低い分、俺の方がはぐれそうまである。気をつけねば。

 これで人の体なら手を握る口実くらいにはなったのだろうけど、まぁ贅沢は言うまい。


「それで何を買うの?」

「ヴィートだよ」

「......ふーん」


 あ、今のふーんは何かに気づいたふーんだ。

 こう毎日顔を合わせていればだんだんと表情が読めるようになってきた。

 というか、今の言葉から何に気づいたんだ?

 さすがに嫌がらせまではわからないと思うんだけど。


「えとえと。あ、この店ですね」


 ルナのエスコートで目的の店に到着。石造りの立派なたたずまいだ。

 似たようなたたずまいの店が多い中、どうしてこれが目当ての店だとわかったのか少し気になったけど、なんのことはない。

 店にはそれぞれ紋があり、それで何屋さんなのかを判断できるようだ。

 店内に入るとどうやら粉ものをはじめ穀物を専門にする店らしい。

 特有の芳ばしい香りと乾燥した空気が出迎えた。


「いらっしゃいませお嬢様がた」


 ニコニコと出てきた店主の目が俺で止まり迷惑そうに細まる。


「申し訳ありませんが、ペットのご入店は......」


 む、そりゃそうか。いくらなんでも食べ物に獣はご法度だよな。

 調理場に入る機会が増えて、すっかり失念してしまっていた。


「悪い、そういうことみたいだから僕は外にいるよ」

「了解」

「ルナ、せっかくだし厨房にない珍しい食材があったら買っといてもらえるか?」

「はい、わかりましたマスター」


 そんなわけで二人と別れて再び店の外へ。

 さて、すっかり手持無沙汰になってしまった。

 時間がかかるとは思えないし待っていてもいいけど、ちょっと勿体ないよなぁ。

 なにせこんな風にゆっくり外に出るのははじめてのことだ。

 せっかくなら観光がてら街を見て回りたい。


「石と木組みの街並み、元の世界だとストラスブールとかそのあたりが近いな」


 白い石畳の道はよく整備されていてゴミすら落ちていない。

 ここら一帯だけではない。平民居住区以外すべて石畳だ。

 道幅も一〇メートル近くあることを考えると、ずいぶんな労力をつぎ込んで作られたのだとわかる。

 維持費もかなりのものだろう。


 しかもマクスウェルは国の首都だけあってその面積はかなりある。

 正直、歩く分には土道でも問題ないし無駄な労力に思える。

 平民区は土がむき出しだったことを考えると、やっぱり見栄えの問題だろうか?

 疑問の答えは近づいてくる馬車を見て察した。


 なるほど、こちらの一般的な交通手段は馬車だ。

 貴族区は移動手段として、工業区は物資運搬のため。

 頻繁につかう以上、木製の車輪を転がすなら重さで食い込んでしまう土より石の方がいいのだろう。


「なにか珍しいものでもあったかい?」


 ぼーっと前を通り過ぎていく馬車を見ていると、毛から顔だけ出したテリアが話しかけてくる。

 目玉のお父さんみたいでちょっとかわいいな。


「んにゃ、街中でも馬車には護衛がついてるんだなぁと思ってさ」


 説明するのも面倒なので、適当なことを言ってごまかすことにした。

 屋根付きの荷台を引く馬車は街中だからかゆっくりとした速度だ。

その横を全身フルプレートな巨体が歩く光景がじつにファンタジーしている。


 護衛は彼だけではないようで、荷台には魔法使いみたいなツバ付き帽子をかぶる魔術師と、その横で何かしゃべっては豪快に笑う軽装の女の姿もある。

 見た目からシーフとかそんな職種かもしれない。

 パーティーというやつだろうか? 

 まじめな戦士とマイペースな魔術師、ムードメイカーなシーフて感じかな?

 こちらもすごいファンタジー感のある光景だ。


「商品を店へ安全に届けるまでが仕事だからね」

「なるほど、帰るまでが遠足ってことか」

「えん、なんにそれ?」

「遠出して休日を自然の中で過ごすことだよ」

「それって楽しいの?」


 よくわからないとテリアが首をかしげる。

 まぁ街から出れば辺り一面野原だからな。

 年中遠足みたいなものだしわからんか。


「彼らは冒険者みたいだし、トラブルに巻き込まれて報酬をケチられたくないんじゃないかな? あの人たちの仕事って信用第一だし」


 ほほう、冒険者とな。


「どうして冒険者って言い切れるんだ?」

「胸にプレートを下げてるだろう? あれが証なんだよ。彼らは鉄だから中堅だね」


 言われてみると二枚一組のドッグタグみたいなプレートを首から下げている。

 どうやら冒険者の身分はプレート材料で証明するらしい。

 


 まず最上位から白金、二位の金、三位の銀。

 ここまでが高級冒険者で一握りしか到達できない凄腕揃いのバケモノ揃いなのだとか。


 次点に、四位の玉鋼、五位の鋼、六位の鉄。

 いわゆる中堅だ。もっとも忙しく仕事にあふれているのもここらしい。ベテランというやつだな。どこの世も超一流より一流くらいが丁度いいようだ。


 最後に七位の青銅、八位の銅、九位の木板。

 駆け出しに属する新米。仕事もお遣いや人探し、街の清掃や店番といった雑用ばかりで、聞いた限り冒険者っぽくない。どちらかといえば何でも屋って感じだ。



 以上、九階級でわかれている。

 そうすると鉄等級というのは確かにギリギリ中堅ということになる。

 見た感じ戦士は顔が見えなかったけど、残り二人は若かったし、もしかすると冒険者の中でも将来有望なパーティーだったのかもしれない。


「ま、縁のない話しだと思うけどね」

「だろうな」


 なにせ俺は使い魔でご主人は女王様だ。

 でも......いいなぁ冒険者。

 こう、ザ・ファンタジーって感じがしてワクワクしてくる。

 彼らもダンジョンにに潜って宝物を探したり、未踏の秘境を見つけたりしているのだろうか?

 うーむ、怖くはあるけど、ちょっと......いや、かなり――


「でも憧れない?」

「冒険者に憧れるなんて、相変わらず変わってるなぁ」


 俺のキラキラした視線に気づいたのか、テリアが苦笑混じりに言う。


「そうかな?」

「誰も好き好んでその日暮らしで命がけな仕事なんてしたがらないと思うよ?  冒険者なんて専門の職にあぶれた人や、家を継げない下級貴族の三男とかがなるものだし」

 ......ふむ。

 どうやら冒険者と言えば聞こえはいいけど、ようするに仕事にもつけなかった人たち集まりのようだ。

 ハ○ーワー○みたいなものかしら?

 あぶれた労働力を一つに集めて『冒険者』というステッカーを張って一定の信用と価値を付与し食い扶持を確保する組織。

 極めればひと目おかれるって感じだろう。


 ......でもそれって、どの職にも言えることだよな? 

 うーん、夢も希望もない。


 まぁファンタジーな世界って言っても、こっちではそれが現実だから仕方ないか。

 何事も安定が一番ってことだな、うん。

 そんなことをしているうちに結構な時間がたっていることに気づく。

 二人の買い物もそろそろ終わるころだろうか? でも女の子の買い物だしなぁ。

 そう思いつつ、通りに背を向け店の扉へ振りかり――



「――……ん?」



 ふと、誰かに呼ばれた気がして再び通りを見る。

 でも変わった様子はなく、ぽつぽつと人が歩いているだけだ。


「どうかしたの?」

「いや、気のせいかな」


 首をかしげる。なんだろうこの感じ。

 名前を呼ばれた感じではない。

 どちらかといえば肩を叩かれたような感覚だ。

 でも、実際は誰もいなかったわけで。

 そもそも呼ばれたというのがおかしい。

 王宮生活が基本の俺には当然知人なんていない。

 見た目が犬だから動物好きなお嬢さんに声をかけられた可能性は微レ存ありそうだけど、残念ながら視界の中にそれらしき人物はいない。本当に残念ながら。


 でも、だったら、どうして。

 どうして今も見られているような気配を感じるのだろう。


「......もしかして、狙いは俺じゃなくてティアだったり?」


 可能性としてはあり得る。

 むしろこれしかないだろう。

 マクスウェルは治安のいい街だ。でも犯罪がゼロかといえばそんなわけがない。

 人が集まればそれだけ治安は悪くなる。

 こればかりはどうすることもできないことだ。

 実際、華やかなマクスウェルだが、平民区の端にはスラム街が存在すると聞く。


 ここは貴族区、街の中でも特に治安のいい区画だ。

 それでもここにいるのは第二王女。

 無理を通して道理を蹴っ飛ばした犯罪者が、警備の網を抜けてひそんでいてもおかしくない。

 それだけの危ない橋を渡る価値を、ティアは持ってしまっている。


「一応確認しておくか」

「ウィルくん?」


 俺の雰囲気が変わったことに気づいたのか、テリアの不安げな声が聞こえた。

 それを無視して俺は視線を感じる方へ歩きはじめた。

 店の間の路地に入り、再び大通りに出てはまた路地裏へ。

 しばらく歩くと雰囲気が変わった場所に出た。

 一つ一つの家の敷地が広い。

 家というより屋敷だ。

 庭には俺なんかよりよっぽどオオカミらしい大型犬が放し飼いされていた。番犬か。

 貴族停だ。おそらくここは貴族の住居区なのだろう。

 俺は豪勢な家々を横目にさらに歩を進め、貴族区の端、街を囲う城壁を背に建つ一軒の屋敷の前で足を止めた。


「ここだ」


 その屋敷は貴族区のどの屋敷より大きかった。

 しかしどの屋敷よりも貴族らしくなかった。

 生い茂る草と蔓。玄関の門は意匠こそ繊細だがそこかしこに錆が浮かびボロボロだ。

 広い敷地は土が捲れ雑草だらけの荒れようで、周囲に家はなくここを避けるようにぽつんと立っ

ているため、あたりはシンと静かでもの寂しい。


 幽霊屋敷。

 そんな言葉が頭をかすめた。


「なんだか気味悪いね」

「だな」

「ウィルくんはここにようがあるのかい?」

「いや、そういうわけじゃないけど」


 なんとなく足が向いただけのため、何と話せばいいのかわからない。


「じゃあもう行こうよ。きっと二人も待ってると思うよ?」

「......だな」


 奇妙な気持ち悪さはまだあった。

 でもそれ以上にここに足が向いてしまった自分に気持ち悪さを覚えた。

 あまり長居しないほうがいいだろう。

 そう思い屋敷に背を向けた時だった。


「ウィルくん!」


 テリアの声に弾かれるように振り返る。

 さっきまで無人だった門の前に人が立っていた。

 正確には人のようなものが立っていた。

 背は一九〇センチあるだろう巨体だ。肩幅の広さから男であることは間違いない。

 だがそこからしか性別がわからないのは全身を鎧で覆っているからだ。

 しかし先ほどの冒険者の戦士とはあきらかに違う。

 細部まで意匠のこらした彫刻。無骨さを感じさせない白一色のフルプレート。肩から背を覆う青色のマントは足元に届きそうで、その造りもまた絹とは違う深みのある光沢がある。


 白騎士。


 彼をあらわすならこれほどしっくりくる言葉はない。

 だが、なにより彼を警戒してしまったのは、


(こいつ、ヤバい)

 ファウル、ティア、フレイア、ガブリエル。

 この世界にきて底知れない強者を何人も見てきた。

 中でもフレイアの鍛練に付き合うようになって、彼女の本気の片鱗はすでに何度か見ている。

 彼女は手加減がどーも苦手らしくて、そのたびに恐怖で震えたものだ。

 生き物としての格の違いとでも言うのだろうか。

 サバンナでライオンに遭遇したガゼルはきっとこんな気分になるのだろう。


 それを踏まえたうえで、目の前の存在が一番ヤバい。


 きっと腰に下げる大剣に手をかけた瞬間、俺の首が飛ぶ。

 そう確信してしまうほどの凄味がこの白甲冑にはあった。


「ウィルくん」

「ごめん、無理」


 逃げた方がよくない? と震え声で言うテリアを見ずに答える。

 目を逸らせない。というか逸らすのが恐ろしい。

 視界に納め続けるのも恐ろしいが、かと言って動くのはもっと恐ろしい。

 このままでは日が暮れてもこのにらめっこは続くだろう。そんなことを考えはじめるくらい時間がたった時、唐突に白甲冑が一歩下がったことで時間が動き出す。


「へ?」


 巨体の甲冑の後ろには老執事と小柄な少女が隠れていた。

 老執事と言ったが、その姿は老いてなお現役と言わんばかりに精悍で、肉体も衰えていないように隆起した筋肉が執事服を下から押し上げている。紳士というより老兵だ。

 凄味という意味では白騎士の方が上だろう。だがどちらもあまりに高みすぎて、差がどれだけあるかなんてわからない。


 そしてもう一人。

 落ち着いたたたずまいからは幼さは感じない。歳はたぶん中校生くらいの女の子。

 ただクールと言うには雰囲気がいささか冷たすぎる。

 人形かと思うほど整った顔立ち。

 黒一色の喪服のような服装なのに、彼女の病的に白い肌も相まって夜の雪を連想してしまう。

 そんな少女。


「あなたがウィルディー?」


 温度を感じさせない少女の声が響く。

 同時にガシャンと、金属がぶつかる音が聞こえた。

 彼女の背後からもう一体、全身甲冑の男が現れたのだ。

 こちらは全身が黒。

 フルフィエスの目に当たる部分だけ赤い光が灯り、その双眼が俺を射抜いている。


(白甲冑と同格がもう一体って......マジかよ)


 なんだか自分がヤ○チャにでもなった気分のインフレーションに笑ってしまいたくなる。

 しかしそんな化物三人は俺たちに危害を加えるどころか、その場に膝をつく。

 その中心にいるのは、件の黒い少女。


「私はアクア。アクア=プラネット」


 まるでかしずくような黒と白と老執事を従え、少女――あらためアクアは、スカートの裾を軽くつまみ一礼。


 その優美な所作に息を飲むのも束の間。

 相変わらず温度のない淡々とした口調のまま、


「あなたと同じ、転生者」


 この世界にきて最大の爆弾を投下した。

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