プロローグ「こうして俺はオオカミになった」
しばらく日刊で頑張っていきます
――これはいったいどういう状況だ?
目の前の原生林を前に考えを巡らせる。
もちろん俺にこんな場所へ来た記憶はない。
そも、手付かずの森に入ろうなんて人間、現代日本では時代錯誤なもの好き冒険家か、自殺予定者くらいのものだ。
生憎俺にはどちらの予定もない。
代わりに思い出すのは学生時代に飽きることなく暴飲暴食の限りを尽くしたアニメやゲームの世界だ。今でこそ忙しくて疎かになっているが、俺はこの手のものに目がない。
どれくらい目がないかといえば、俺が店長を務めるレストランの厨房では、客室には聞こえないボリュームでゲーム実況動画を垂れ流すくらい目がない。
いやほんと。実況動画を聞き流しながらの作業の捗り方は異常。
ともあれ、その知識と目の前の光景を照らし合わせ照合する。
深い緑に覆われた湖で喉を潤す一本角の生えた白馬。
草木のトンネルで戯れる蛍を大きくしたみたいな謎の発行体。
森の隙間から覗く青空には空を飛ぶ巨大な生き物の影が見えた気がした。
「きゅーん」
現実味のない現実の光景に驚きが声になった……はずがなんか変だ。
なんとなしにやたらと重い体をねじって湖を覗き込む。
そこには映ったのは、愛くるしくつぶらな瞳、少し尖った口元、恥かしがり屋さんみたいにちょこんと覗く鋭い犬歯がじつにチャーミング。
少し荒々しい灰色の毛並みが特徴的な小型犬の姿だった。
間違えても今年で四捨五入すると三〇台を名乗れなくなる自分の顔ではない。
――なるほどなるほど、つまりこれはそういうことなのかな?
ゆえに確信した。
――さてはここ、ファンタジーの世界だな。
※本来の第1話は長すぎたのでプロローグ短くしましたb