表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

蝶を吐く

作者: からす

山も谷もオチもない

タイトル:蝶を吐く


「変態」という言葉を聞いて、あなたはまず何を思い浮かべるだろうか。

鞭でぶたれて喜んだり、異性用下着を着用して息を荒げたり、そんな犯罪臭のする光景を思い浮かべただろう。全く間違いじゃない。普段この言葉を使うときには、まずそちらの意味を指すのだし。

もう一つは普段日常生活で使うことは、まずないと思う。


ただここから先で使われる変態はそっちの意味ではなく、芋虫がさなぎになり、さなぎから蝶になる方の変態だから気をつけて読もう。


2017年では、人間が変態する奇病が世界中で流行した……こう書くと非常にいやらしい意味に見えるがそうではない。

ある日の朝、子供が起きてこない、親が起きてこない。疲れて眠ったり、遅くまで起きていたらよくあることだ。そして誰かが「寝坊したのかな?」と様子を見に行くと、ベッド(布団)の上には不透明な人間の形をした殻が居座っている。

それはさなぎだ。刃物で突いても切ってもビクともしない頑丈なさなぎ。そしてそのさなぎは、およそ一週間前後で羽化するのだ。

羽化して出てくるのは、体だけで拳ほどの大きさのある蝶。羽を広げるとなんと一メートルにもなる。

それはヒトのさなぎから出てきたものであっても、生態は蝶以外の何物でもなく、動きも大きな羽を優雅に羽ばたかせて飛び回り、食性も花の蜜を吸う、まさに蝶であった。

模様や色は個体ごとの差が極めて大きく、元となった人間の年齢が若く、健康状態が良いほど美しい傾向があるそうだ。


元となったさなぎは、羽化した直後に人間としての活動を取り戻す。体の変化は、羽化するまで一切食事を摂らなかったことによる軽度の栄養失調だが、少しの静養だけで日常生活を送れるまで回復するのだとか。


病気の発生原因は全く不明で、感染経路も謎。この謎の病気は、さなぎから羽化する際に口から出てくるのが、まるで蝶を吐いているように見えるため、蝶吐き病と名付けられた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 短編はあまり見ないのですが、烏さんのは安心して見れます。お疲れ様です。 そういえば、設定が幸福に至る病という作品と似ていますね。意外と似たような設定を考えてしまうものなのですね。(他意は無い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ