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舞台裏

「お疲れ様です。」


 一度館内へ顔を出し騒ぎすぎていた新入生達の気を引き締め直した嵐子(らんこ)は、準備のため舞台袖にある控室へと入りまだその場に留まっていた2人へと声をかけた。


「お疲れ。ずいぶん遅かったね?」


嵐子に挨拶を返すと、“筆頭騎士”ヴァンは新入生達の休憩時間が長くなってしまった理由について尋ねた。


「トラブルを先に解決していただけですよ。問題ありません。」


「くはは!どうせ奴だろう?それは問題を先送りしているだけじゃあ無いか?」


嵐子の答えに笑いながら疑問を挟むのは、赤い顔をしたこの施設の最高責任者“学長”宮本 (げん)だ。


「学長、また酒を飲んでいたんですか?」


「慣れん事をした後だ、見逃せぃ!」


 空いた酒瓶を見つけ咎める嵐子に、厳は少しも悪びれる様子もなくコップに新たな酒を注ぎ一気に飲み干す。嵐子が何故止めなかったのかとヴァンに抗議の視線を向けるが、ヴァンはこっちも困っているんだと肩をすくめて見せる。


「・・・こんなものを見られたら、先程の演説も意味がありませんね。」


 体育館の外まで聞こえてきた歓声を思い出し嵐子は溜息を吐き頭を押さえる。ついさっき、真摯な態度で自分たちに頭を下げ感謝するとのたまった本人が直後に酒を飲み酔っぱらっていると知れたら、せっかく生まれた新入生達の覚悟に水をさす事になってしまう。


「くははは!!こんな老いぼれが頭を下げるだけで生まれた覚悟などただの種火にすぎんよ。その火が大きな炎になるかは実際の戦場に立った後の彼ら次第といったところだろう!?」


「その種火も消えてしまうって言ってるんですよ!このくそジジイ!」


「まあまあ、嵐子さんは早く準備しなきゃだろ?学長はボクが部屋までお連れするから。」


まったく反省の色を見せない厳に嵐子が苛立ちを隠しきれなくなってくると、すかさずヴァンが仲裁に入った。


「それに、種火を消さずに立派な炎に育てるのも“筆頭”の称号を得たボクたちの仕事だ。違うかい?」


「・・・はぁ。それでは私は行きますので、学長をよろしくお願いします。」


ヴァンの仲裁に嵐子は冷静さを取り戻し、深呼吸すると控室から数個の道具を手に取りステージへと向かっていく。


「くはっはは!!こんな頭でよければいくらでも下げてやるから、火が消えてしまったならまた言うがいいわ!!」


 豪快に笑いながら背中にかけられたその言葉に、嵐子は振り返るとニッコリと微笑む。


「ヴァンさん?早くそれをもっていってもらえますか?」


その冷たすぎる微笑みを見たヴァンは、厳の口を塞ぐと嵐子が手にした道具がミシミシと音を立てるのを聞きながら部屋を後にした。


「まったく、上層部の人間はどうしてこう変人ばかり・・・」


扉が閉まるのを確認し、嵐子は今度こそ新入生達のまつステージへと歩みを進めた。

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