休憩時間
筆頭騎士ヴァン・ペンドラゴンによる、現在の敵の侵入経路や、人類代表の三人の王の事、そしてこれからの目標が語られた会場は、次の行程を行う人物が現れるまでに、少し時間がかかるとの事で、新入生達には休憩の時間が与えられていて、これまでの話の興奮を他と分かち合う者や、トイレ等で席を外している者等に分かれていた。
「くかー・・・・」
「はぁ~・・・」
そんなガヤガヤとした騒ぎの中、シールは1度目を覚ましたものの、寝たりなかったようで信の肩に額を当て眠っていて、肩を枕替わりにされている信は、もうシールをどかす気力も無いのか、疲れた顔で下を向いていた。
「仲がいいねぇ~」
そんな2人に前の席から声が掛けられ、信がのろのろと顔を上げると短めの髪に軽くパーマを当てている感じの女子生徒が、信達2人の事を興味深々といった様子で見つめていた
「ハロ~、ねぇねぇ2人って付き合ってるわけ?」
「・・・ちがいます」
いきなりのストレートな質問にかかわるのは面倒と判断した信は、素直に答えを告げて会話を終わらせようとしたのだが・・・
「え~マジで!?こんなくっついてんのに!女子がこんな隙を見せるのってあんまりないよ?2人ってどんな関係なわけ?」
「ぐいぐいくんな!?何、新聞部にでもはいんの?あと、こいつ少し心を開いたら大体の奴にはこんな感じだから!」
少しも引かずに話しかけてくる相手に信も観念したのか、多少やけっぱちな感じで答えを返していく
「ここって新聞部とかあんの?あったら入りたいけどね~」
「戦場情報とかをまとめるような役職なら確かあったと思うよ。」
「お、マジ?イケメン君、予習とかしっかりやるタイプなんだ。」
「一応ここの案内書なら一通り頭に入れたよ。僕は颯そっちのが信で、寝てる子がシールだよ。よろしくね」
それまでくすくすと2人の会話を見ていた颯は、彼女の疑問に答えると自分たちの紹介を終え、爽やかに微笑み右手を差し出した
「よろしく~。あたしはカグヤ。これから同じ学び舎に入るわけだし仲良くしてね~・・・ってわけで」
自身の紹介を終わらせると、突然隣に座る男子生徒の頭をつかみ、無理やりこちらに顔を向かせるように回転させた
「づっ・・・」
突然首に負荷がかかった男子生徒はもちろん、信と颯の二人も突然の暴挙にでたカグヤに理解が追い付かないでいた
「いや~こいつリョウってんだけど。どーにもその子が気になるみたいでね。こいつとも仲良くしてもらえるとうれしいかな~」
「げほっ・・てめ、何言ってんの!?別に気になってねーし!?」
寝ているシールの方をちらりと見ながらそう告げるカグヤに、首を抑えうめいていたリョウというらしき生徒は顔を赤くしながら抗議する
「何いってんの。さっきから変態みたいにちらちら後ろ見てたじゃん。あんたが変な行動に出る前にあたしが確認しといてあげてんじゃない。」
「!?!?」
自身の行動を見られていたことか、それともカグヤの行動理由が理解できないのかはわからないが、リョウは髪をがしがしと掻きながら無言の叫びをあげる。
その2人の様子を見て、信達はカグヤの騒がしい今時女子とゆう評価をお節介なお姉ちゃんキャラへと変更していた。
「むー・・・うるさい・・」
かなり騒がしく話していたためか、寝ていたシールが目を覚まし、目を制服の袖でぐしぐしと擦りながら抗議の声を上げる。
「お!いいところで~。ねぇシールちゃん、今誰か好きな人とかいたりする?」
またもやストレートに質問するカグヤに、信達は呆れを通り越して若干関心しはじめる。そしてシールはまだ少し寝ぼけているのか、質問もよくわかっていないような感じでむにゃむにゃと口を開いた
「あたしは・・信から離れられないから・・・」
その質問の趣旨とは若干違うようなシールの答えに、信はしまったという顔で冷や汗を流し、颯はぶはっと噴き出す。
そしてシールへの質問の辺りからうめくのをやめ、シールの答えに耳を傾けていたリョウは、ボディブローでも食らったような感じで椅子へとくずれおちる。
「キャー!何、調教済み!?さっきはあんなこといっといてもー!」
「違ぇから!付き合ってるとかそんなことじゃ無いから!ってか調教とかアホか!?」
「え、じゃあ片思い!?片思いなの!?」
「近ぇよ!?おいシールお前からも・・・」
だんだん興奮を大きくしながら近づいてくるカグヤに、焦りながら反論する信はシールに助けを求めるが
「すー・・・」
「おおぃ!?シールさん!?」
再び寝息をたて始めたシールに絶望し、どう反論しようか考えていたが
「五月蠅い、少し騒ぎすぎですよ?」
「!?」
後ろの扉から入ってきたと思われる女子生徒の声に、思考を停止させられた。
「ねえ信、私言いましたよね?とりあえず入った最初位はおとなしくしてなさいって。」
「いや、あのこれは俺のせいってゆうか・・」
と信を知っているらしきその声に、力弱く反論しながら一緒に騒いでいたカグヤらを見るが、声の主が信に注目している間に、カグヤは自分の席に座り前を向いていて先程まで寝息を立てていたはずのシールまでもが普通に席に座っていた
(こいつら!)
自分を生贄にした者達に対する怒りがこみあげてくるが
「すんませんした!!」
これ以上の言い訳は逆効果だと判断し、後ろに向き直り声の主に力強く謝罪する
「はぁ、信、顔を上げなさい?」
若干柔らかくなった声に、信は恐る恐る顔を上げた
そこには、長い金髪を頭の横で結ぶサイドテールにし真っ赤な制服に身を包んだ美女がニッコリと微笑んでいた。
「嵐姉・・・」
信がその笑顔に安心していると、突然目の前が暗くなり館内にパアンと甲高い音が響き渡った
「がはっ・・・!」
気付けば信は尻餅をついており、ジンジンと痛む目を開くと、いつの間にか巨大なハリセンを振り切った体制の美女がそこにいた
「信、あとでもう少しお話しがあります。そこの寝ぼすけも連れて私の所に来なさい。」
その言葉にシールがビクッと反応し、冷や汗を流す
そして彼女、“筆頭魔術師”佐々木 嵐子はハリセンを光へと戻し、檀上へと向かいながら宣言する
「みなさん、休憩時間は終了。これより適正診断を始めます。」
その声は決して大きな声では無かったが、ハリセンのやり取り等で彼女らに注目していた新入生達全員の耳に届いたのだった。