主人公たち
神話が再開してから2000年程が経ち、当時の事を直接覚えている者もいなくなり再開の物語は、かつての神話のように書物によって記されるのみとなっていた。しかし、かつてとの違いは全ての人々が神話が事実であることを理解し、またいつ自身が物語に巻き込まれるか分からないとゆうことだろう。
そして、そんな時代にも春という季節は訪れ新たな物語が始まる。
【第一対魔学園・入隊式】
そう書かれた看板を前に、黒い髪を短く揃えた青年 大和 信は短く溜息を吐いた。
「はぁ~、入隊式って、せめてそこは入学式とか明るい言葉が欲しい・・・」
そんなことをぶつぶつと呟いていると、信の頭がスパンとはたかれた
「いって!?」
頭をさすりながらはたいてきた相手の方を恨みがましい眼をしながら振り向くと、そこには赤みがかった髪を腰まで伸ばした小柄な女子が信を睨んでいた。
「ぶつくさうるさいのよ!入隊式でも入学式でもやることは一緒でしょうが。」
「いや気分って大事じゃね?シールだってこんな軍服みたいな制服嫌だろ?」
信の言うとおり、彼らの来ている服はこれから学園に入ろうという若者が着るには少々かっちりしすぎており、どちらかといえば軍人のような職種の人たちが着る服に近かった。
「あたしは気にならないけど?普通の学生服着て教室でじっとしてるより、全然マシじゃない?」
シールと呼ばれた少女は、少し大きいのか袖が余っている制服を気にする事も無く、それより初めて訪れるこの場所の方が気になるようできょろきょろと周りを見回し始めた。
「ねえ、あのでっかい銅像何?」
シールの答えに若干呆れつつも、多少はそれもそうかと考え直していた信は彼女のその言葉に、彼女の視線を追いかけその巨大な銅像のようなものを発見する。
「何だあの趣味悪い銅像。」
「あれは僕らに力を与えることを最初に提案した、プロメテウス神の像だね。」
シールの問の答えを知らない信に代わり答えを口にしたのは、その隣に立つ長めの金髪を後ろで結んだ線の細い中性的な顔をした学生だっただった。
「さすが颯、何でも知ってんな。」
信の関心したような声に、颯と呼ばれた学生は苦笑し
「いや、これ知ってない方がレアだよ?算数とかよりも常識的な問題だと思うけど。」
「・・・そーかい、ま、そーゆうのは颯に任せるわ、にしてもこれがプロメテウスねえ。」
その言葉に颯はあきらめたように息をはき、時計を見る。
「じゃそろそろ移動しようか、式が始まる時間だよ」
その言葉にプロメテウスの像を苦々しい目で見ていた信は、周りをみると先程まではちらほらと歩いていた人影が無くなっていることに気付く。
「へいへい、おいシール移動するってよ・・・シール?」
呼びかけても反応がない事を疑問に思いシールのほうをみると
「・・・・・むー。」
シールはプロメテウスの像をまるでゴキブリでも見つけたかのような目で見て、持っていたカバンの中からマジックを取り出すと
「・・・ちょっとあれに落書きしてきていい?」
「多分、あれめちゃくちゃ高いからやめときなさい。」
信は今にも銅像にイタズラしかけないシールの首をつかみ、式典会場へと向かう颯の隣まで引きずっていく。
「高いからダメなものでも無いと思うけどね。」
颯はそう言いつつも特に怒ったりすることなく、今日何度目かの苦笑をこぼす
「あ、そういえば」
「「?」」
会場の入り口付近で、颯は急に立ち止まり信とシール、二人の背中側に周ると
「ここ、確かに実践がメインだけど普通に座学もあるからね?」
少しイタズラっぽい笑顔を浮かべた颯は、二人が逃げようと行動にでる前に式の会場へと二人を押し込んだ。