プロローグー神話の再開ー
始まり、あるいは再開は2000年程前のことだっただろうか、それまで多くの国にわかれ長い年月を争いながら過ごしてきた人類は争いをやめ、1つにまとまった。
しかしそれはどこかの強国が争いに勝利したわけでも、全ての国が和平を結んだわけでもなかった。
人類の争いを止め1つにまとめたのは人類ではなく、人類が争っていた最も大きな戦場に《それ》は何の前触れもなく現れた
《それ》は強い国も弱い国も関係なく全てを破壊した。
《それ》は人類が観測した事のあるどの生物とも違うカタチをしていた。
《それ》は観測されたことは無かったが、ほぼ全ての人が正体を理解できた。
《それ》は人類が大昔から語り継ぎつつも、その存在を認めてはいないものだった。
《それ》は人類が語り継いできた『神話』に登場する魔物、あるいは悪魔と呼ばれる存在だった。
空をドラゴンのような魔物が飛びながら戦闘機に炎をあびせ、頭に角のようなものが生えた2mを超えた大男が人の軍隊を紙きれのように投げ飛ばしていた。
そんな状況で同じ人類で争っている場合では無いとの判断からか、全ての国が争いをやめ魔物たちへの対処へと向かって進み始めた。
しかし肉体的な強さはもとより、まるで魔法のようなものまで使う相手に、もともと争っていてさらには扱う言語も違う人類がまともな連携をとれるはずもなく、対処は後手にまわることになり人類はその数をどんどん減らしていった。
その状況を遥かな天上より眺める⦅彼ら⦆は嘆き深く悲しんだ。
⦅彼ら⦆が地上に降り立てば、魔の者を打ち倒し人類を救うことも可能だが⦅彼ら⦆の強大すぎる力は人が住む大地にも毒となり破壊してしまうだろう。だからこそ⦅彼ら⦆はその場から動けずにいた。
「ならば与えよう」
唐突にはなたれたその言葉に、多くの⦅彼ら⦆は言葉を発した一人に注目した
「人類に魔に対抗する力を、我らがもつ技術を、我らのもつ全てを与えよう。」
その言葉に賛同した⦅彼ら⦆は人類に力を与え、その力の使い方を、魔に対抗するための技術を伝えた。
人類は天から降ってきたような力や声に、最初は戸惑い慌てふためいたがやがて理解し、その力を使って天からの言葉に従いながら、魔に対抗していった。そしてついに全ての魔を追い返す事に成功し、魔の者達がやってきた入口を声に従い封印した。
強大な敵との戦いに勝利した人類は国の境目など関係なく喜びをわかちあった。
「人類たちよ、どうか聞いてほしい。」
天からのその声に人類はざわめき、声の続きをまつ。
「今回はどうにか追い返す事が出来たが、我らの結界も完璧ではない、またいずれ奴らは現れるだろう。」
その全世界に響いた警告は、大きな戦闘で傷ついた人類に不安と恐怖を与えるには充分だった。
「だが安心してほしい、結界は完璧ではないがすぐに破られる事も無いだろう、次に奴らが現れるまでに我らが我らの全てを伝えよう。その力を、技術を使いこなせば奴らに対抗することがさらに容易になるはずだ。」
その言葉に確かな安心感を得た人類は天からの言葉に従うことを決め、与えられた力をさらに理解できるよう努力し、さらには限られた人類は⦅彼ら⦆の住む天上へと招かれ大きな力を得た。
そしていつしか人類は天から救いの声を送ってくれる⦅彼ら⦆のことを魔物や悪魔たちと敵対するもの⦅神⦆だと自然に理解し、それまで想像の物語として認識していた神話が再び紡がれ始めたことを理解していった。
そして、この時より始まった天からの助力を得た人類と悪魔たち魔の者との戦争を軸とする【現代神話】は2000年以上たった現在もまだ終わりを迎えることなく続いている。