005 殺られる前に殺るのです。
朝、ゆっくり眼が覚めると、目の前に知らない天井があった。
目をパチクリしながら周りを確認すると、昨日出した旅行用品がひろがったリビングだった。
「昨日出しっ放しにしたまんま、寝てしもたんやな〜
失敗や〜、こんなんお母ちゃんにバレたら、しばかれるわ〜」
とりあえず散らかしてあった荷物をアイテムボックスに仕舞って、大きく伸びをした。
何時もなら、私が朝起きれば、弟を起こし、家族揃ってラジオ体操をしている。
寂しく思いながら、シロと一緒に「チャ〜ンチャ〜チャチャチャチャチャ、チャ〜ンチャ〜チャチャチャチャチャ、チャチャチャチャチャチャチャチャ、チャチャチャチャチャ〜、
第一体操始め〜・・・」とか言いながら、ラジオ体操をした。
シロも一緒に跳んだり伸びをしたりしていた。
「寂しくなったら、体を動かしゃ、なんとか誤魔化せるわ!」
体操を一通り済ますと、それからはナイフを使った格闘技の練習も追加した。
「まぁ、こんなもんやろ」
腰のくびれを確認して、太る事がないように気をつけることにする。
若い頃に慢心して、食べ過ぎたり運動不足に陥って将来ウエストが確認できないというのは悲しすぎるので、こちらの世界では気をつけるのだ。
美味しいものを食べても、運動をタップリしてからあとはゆるゆるすることにしよう。
朝の運動を終わらせてからお風呂を沸かし、朝風呂に入ってサッパリしてから、私はおやつ用に持って来ていたカロリーメイトで、シロにはドックフードを取り出して、食事を終わらせる。
これから先持ってきていた食品をあまり消費しないように、この辺りの森を探索しながら、食材になるものを探してみよう。
おそらくあの草原の向こう側に、人がたくさんいるような気配がしたから、そこで売れるようなものも、採取しておけば向こうで売ってお金を稼げるし、シロ用の餌を蓄えておくのも良いだろう。
サバイバルナイフを腰のベルトに挿し装備を整ええてから、気合を入れてホームから出る。
ホームケースに戻してからアイテムボックスにしまい込み、地図を見てみる。
昨日行った草原がしっかり地図に載っていた。
森はホームから草原までしか載っていないので、森の地図を出来るだけ完成させるように移動しながら採取していった。
見るもの全てを鑑定すると、結構食べ物が豊富にあった。
「お〜、コレはもしかしてリンゴか!」
鑑定するとアプーという果物で毒はないようだ。
一口囓って見ると、爽やかな酸味のあるリンゴだった。
これは取れるだけ取って、アイテムボックスに入れておけば、搾ってリンゴジュースになるし、アップルパイも出来るかもしれない。アップルパイはあと小麦粉とバターが必要だけど、村や町に行けば手に入るかもしれない。
ホームにオーブンとパイ皿があれば作ることができる、楽しみが増えて元気が出てきた。
他にも砂糖の実、塩の実、胡椒の実、等々調味料になるいろんな木が見つかったので、夢中で採取し続けた。
気がつくと、背後でなにやら犬が唸っているような音が聴こえる。
『グルルルル』
振り向くと昨日シロが倒したウルフがいたので、ナイフを取りウルフと対峙する。
「あれはただの犬っころや!今のシロよりちっちゃい奴や!飲まれたらあかん!私はやればできる子や!!!
シロは手〜出したらあかんで、負けそうになったときだけ助けてや」
これから先自分でやれる事は自分でせなあかんと自分に言い聞かせながら、気合を入れ「先手必勝、殺られる前に殺れ!!!」と自分から襲い掛かり「こんなとこで死ぬ訳にはいかんのや!!!」叫びながらウルフの首筋を切り裂き、止めにナイフを腹に突き刺す。「私も腹刺されて死んだんやから、これで大丈夫やろ」死亡を確認して、これいつ処理しよ。
昨日、レシピ集で確認しているのでウルフの剥ぎ取りのやり方や肉、皮、魔石が取れる事がわかっているので処理をどうするか迷う。
とりあえず、今ここで解体をすると別の魔物に襲われるかもしれないので、アイテムボックスに仕舞い込み、場所を移動する事にする。
血の匂いがするので襲われるかもしれないから、ホームを出せる場所に着く前に、小川を見つけそこで血を洗い流した。
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